グーグルCEOの新聞救済策

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12/08/2009 by kaztaira

米グーグルは、ツイッターなどの数秒前の書き込みも検索できる、リアルタイム検索のサービスを始めた。今のところは英語版のみだが、試してみると、検索結果が流れる滝のように表示されて、面白いというか、酔いそうというか。
グーグルとツイッターは10月に提携を発表しているから、それを受けてのサービスだ。

そんな折も折、グーグルのエリック・シュミットCEOが、ツイッターを始めた。アカウント名は@ericschmidt。始めてから1日程度でもう1万人を超すフォロアー(読者)がいる。すごいものだ。では彼がどんな人のツイッターをフォローして(読んで)いるのか。

8日現在で約100人。オバマ大統領、ゴア元副大統領、シュワルツェネッガー・カリフォルニア州知事など政治系、ハイテク系コラムニストや業界関係者など。MCハマー、ジャネット・ジャクソンなど芸能系のフォローも幅広い。

そして、シュミットCEOのその書き込みのひとつには「WSJ、掲載ありがとう!」とあって、WSJのサイトへのリンク。

リンク先は、先週、1日付けでウォールストリート・ジャーナル(WSJ)のオピニオン欄に掲載されたシュミットCEOの寄稿だ。タイトルは「グーグルは、いかにして新聞を救えるか(How Google Can Help Newspapers)」。タイトルから刺激的。寄稿の宛先は、間違いなくWSJを傘下にもつニューズ・コーポレーションのルパート・マードック会長だ。

苦境深まる米新聞業界には、利益をあげ続けるグーグルの検索サービスに対して、「タダ乗り」論が渦巻く。その批判の急先鋒がマードック会長だ。「われわれの著作物がグーグルに盗まれるのを放っておいていいのか」「良質なジャーナリズムは安上がりにはできない」と、今年8月にはWSJオンライン版に加えて傘下のニュースサイトの有料化を表明していた。

さらに11月になって話は混沌とする。発端は22日付けのフィナンシャル・タイムズなどの報道だ。グーグルを新しい検索サービス「ビング」で追撃する構えのマイクロソフト、そしてニューズ社が「対グーグル」で提携協議。グーグルの検索からニューズ傘下のサイトを引き上げて、マイクロソフトに有償提供へ、との内容だった。さらに12月1日、今度はグーグルが、有料・登録制のニュースコンテンツの検索を通じた閲覧について、今までは1日何回でも可能だったものを、5回までに限定できる、という新聞・出版社側に向けた「懐柔策」を表明した。すると、これを受けるように、3日のフィナンシャル・タイムズなどは一転、「(新聞社側に)対価を支払う考えはない」とニューズ社との提携を事実上否定するマイクロソフト幹部のコメントを報じた。

そんな渦中での、シュミットCEOの寄稿だったわけだ。

「時は2015年。手のひらの中の小型端末が、世界の動きを次々に記事で伝えてくれる。お気に入りの新聞や雑誌をパラパラめくる。画面は鮮明で、表示をイライラ待つこともない・・・」

そんな「未来の電子新聞」を姿を描きながらシュミットCEOの寄稿は始まる。技術革新が新聞に与えた影響の歴史。ラジオ、テレビの登場、24時間ニュースの登場、そしてインターネット。新聞の伝えるニュースは「古いニュース」となり、パッケージ化されていたニュースはブログや検索サービス経由で読む、1本ごとのニュースになる。そして、広告収入へのダメージ・・・。

「新聞経営者たちの怒りは行き場を探し、今その大部分はグーグルに向けられている(中略)だが実際は、グーグルは収入増大の源だ。グーグルニュースは月に10億回のクリックをオンラインニュースサイトに誘導している・・・」「ルパート・マードック氏も言っている。新聞業界の本当の脅威は、テクノロジーではなく、独占体制でやってきたことによるおごりだ、と」

そして、「私たちは、新聞・出版社と手を携え、より多くの読者、より多くの収入を生み出す力になりたい」と続く。

有料か無料か、ネットか紙か、対グーグルか親グーグルか。ネットと新聞の議論は、往々にしてその中で無限ループに陥る。新聞社の中にいて、インターネットの現状も垣間見ながら考えるのは、おそらく答えはその二項対立にはなく、それら組み合わせの妙の中にあるのではないか、ということだ。そこを見分ける肌感覚が、生き残りの勘所のような気がしてならない。シュミットCEOが言っていることが、果たしてそうなのかどうかは別にして。というか、自分のことは自分で考えなければ。

実はシュミットCEOは、以前から同じような話をしてきている。その一つが今年4月、米新聞協会の年次総会で行ったスピーチだ。ユーチューブで見ることもできる。そのあたりの話をまとめた今年9月の夕刊連載「ネットはいま」を再録しておく。

再録:ネットはいま かわる:4)米新聞界、収益求め苦闘(2009/09/04)

「幅広い利用者に情報を届け、多様な収益の道を探る。それがいまやるべきことだ」

新聞はネット時代にどう生き残るのか。ネットの雄、グーグルのエリック・シュミット最高経営責任者(54)が苦境に立つ米新聞業界の経営陣を前に「新聞の未来」を語る映像が、動画サイト「ユーチューブ」で配信されている。

4月、米カリフォルニア州で開かれた米新聞協会の年次総会で、基調講演に立った時の模様だ。「私たちが手を携え、利用者の望みを受け止めれば、きっとうまくいく」

米国ではこの30年で日刊紙の数、部数とも2割減。経済危機も加わって名門紙の破綻(はたん)が相次ぐ。その新聞衰退の元凶と目されるのがネットだ。

総会に先立ち、米新聞界からは、ネットでニュース記事を収集し、見出しや冒頭部分を掲載するグーグル・ニュースなどのサービスに批判が噴出。ニューズ・コーポレーションのルパート・マードック会長(78)は「われわれの著作物がグーグルに盗まれるのを放っておいていいのか」と怒りをぶちまけていた。

「米の新聞は本当のがけっぷち。だがグーグルなどは他人のコンテンツを使いながら、不況の悪影響はさほど受けていないという現実がある」。ブログ「メディア・パブ」を主宰、米国のメディア事情に詳しい田中善一郎さん(64)は、こう指摘する。

新聞業界がデジタル対応に手をこまぬいてきたわけではない。1970年代からコンピューターネットワークを介した「電子新聞」開発に多額の資金を投入。パソコン通信、ウェブ、携帯電話、と新技術登場のたびに、その未来を模索してきた。だが「正解」は見えぬまま、部数と広告が減り続ける。

「良質なジャーナリズムは安上がりにはできない。無料配信は自らの首を絞めるだけだ」。マードック会長は今年8月、傘下の全ニュースサイトを来年半ばまでに有料化すると発表した。

AP通信は記事引用の分量に応じて最低で1件7・5ドル(約700円)を課金。さらに無許可利用を検知するシステムを開発中だ。

一方で、ネットの経済圏では検索やブログなど様々な引用やリンクを通じた情報の広がりがページの閲覧数を増やし、広告収益を生む。APの動きを受け、トムソン・ロイターは逆に「リンクも引用も自由に」と表明した。

ビジネスモデルの試行錯誤は続く。ミニブログ「ツイッター」を活用したリアルタイム発信など、ジャーナリズムの新たな試みも出現した。

「かつて馬車が蒸気機関車になり、世の中は変わった。『ニュース』はなくならないが、その形は変わっていくだろう」と田中さんは見る。(編集委員・平和博)

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