データが示す「災害弱者と情報弱者」

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10/01/2012 by kaztaira

7月に出版されていた『災害弱者と情報弱者 3・11後、何が見過ごされたのか』をようやく読んだ。早稲田のジャーナリズムコースの田中幹人さんと標葉隆馬さん、丸山紀一朗さんの共著。
 震災とメディアを扱ったあまたある本の一つなのだが、このテーマをデータで語り、それ自体がデータジャーナリズムの実践とも言える点が、個人的な今の関心にぴったりきた。書名からは読み取りにくいが、データ時代のメディア論だ。

「災害弱者――3・11被害とその背景にある社会」「情報弱者――震災をめぐる情報の格差」「震災語3カ月間の情報多様性」の3章構成。

「災害弱者」では、沿岸部の被災自治体の財政力や一人当たり所得と、死亡率との関係などを、膨大な統計データから読み解いていく。

このようにデータをマッシュアップしてそこに新たな文脈を見つけ出す手法は、ジャーナリズムの世界でも、コンピューター支援報道(CAR)やプリシジョン(精密)ジャーナリズム、そして今ではデータジャーナリズムと呼ばれる、データとコンピューターに裏打ちされた調査報道で用いられてきたものだ。

「情報弱者」では、震災から1カ月半の朝日新聞の報道を対象に、震災を巡る記事の推移を分析。「地震」「津波」「原発」というキーワードを含む記事の登場割合を追う。そこでは、「全体的な傾向として『原発』に関する話題が『地震』に関する話題をのみ込んでいってしまったと解釈できる」という。

そして「画一的」と見られる新聞メディアと対置して語られるブログメディアでも、「地震」「津波」「原発」「放射能」というキーワードを含むエントリーは時間とともに減少し、一方で「低線量被曝」「内部被曝」という特定のキーワードへと関心が向かっていった、と言う。

興味深かったのは、「震災後3カ月間の情報多様性」だ。ここでは新聞、ヤフートピックス、ブログ、トゥギャッター、ツイッターを対象に、震災、原発に関する情報がどれほど多様性を持っていたか、という検証だ。

こう結論づけている。

「もっとも注目すべきことは、一般に『未加工』や『無編集』ゆえに『多様性が高い』と捉えられがちなソーシャルメディアは、それ単体では多様ではなく、むしろそれら市場の声を整理し、編集したと考えられる新聞の情報が、(例えばトピックスなどのレベルでは)多様である場合のほうが多かった点です」

これはこの業界にいる人間としても、やや意外でもあり、「編集」の機能を改めて考え直す手がかりにもなった。

本書には「『私たちが持つべき視点』の獲得に向けて」という終章があるが、これは新しいメディアリテラシーに関する論考。「市民もまた、ニュースに 対する権利と責任がある」という言葉を引いているが、ダン・ギルモアの「あなたがメディア!」にも通じる議論だ。

データとメディアに興味のある方には面白い本だと思う。

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