読者が記者を差配する

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02/07/2010 by kaztaira

大きな出来事や事件があった時、新聞社で大事なことの一つに、限られた人数の記者たちを、瞬時に差配するという作業がある。どこと、どこの現場に、誰と誰を向かわせ、何を書かせるか。

 発生直後のこの判断を間違えると、あとあと禍根を残すことになる。それに、全体を把握しながら、状況の変化に応じて、配置を変えたりする必要もあり、その配置は紙面構成に直結する。
 このため、デスクとか遊軍長といった、そういう仕切り作業にたけた作戦参謀のような立場の人間が、締め切り時間もにらみながら、切り回しに当たる。普通は。
 ・・・そして、時々は読者も。
 米ワシントン・ポストは、昨年11月から、ウェブ上で「記事研究所(ストーリーラボ)」という実験的な取り組みを始めている。
 掲載された記事に、後日、読者が意見を寄せる、というのがこれまでの新聞と読者の一般的な関係だった。「記事研究所」では、
1)記事のアイディアを公開し、読者の「みんなの意見」を求めながら記事をつくりあげる。
2)記事の取材過程、作成過程を、記者の「一人称」で明らかにしていく。
3)記事掲載後の読者からの反応も公開していく。
4)おすすめ「この日のニュース」を読者、記者が持ち寄り、共有する
という。
 雑誌「ニューヨーカー」のビジネスコラムニスト、ジェームズ・スロウィッキー氏の「『みんなの意見』は案外正しい」という本が、数年前に話題になった。
 限られた専門家が下す判断よりも、必ずしも専門知識のない、普通の人たちの知恵の集めた方が「賢い」ことがある、という、ネット社会の一つの特性をうまく言い当てた良書だ。
 さらにこの考え方を、ビジネスの側からまとめたコンサルタントのドン・タプスコット氏とアンソニー・D・ウィリアムズ氏の共著「ウィキノミクス マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ」もきっかけになって、「集合知」、さらに「クラウドソース」という言葉が、かなり流布した。
 「クラウドソース」は、「群衆(クラウド)」と「外部委託(アウトソース)」の造語。「群衆委託」とでも訳すのか。商品開発などを、消費者に「外部委託」し、そのアイディア・知恵(集合知)を取り込んでいく、という考え方だ。
 ちょうど「クラウド(雲)・コンピューティング」と同じような時期に流行ったので、紛らわしいのだが。
 この「クラウドソース」を、新聞記事づくりに応用していこうというのが、ポストの「記事研究所」の発想らしい。
 そして、大雪に見舞われた首都ワシントン。2月4日付けで「記事研究所」はこんな呼びかけを出した。「編集長はあなた:大雪被害取材の指示出しを
 「大雪の、スーパーボウルを控えた週末、あなたが記者を抱えた編集長なら、どんな話題を取材させるため、どこに記者を差し向けますか?」
 この呼びかけに、数百のアイディアが寄せられ、実際に取材に向かわせたのだという。これこれ。中には、翌日、天候に関わらず決行されるという結婚式、という話題も。この結婚式、1月30日に予定されていたが大雪でいったん仕切り直しになった、といういわくつきだとか。確かに取材したい。
 こういう試みは、始めるのはいいが、続けて、盛り上げていくのは、そう簡単ではない。ただ、うまく軌道に乗ると新聞と読者にとって、大きな力になる。大事な方向だ。
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