ブロッキングはいつはじまるのか

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11/26/2010 by kaztaira

あのブロッキングは、いつから始まるのか?――私の不勉強もあって、そんなことすらよくわかっていなかった。答えは、「そうすぐには始められない」のようだ。

 東京・秋葉原で26日まで開催の「インターネットウイーク2010」で昨日(25日)、セッション「インターネット上のブロッキング問題を検証する」を見た。そして、この問題について、自分ではわかったつもりになっていたことが、実は全然違うということが、よくわかる議論だった。司会は日本インターネットプロバイダー協会の木村孝さん、講演者はこの問題に早くから取り組んできたマイクロソフトの楠正憲さん、安心ネットづくり促進協議会(安心協)児童ポルノ対策作業部会主査の森亮二弁護士、同協議会ISP(プロバイダー)技術者作業部会の北村和広さん(NTTコミュニケーションズ)。

 

 

 ブロッキングは、政府の犯罪対策閣僚会議が7月に出した「児童ポルノ排除総合対策」の中で、「児童の権利を保護するためには、サーバーの国内外を問わず、画像発見後、速やかに児童ポルノ掲載アドレスリストを作成し、ISPによる閲覧防止措置(ブロッキング)を講ずる必要がある」とした。
 この中で、実施時期については、「そこで、このようなブロッキングについて、インターネット利用者の通信の秘密や表現の自由に不当な影響を及ぼさない運用に配慮しつつ、平成22年度中を目途にISP等の関連事業者が自主的に実施することが可能となるよう、下記の対策を講ずる」として、「i アドレスリストの迅速な作成・提供等実効性のあるブロッキングの自主的導入に向けた環境整備/ii ISPによる実効性のあるブロッキングの自主的導入の促進/iii 一般ユーザーに対する広報・啓発」を打ち出している。
 ブロッキングにはいくつかの方法があるというが、最も安価、実現可能とされるのがDNSポイズニング。児童ポルノを発信しているサイトのアドレスを集めた「ブラックリスト」を、ドメイン名(ネット上の住所)をIPアドレス(ネット上の電話番号)に変換するISPのサーバーに用意。児童ポルノサイトへのアクセスは、遮断するという手法だ。
 他の手法にもそれぞれ問題点はあるというが、このDNSポイズニングにしても、正常なドメイン名とIPアドレスとの対応をいじることになるので、大規模なネットワーク障害を引き起こす危険があり、2年前には実際にその影響で動画サイト「ユーチューブ」への世界的なアクセス障害が発生したことなどが、楠さんから紹介された。
 さらに、さらにこういった障害が発生した場合のISPや「ブラックリスト」の作成管理団体の賠償責任など、明確になっていない問題もあるという。
 そして、そもそも論としてあるのが、「通信の秘密」「検閲」とブロッキングの問題だ。憲法、電気通信事業法で保障された通信の秘密には、通信内容そのものはもちろん、通信の宛先などの情報も含まれる。この情報を取得して利用する行為は、通信の秘密の侵害になる、と森弁護士は言う。
 これについては、「児童ポルノ排除総合対策」でも、「インターネット・ホットラインセンターが把握した画像について、サイト管理者等への削除要請や警察の捜査・被疑者検挙が行われた場合等でも、実際に画像が削除されるまでの間は画像が放置されるところであり」としているように、緊急性があり、その画像が児童の権利を著しく侵害しているような場合に限っては、適法になものと解釈できるという。
 ただ、残るのは同じ通信の秘密と同じ憲法21条が禁じている「検閲」だ。政府が表現内容を審査し、内容によって禁止すれば、検閲ということになる。このため、ブロッキングの実施主体は政府ではありえない。「ISP等の関連事業者が自主的に実施することが可能となるよう・・・」と、民間の自主的取り組みとされる理由だ。自主的取り組みであるから、政府が強制することもあり得ない。
 北村さんは、安心協がISPに行ったアンケート結果を紹介。最も実現可能とみられているDNSポイズニングでも、実施までに要する期間として「6カ月ほど」が25%、「1年ほど」が27.6%で回答の平均は8.2カ月だったとした。
 総合対策は、「平成22年度中を目途に・・・可能となるよう」としているが、財団法人日本インターネット協会によるリスト作成の実証実験結果を経て、リスト作成管理団体を改めて立ち上げるとともに、各ISPの判断で準備をおこなうとしても、そこからさらに半年から1年の時間が必要になる、ということのようだ。
 ”蛇口をしめる”方法論よりも、クラウドベースで、画像の「指紋(ハッシュ値)」から根こそぎにする技術開発などで、より実質的な効果が期待できる、と楠さん。森さんは、このブロッキングが、児童の虐待という重大な事態への対応をこえて、著作権などの権利侵害・違法情報にまで拡大するのはよくないし、通信の秘密の違法性を阻却しないだろう、と指摘する。
 通信の秘密を侵して、情報を遮断するという行為は、中国やイランが行っている情報遮断と、形としては同じことだ。その”危険”はよくよく理解しておきたい。
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