キマイラとしての「マイナンバー」

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08/20/2011 by kaztaira

グーグルで「マイナンバー」を検索すると、ヒットするのは約4400万件。検索結果のトップに表示されるのは、NTTのフレッツ光の光IP電話サービス「ひかり電話」で、最大5つの電話番号が利用できるという追加番号サービス「マイナンバー」だ。

 何でもグーグルが正しいわけではないが、少なくともネットの情報空間では、「マイナンバー」と言えば、そういうことになっているようだ。

8月20日(土)の朝日新聞朝刊オピ二オン面のコーナー「記者有論」に「共通番号制度―個人情報守る慎重さを」と題したコラムを書いた(※末尾再掲)。このブログでも、「社会保障・税「番号」の問題点」、「結局、よくわからない『番号制』」、「共通番号と国民IDと個人情報保護」なとで取り上げてきた、いわゆる「共通番号」の問題点を整理したものだ。

 この「番号」の呼び名を、「国民の皆様から『共通番号』の名称を募集します」と募集をかけて、6月末に決まったのが「マイナンバー」だ。
 「マイナンバー」、あたりは柔らかだが、この制度をひとことで言うと「キマイラ(キメラ)」だ。ギリシャ神話に出てくる、ライオンの頭、ヤギの胴体、ヘビの尾を持つというあの怪獣。生物学では、一つの個体の中に遺伝子が異なる細胞を持つ生物のことを「キメラ」と呼ぶ。
 社会保障・税の一体改革の遺伝子を持つ「共通番号」、「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)」の電子政府議論の遺伝子を持つ「国民ID」、住民基本台帳ネットワークの「住民票コード」。どれが頭でどれがしっぽかは知らないが、そういう違う遺伝子を、「マイナンバー」という同一個体に抱えて、機能させようというのが、この試みだ。
 「共通番号」というからには同じ番号を使い回す、と誰もが考える。だが、電子政府の推進を考えつつ、政府による監視社会化の危険を避けるには、ある番号で、個人情報が簡単に名寄せされないような仕組みが重要になってくる。この正反対な遺伝子をつないで、さらにそこに、評判芳しからぬ住民票コードまでつなげる。
 ライオンとヤギとヘビは、それぞれに融通しながらうまく折り合いをつけていけるのだろうか? それぞれの思惑で、それぞれに暴れ出したりしないのか?
 この「マイナンバー」という器には、税務や年金、医療から、東日本大震災の震災復興までが盛り込まれている。この仕組みで、本当に大丈夫なのだろうか?
 そういえば、愛称ということで思い出されるのは国鉄分割民営化の際に、東日本で採用された「E電」だ。グーグルの検索では、約9700万件がヒットする。ある年代の人々であれば、記憶のかなたに、今も残る愛称ではある。
 ◇
記者有論:共通番号制度―個人情報守る慎重さを
(2011年8月20日・朝日新聞朝刊オピニオン面)
編集委員・平 和博
 政府の「社会保障・税に関わる番号制度」を巡り、専門家らから安全性について疑問の声を聞く。「個人情報保護は大丈夫か」と。
 6日までパブリックコメントを募集した「大綱」によると、この番号は住民基本台帳ネットワークの住民票コードを元に国民全員につけられ、①年金②医療③介護保険④福祉⑤労働保険⑥税務の6分野で利用される。個人情報は番号とひも付けて管理され、必要に応じて役所など複数の組織間でやりとりされる。
 その際、国などが番号をキーに個人情報を名寄せして一元管理や悪用をしないよう、「情報連携基盤」という仕組みをかませる。
 個人情報のやりとりは「基盤」を介し、番号そのものではなく、番号に対応する別の符号を使って間接的に行う。これで分散管理を徹底し、さらに、やりとりの記録を保存して不正利用を防ぐ狙いだ。
 しかし、情報を取り扱う範囲は広大だ。大綱によれば医療・介護の分野だけでも医療施設で約18万、介護サービス施設・事業所約26万。各省庁、約1800の自治体。さらに人を雇って給与を支払うあらゆる会社や個人に及ぶ。
 それに「基盤」によって安全確保が期待できるのは、分野によって異なる番号をつけた場合に限られる。広い範囲で共通の番号を使えば「基盤の方式は無意味」(産業技術総合研究所の高木浩光主任研究員)となる。
 そもそも「基盤」を使って個人情報の突き合わせが安全にできるなら、番号を6分野共通にする必要がない。
 加えて、個人情報の取り扱いの監視などを担う第三者機関にも強い権限と独立性が求められる。4月に出た番号制度の要綱は、独立性の高い国家行政組織法上の「3条委員会等の設置形態を検討」としていた。ところが、大綱ではその文言が消え、省庁に従属する8条委員会となる可能性も出てきている。
 医療情報など流出被害の大きい個人情報を扱うため、大綱には違反行為への罰則強化も盛り込まれている。一方、個人情報保護法施行で指摘された「過剰反応」が再び起きる可能性もある。
 第三者機関のしっかりした独立性確保には、3条委員会であることは必須だ。安全な番号の仕組みと合わせて、「過剰反応」を避けるための一人ひとりの安心感にもつながる。負担と受益を適正に管理する番号制度の導入には、そんな慎重さが求められる。

 

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