グーグル的「オープンな世界」

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12/26/2009 by kaztaira

ものごとは、誰がどこから見るかによって、全然違う風景になってしまうことがある。

 「オープン」という言葉はまさに、そんな黒澤明監督の「羅生門」的世界だ――と書いたのはグーグルの製品管理上級副社長、ジョナサン・ローゼンバーグ氏だ。米グーグルの公式ブログに21日付けで掲載された、結構な分量の投稿「オープンの意味」が、今週、話題を呼んだ。
 先週、社員向けに出したメールを、ブログでも公開したものだという。
 「オープンの意味」? 中学校ぐらいで習う「開く」とか「公開」とか、そんな漠然とした話をしているわけではない。良くも悪くも、いかにもいかにもグーグルらしい、世界観と戦略の話だ。
 「オープンなシステムが勝つ」とローゼンバーグ氏は書く。
 グーグルの「オープン」の一つが、内部の詳細が公開され、無料で使える「オープンソース」だ。グーグルは、システム構築にオープンソースの基本ソフト(OS)「リナックス」などを活用していることで知られるが、グーグル自身が利用者に提供するプログラムもまた、オープンソースであることが多い。
 わかりやすい対比が、アンドロイド携帯とアイフォーンだ。オープンソースの携帯用OSアンドロイドは、台湾メーカーHTCのほか、モトローラ、サムスンも端末をつくっているほか、ソニー・エリクソンの端末も来年には登場する。だが、アイフォーンは、アップルのマッキントッシュ用のOS「マックOS X(テン)」がもとになった携帯用OS「アイフォーンOS」。オープンソースではなく、端末はアップルからしか出ていない。
 ローゼンバーグ氏は、グーグルの基本戦略をカール・シャピロ/ハル・R・バリアン「『ネットワーク経済』の法則」から引いた公式で説明する。
 手に入る報酬=業界全体の付加価値×業界の価値に対するシェア
 この本の出版当時、カリフォルニア大バークレー校教授だったバリアン氏は今、グーグルのチーフフェコノミストだ。
 普通に考えれば、業界全体パイが10%伸びるが自社のシェアは変わらない場合と、業界の規模は変わらないが自社のシェアが10%伸びる場合では、自社の手に入る報酬は同額だ。「だが私たちの場合、業界が10%の伸びれば、規模の経済を刺激し、(10%にとどまらない)はるかに大きな報酬につながる」という。「そしてグーグルの未来は、ネットがオープンであり続けることにかかっている」と。
 なるほどなあ、である。
 グーグルについて、みんなが不思議に思うのは、なぜ次から次へと無料の新サービスを提供していくのか、ということだ。生産量の増大で利益率が上がるという「規模の経済」、規模の拡大が生産性のそれ以上の拡大につながるという「収穫逓増の法則」といった考え方を、特にネットの世界では、「そのビジネスモデルはスケールするか(規模の経済がうまく働くか)?」と時候の挨拶のように口にする。
 グーグルはそれを真剣に考え、大規模に実践しているのだ、という話なのだろう。
 さらに、インターネットの通信規格である「TCP/IP」を例に、その開発に携わった「ネットの父」ビントン・サーフ氏が、これをオープンな標準規格としたため、今のネット社会の広がりがある、という。サーフ氏も、今はグーグルの副社長兼チーフ・インターネット・エバンジェリストという肩書を持つ。
 オープンのすばらしさ、オープンのメリット。それが非常にわかりやすく整理して繰り返し描かられる「オープン礼賛」。
 ネットの反応は、おおむね、私の感想とそう違わない。

 「テッククランチ」の「Googleの『オープン・ソース万歳』はけっこうだが、いいとこ取りなのは否めない」や、「CNETニュース」の「信条は『オープン性の勝利』–グーグルが示した『オープン』の定義」など。

 オープンはいい。大部分はまったくそのとおり。ただそれをグーグルがいうのか。
 グーグルは一方で、その「根幹部分」について、徹底した秘密主義で知られる会社だ。グーグル検索をした時に、どういう仕組で表示結果の順位を選んでいくのか。「ページランク」という、ほかのページからのリンクなどによる人気度を図る、という当初の基本的な考え方は知られているが、技術な詳細は、絶対に公表しない。
 「私たちの目標は、インターネットをオープンなままに守っていくことだ。(中略)だが、私たちの検索や広告の製品などの場合、そのプログラムの詳細を公開することが、目標達成にそぐわないばかりか、利用者にとって有害な結果をもたらす。(中略)それによって、検索や広告のラインキングを操作し、その質を落とそうとする人々が現れるからだ」
 それに、こんなこともいっている。
 「私たちは、巨大すぎるとしばしば批判を受ける。しかし、大きいからこそ、不可能に取り組むこともできる」
 なるほど。
 これは、ストリートビューのことをいっているのだろうか? ブック検索の騒動のことを言っているのだろうか?
 「オープン」は、オバマ政権の旗印でもある。交流サイト(SNS)などのソーシャルメディアを使って政府をオープンなものにしていくという「ガバメント2.0」、ネットを誰でも公平に使えるようにし、データの種別による差別的な取り扱いを禁じる「ネットの中立性」「オープンインターネット」といった政策は、まさに、グーグル的な「オープン」と歩調を合わせる。
 グーグルCEOのエリック・シュミット氏が、大統領選でオバマ氏を支持していたことも、もう一度、思い出しておきたい。
 米国は、グーグル的な「オープン」に、かじを切り始めている。では日本は?
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