「データ」フォーラムで話したこと

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09/11/2012 by kaztaira

10日に、日本学術会議で開かれた学術フォーラム「データと発見――Data Intensive Scientific Discovery」に、パネリストとして登壇させていただいた。

学術会議フォーラム「データと発見」

半日(5時間)で9人の講演と総括討論という盛りだくさんのメニューで、犯罪行動科学からヒッグス粒子、ゲノム、歴史研究と、幅の広さと内容の濃さに、参加者としてはちょっとめまいがした。

私が登壇したのは最後の総括討論で、テーマは「データが学術と社会のインターフェイスになることができるか?」。事業構想大学院大学教授で東京大学名誉教授の岩田修一さん司会の1時間のセッションで、パネリストは私を含め5人。特別講演もされたトニー・ヘイさん(マイクロソフトリサーチ産学連携担当副社長)、杉本誠司さん(ドワンゴ/ニワンゴ社長)、野村茂雄さん(日本原子力学会会長)、村山泰啓さん(情報通信機構統合データシステム研究開発室長)。

私の受け持ちは「ビッグデータとデータジャーナリズム」。そうそうたる並びの中でかなりのアウェー感で、ごくごくコンパクトなコメントをするのがやっとだったが、ウォーターゲート事件、リクルート事件から、ウィキリークスにいたるジャーナリズムを取り巻く環境変化について紹介した。

下敷きにしたのは、5月に朝日新聞の夕刊(一部地域朝刊)で掲載した連載記事「データジャーナリズムの世界」(第1回第2回第3回第4回)。

4月末にイタリア・ペルージャであった「国際ジャーナリズムフェスティバル」でのインタビューを中心にまとめたものだ。

この日のキーワード「Data Intensive Science」はデータ集約科学とでも訳せばいいのか。この新たなパラダイムシフトを、コンピューター科学者の故ジム・グレイさんの「第4のパラダイム」というコンセプトでまとめたのが、トニー・ヘイさんの講演だった。

では、データジャーナリズムとこれまでのジャーナリズムはどこが違うのか。ジャーナリズムにおけるビッグデータ時代のパラダイムシフトとは何か。

今から40年前、1972年6月17日、土曜日の未明に発生したワシントンDCの民主党全国委員会本部への侵入事件。これを契機にニクソン大統領辞任にいたるウォーターゲート事件を象徴するセリフが「Follow the money」だった。侵入犯5人への金の流れを追う調査報道によって、ニクソン大統領再選委員会とのつながり、さらに大統領自身とのつながりが浮き彫りになった。

それから16年後、1988年6月18日、土曜日の朝刊に掲載された「『リクルート』川崎市誘致時、助役が関連株取得 売却益1億円」の記事。翌年の竹下首相退陣にいたるリクルート事件の調査報道で、取材チームが追ったのは株の流れだった。すなわち「Follow the stock」だ。

そして今、データは「Follow」するだけでは済まなくなってきた。端的な例がウィキリークスだ。ウィキリークスが2010年7月に公表したアフガン戦争に関する米国の機密文書約9万件、10月に公表したイラク戦争に関する機密文書40万件。いずれもスプレッドシートのデジタルデータで、日時、発生場所の緯度経度、戦闘などの発生状況と被害者数などが記されていた。

この膨大な「ビッグデータ」を整形し、解析し、そこに文脈を見いだし、ニュース価値をさぐる。さらに読者、ユーザーに届くインタラクティブなビジュアル化を行う。

データ支援報道(CAR)に60年代から取り組み、「Precision Journalism(精度ジャーナリズム)」を唱えるノースカロライナ大名誉教授のフィリップ・メイヤーさんは、「データジャーナリズム・ハンドブック」の中で、今の変化をこう表現する。「情報が稀少なものだった時、最も力を注いだのは情報を見つけて収集することだった。情報があふれる今、より重要なのはその情報をどう取り扱うかということだ(when information was scarece, most of our efforts were devoted to hunting and gathering. now that information is abundant, processing is more important)」

ビッグデータによって、データは「Follow」するだけではなく、かみ砕くもの、つまり「Crunch the data」に向かいつつある。それこそが、ジャーナリズムにおける「第4のパラダイム」だ。

ディスカッションの中で、トニー・ヘイさんが「物語ること(storytelling)」の大切さに触れた点が印象的で、私もそのことについてコメントをさせてもらった。「国際ジャーナリズムフェスティバル」でインタビューをしたデータジャーナリストたちが、口をそろえて言っていたのが、まさにデータそのものよりも「物語ること」の重要性だったと。

ちなみにこのフォーラム、日本経済新聞社も後援リストの中にあったが、パネリストが朝日新聞社の人間で大丈夫だったのだろうか?

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朝日新聞記者のネット情報活用術

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