「フリー」の世界のタダではない価値

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12/04/2009 by kaztaira

「ロングテール―『売れない商品』を宝の山に変える新戦略」が話題になった米ワイアード誌編集長、クリス・アンダーソン氏の新刊「フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略」が出版された。
大事なのはヒット商品、というのが市場の常識。それに対し、売れてもほんの数個というニッチ商品も、ネットの検索機能によって確実に消費者の手に届き、ビジネスに結びつくという「ロングテール理論」はちょっとした流行語にもなり、様々なプレゼンテーションで、恐竜がしっぽをひきずっているような曲線グラフが出てくるのが定番になった。

そしては今度は「フリー」。副題の通り、テーマは「無料でいかに金を儲けるか」。景気のいい時代なら、ユーザーをたくさん集めて広告収入で儲ける、というモデルで大方はけりがつく。だがこの本が出たのは米国では今年7月、日本では11月。金融危機に覆われた世界で、「タダ」などという話はあまり受けがよくない。「ニュースはタダじゃない」(ニューズ・コーポレーションのマードック会長)というわけだ。

だが、「フリー」は無視できない。「フリー」の世界で、タダではない価値とモデルをうみだしていく。それがこの新刊のテーマだからだ。

「フリー」といえば、この新刊にも登場する「情報はフリー(タダ)になりたがる」というスチュアート・ブランド氏の有名な言葉がある。情報の有料/無料を巡る議論の際に、よく引用され、以前にこのブログのエントリーでも紹介した。そして、この言葉には続きがある。「情報は同時に、高価にもなりたがっている」。

日用品化した無料の情報と、希少な情報の組み合わせから、ビジネスを成り立たせる。アンダーソン氏は、そのビジネスモデルの歴史、類型、そして具体的な事例を徹底的に検証している。「フリー」と「プレミアム」を合成した「フリーミアム」という、ちょっとキャッチーな造語が帯にあるが、無料版と、それに機能を追加した有料版を組み合わせたビジネスモデルを指す。

なぜ情報がタダになりたがるのか。半導体の性能が18カ月で倍になるという「ムーアの法則」や、ネットワークの帯域幅は6カ月で倍になるという「ギルダーの法則」などが相まって、情報の流通コストは限りなくタダに近づくという見立てが背景にある。そのあたりは監修をした元日本版ワイアード編集長の小林弘人さんが、解説でわかりやすくまとめている。

「フリー」が、押しとどめようもない潮流であることは間違いない。グーグルやアマゾン、クラウド・コンピューティングが切り開く世界もその後押しをする。その先に、ビジネスが持続可能な、どんなモデルをたてていくのか。「情報は同時に、高価にもなりたがっている」。そのことを改めて考える、いい手がかりになる。

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