ウィキリークスはジャーナリズムか

コメントする

12/10/2010 by kaztaira

ウィキリークスはジャーナリズムか。米外交公電漏洩を巡る問題で、一番わかりにくいのはこの論点だ。

 著名ブロガーのクレイ・シャーキーさんは、「ウィキリークスと長期的視点」というブログの中で、ニューヨーク・タイムズがベトナム戦争に関する秘密報告書の内容を報じた「ペンタゴン・ペーパーズ事件」で、米連邦最高裁が公表差し止めを求めた政府に重い説明責任を課して訴えを却下してことなどを引きながら、こんなことを言っている。
 「新聞だと訴追されない行為を理由に、誰かをネットから追放する。民主主義のもとでそんなことが許されるとしたら、社会の民主化を推し進めていくネットのあり方は、致命的な打撃を受けてしまうのではないか」
 ウィキリークスのサイトにある説明では、「ウィキリークスは非営利のメディア。重要なニュースと情報を公表することを目的とする」とある。
 非営利のオンラインメディアならすでにいくつもある。個人であっても、影響力のあるブロガーをメディアと呼ぶことに不自然さは感じないし、それらが発展して、メディア企業化したケースもある。あらゆる情報発信がメディアだとも言える。
 ではジャーナリズムは?
 それらは、既存のメディアが手がけて来たジャーナリズムと、どう違うのか。
 その点を巡って、100年の歴史を持つ米ジャーナリスト協会(SPJ)は2日、声明を出した。声明の問いかけは、そもそもウィキリークスのしていることはジャーナリズムなのか、そしてこの流出外交公電を報じた新聞は、ジャーナリズムの責務と倫理基準をまっとうしていたのか、という点だ。
 ウィキリークスは、ジャーナリズムの責務、倫理を果たし、そして公益に資する行動をとったと言えるか。つまり「ウィキリークスはジャーナリズムか?」。この問いへの一致した見解はまとまらなかったという。
 そして、別の問いかけをする。提供された情報が本物で、確度も高いものだとして、そこに公開すべき十分な必要があったか、そしてその公開は倫理基準を満たしていたか、と。
 政府情報の公開原則と国家安全保障と国益の保護のバランス。真実の追求と予想される報道被害の最小化。それらの基準を掲げながら、「ニューヨーク・タイムズやガーディアンなど、事前に情報提供を受けていた報道機関は、ジャーナリズムの目的を果たしたと言える――情報を検証し、責務を担い、一部の情報については除外することで被害を最小化し、報道よって影響をうける関係方面には直前に通告した」。
 ただ、「情報漏洩そのものの評価は、別問題。法令違反があれば司法手続きが進められるだろうし、ウィキリークスの本意も判然としない」としながら、「しかし、提供を受けた報道機関は、情報に文脈を与え、検証を行っており、ジャーナリズムの責務と倫理基準をまっとうしたと言える」と結んでいる。
 果たして、ウィキリークスは、既存メディアのような情報の取捨選択、検証、価値判断を、倫理基準をもとに行っているのか。その点で、「ジャーナリズム」としての評価が分かれるのだろう。
 一般の人々による「市民ジャーナリズム」から、プロとはいえ、ニュースを金で買い上げるような「小切手ジャーナリズム」と呼ばれるものまで、ジャーナリズムの輪郭そのものがかなりあいまいになってきている現状も、評価を難しくしている。
 逆の視点からの議論も出ている。提供された公電を報じたニューヨーク・タイムズも何らかの法令違反の可能性があり、ウィキリークスについては米国のスパイ法を適用せよ、と米上院の国土安全保障委員長のジョー・リーバーマン議員が指摘している
 だがこれについては、6日付けの連邦議会調査報告書がまとまっており、その中で、「報道機関への情報の漏洩が犯罪として処罰された例はほとんどなく、政府職員の漏洩によってもたらされた情報の公表を理由に訴追された報道機関は過去にない。その訴追を難しくしているのが修正憲法第1条の言論の自由の規定だろう」と述べている。
 漏洩は違法で、それを報じた組織も違法、というのがリーバーマン議員の論理。それに対して、この報告書の指摘は、情報漏洩の当事者ですら、それが報道機関につながるものであれば、言論の自由からみて処罰されることもほとんどない、まして、それを報じた報道機関も、との見解だ。確かに、ペンタゴン・ペーパーズをニューヨーク・タイムズに持ち込んだダニエル・エルスバーグ氏も、結局、処罰はされていない。
 従来のジャーナリズムが培ってきたノウハウを当てはめるなら、ウィキリークスはジャーナリズムとは別のものだ。ただウィキリークスを、新しいメディア環境に拡張する新しいジャーナリズムの一形態と見ることは、可能なのかもしれない。
広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中

アーカイブ

ブログ統計情報

  • 601,644 ヒット
%d人のブロガーが「いいね」をつけました。