グーグルの「敵」はいたるところに

コメントする

01/15/2010 by kaztaira

ジャーナリストのケン・オーレッタ氏の近著「グーグル化 私たちが知っている世界の終わり」という本に、グーグルによる中国でのネット検閲への協力について、経営陣に微妙な温度差がある、と触れられていた。

 場面は、08年5月のグーグル株主総会。株主側(これは米アムネスティ、と後述のワイアード)から、中国での人権擁護を支持し、あらゆる検閲の反対表明をするよう、グーグルに求める提案が出された。共同創業者のラリー・ペイジ氏や最高経営責任者のエリック・シュミット氏を含む経営陣はこれを否決した。だがもう一人の共同創業者、サーゲイ・ブリン氏だけが、棄権したというのだ。
 この時のブリン氏の説明。「提案の趣旨には賛同する」。だが、「グーグルが中国で成し遂げてきたことを誇りも持っている」
 ブリン氏は、幼少期の1970年代を共産主義体制下の旧ソ連・モスクワで過ごしている。その経験から、ネット検閲への協力には悩みもあったという。

 ワイアードのこの記事にも、この時の株主総会の様子が書いてある

 

なるほど。

 さて、昨日の「『撤退』するのはグーグルか中国か」でも紹介した元CNN北京、東京支局長でジャーナリストのレベッカ・マッキノン氏が、英ガーディアンに面白い記事を書いている。「グーグルはフランスとイタリアにも立ち向かうのだろうか?」
 「これは中国だけの問題ではない」とマッキノン氏。グーグルのようなネット企業に、ネットの「取り締まり」責任を課そうとする国が増えてきている、というのだ。規制の目的自体は、正しいものであっても、表現の自由を侵害しかねない方法を使って。「その多くは民主国家だ」
 昨日も紹介したハーバード大法科大学院バークマンセンター教授のジョナサン・ジットレイン氏らが運営する、ネット検閲の研究プロジェクト「オープンネット・イニシアチブ(ONI)」の調査によると、10年前にはほんの一握りの国だけが行っていたネット検閲も、現在では世界約40カ国にまで拡大し、多くは民主主義国家なのだという。
 ONIのサイトにわかりやすく色分けした世界地図がある。日本は今のところ、「色」はついていない。
 グーグルが頭を悩ます国はいたるところにある。キーワードは「仲介者責任」。動画、写真、ブログの書き込み、ネットを流れるあらゆるコンテンツについて、それを「仲介」するネット企業に責任があり、訴追、処罰される可能性がある、という考え方だ。
 マッキノン氏は、米国では、ネット企業はそのような直接的な責任は問われないが、もしあらゆるコンテンツを監視し、「違法・有害」情報を未然に防ぐ義務が課せられれば、グーグル傘下の動画投稿サイト「ユーチューブ」のようなサービスは成立しなかっただろうし、ネットベンチャーはサービスに手が出せなくなるだろう、と指摘する。
 ネット企業にコンテンツの管理責任を求めるこの考え方が、まさに中国の姿勢だ。そして、国外からの「不適切」な情報については、「グレート・ファイアーウオール(ネットの万里の長城)」と呼ばれる検閲システムが働く。
 そして、グーグルを悩ます国の一つがイタリア。ここで、ユーチューブに、子どものいじめの現場を撮影したビデオが投稿され、それを放置したとしてグーグル幹部4人が訴追を受けているのだ。その一人が、「中国撤退検討」の発表文を公式ブログに掲載した企業開発担当副社長、最高法務責任者のデビッド・ドルモンド氏だという。
 またフランスでは、ネット接続事業者に、著作権侵害の音楽やビデオがやりとりされていないか、監視を義務づけ、違法コンテンツを流通させた利用者が、2度の警告を無視した場合、3回目の違反を受け、裁判所の判断でネット回線を切断するといういわゆる「スリーストライク法」が昨年成立している。
 英国も、同趣旨の「デジタル経済法案」を検討。インドでも、昨年、ヤフーやユーチューブ、フェイスブック、やツイッターを含むネット企業に、「公序良俗」に反するコンテンツの削除を義務づける、懲役7年以下の罰則のついた法律が施行されているという。
 「ユーチューブやツイッター、フェイスブックなどのサービスは、野党や反体制派、告発者にとって、世界に向けて意見表明をするための強力な手立てになる。しかし、犯罪やポルノ、名誉棄損、著作権侵害といったものへの、安易な対策法として『仲介者責任』が使われることで、例え民主国家でも、その力は制約を受けてしまう」
 そしてマッキノン氏はこう言う。「民主国家が、ネットの問題への対処法として、まずはネット企業に重い責任を負わせようとするなら、専制国家の指導者たちは、安堵のため息をもらすだろう。自由社会の勢力も、自分たちの方に近づいてきてくれた、と」
 中国がネット検閲を推進する理由の一つとして掲げているのも、わいせつ画像などの「違法・有害情報」だ。
 「『アンドロイド』が見る夢は」で、ボノ氏が新年のニューヨーク・タイムズで「著作権侵害」対策について言及し、米国の児童ポルノ追放の取り組みをみれば、違法コンテンツの削除は可能だと主張、「中国の、反体制派への恥ずべきネット規制を引き合いに出すまでもなく」と書き添えたことを、紹介した。
 中国も、その他の国も、ネット検閲を行うのであれば、使う技術に色はつかない。同じものだ。このあたりから、議論は俄然、わかりにくくなる。
 「ネット検閲」とは無縁のように見える日本でも、「著作権侵害」「わいせつ」「児童ポルノ」「青少年保護」の対策、という言葉で語られる議論と、使われる技術は、まったく無縁とは言えない。
広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中

アーカイブ

ブログ統計情報

  • 617,529 ヒット
%d人のブロガーが「いいね」をつけました。