ウィキペディアの裏を取る

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03/21/2012 by kaztaira

『朝日新聞記者のネット情報活用術』についていただいた反応の中で、「ここに興味をもってもらえたのかぁ」と思ったのが、情報の「確認」について。「勉強会」で知られるよしおかひろたかさんのコメントでも取り上げていただいている「ウィキペディアを疑う」というエピソードだ。

 ウィキペディアの情報は、もちろん正確なものもあるが、うのみにはできない真偽不明のものも結構ある。
 「100年前のメディア論」でも触れたが、例えば会社の大先輩で『最近新聞紙学』の著者、杉村楚人冠の記述。ウィキペディアには「朝日新聞朝刊一面に1世紀以上に渡って連載中の名物コラム『天声人語』の命名者でもある」と書かれている。
 『ネット情報活用術』で楚人冠を紹介するために、この点を確認しようと思ったが、ウィキペディアには出典が示されていない。ネットではらちがあかないので、会社の書庫にある『朝日新聞社史 明治編』を引っ張り出し、「天声人語」創設の経緯を読み進んで、命名者は大阪朝日の西村天囚であるとの記述を確認した。そもそも「天声人語」は大阪で始まっており、楚人冠は東京の記者だ。
 ちなみにウィキペディアの「西村天囚」の説明には「コラム『天声人語』の名付け親とも言われる」、「天声人語」の説明には「命名者は杉村楚人冠(明治30年以来大阪朝日の主筆であった西村天囚だとする説もある)」とあり、参考文献の欄に「朝日新聞2012年2月4日、天声人語特集によると、西村天囚とある」との但し書きがある。確かに、この天声人語特集には、「『天に声あり、人をして語らしむ』という意味で、記者として活躍した西村天囚が命名した」と書いてある。
 これを見るだけでも、ウィキペディアの情報のゆらぎ具合がわかる。
 「ウィキペディアを疑う」で取り上げたのは、「アラビアのロレンス」「ドクトル・ジバゴ」「インドへの道」の映画音楽で3度のアカデミー作曲賞を受賞したフランス人作曲家のモーリス・ジャール氏の死亡記事とウィキペディアをめぐり、2009年に起きた事件だ。
 ガーディアンなどのメディアが、死亡記事の中でジャール氏の生前の発言として紹介したものが、まったくのデタラメで、その出典がウィキペディアだった、という同じ業界の人間としては背筋も凍るような話だ。
 「ウィキペディアを疑う」にはどうしたらいいのか。
 まさに「天声人語」の命名者について私が行った確認作業、つまり信頼できる情報源や資料できちんと「裏を取る」ことに尽きるのだ。

 「ウィキペディアは、手始めには最良の場所だが、結論を得るのには最悪の場所」。ジャーナリスト/ブロガーのダン・ギルモア氏の言葉を改めて肝に銘じておきたい。

『朝日新聞記者のネット情報活用術』

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