クリス・アンダーソンとワイアード

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11/06/2012 by kaztaira

エコノミスト誌の米ビジネス担当編集者、クリス・アンダーソン氏がワイアード誌の編集長に就任する」。

2001年、確かにそんな記事を読んだ記憶がある。エコノミストとワイアード、随分毛色の違う人を編集長にもってきたな、という印象だった。これで路線も変わって、それまでのワイアードのカルチャーは消えてしまうんだろうな、と。

だが、それからの11年、数々のヒット企画とベストセラーを連発し、ワイアードといえばアンダーソン氏、と言われるまでに。

先週末報じられた「アンダーソン氏、ワイアード編集長辞任」のニュースには、私もびっくりした。

ただ、同氏の新刊『[メイカーズ] 21世紀の産業革命が始まる』を読むと、なるほどな、という感じもした。あくまでもシリコンバレーの伝統に忠実に従っている、ということのようなのだ。

ワイアードという雑誌には、1993年の創刊当時からシリコンバレーのカウンターカルチャーのDNAが色濃く埋め込まれている。

創刊に関わったケビン・ケリー氏やウェブ版のホットワイアードを手がけたハワード・ラインゴールド氏ら、スチュアート・ブランド氏のカウンターカルチャー雑誌「ホールアース・カタログ」「ホールアース・レビュー」やオンラインコミュニティ「ザ・ウェル」などのコニュニティの中心人物が、このメディアの方向性に大きな影響を与えていた。

創業者ルイス・ロゼット氏、ジェーン・メトカーフ氏らが、MITメディアラボの創設者、ニコラス・ネグロポンテ氏らから資金提供を受けてワイアード創刊に至るエピソードは、自らも執筆・編集に携わってきたゲイリー・ウルフ氏の『Wired – A Romance』などに詳しい。

結局、ワイアード誌は90年代末にコンデナストに売却され、そしてネットバブル崩壊を迎える。ネット業界的には最悪の状況の中で立て直しを託されたのがアンダーソン氏だった。

ロングテール』『フリー』のヒットに続いて出版された『メイカーズ』が掲げるのは、「モノのロングテール」だ。

小型で安価な3次元(3D)プリンターやCNC(コンピューター数値制御)装置、レーザーカッターや3Dスキャナーの登場によって、製品の試作品は手軽に安価に作れるようになり、発売当初からグローバル展開が可能になる。

アトム(モノ)からビット(デジタル)へ、とネグロポンテ氏が唱えたデジタル革命(ビーイング・デジタル)の先に、ビット(デジタル)からアトム(モノ)へというもの作り革命がある、とアンダーソン氏は説く。

その行き着く先は、若きスティーブ・ジョブズ氏らがガレージで手作りパソコンの制作にいそしんだ「ホームブリュー・コンピュータークラブ」だと述べる。

さらにスチュアート・ブランド氏の「情報はフリーになりたがる」をもの作りにあてはめ、「デジタル生産は、(中略)従来のもの作りではコストのかかるものが、無料になる」と言い、「多様性はフリーになる」「複雑さはフリーになる」「柔軟性はフリーになる」と指摘する。

その議論自体もなかなか面白いのだが、アンダーソン氏も、2009年に立ち上げたドローン(ラジコン)の製作キット販売の3Dロボティクス社に専念するため、ワイアードの編集長を辞任するという。自身が、この新しい「産業革命」の中心にいるわけだ。

モノとデジタル、それをつなぐプラットホームという組み合わせの強みは、アップルやアマゾンが十二分に証明してみせている。

そんなイノベーションのきっかけを、個人でも試してみることができる、ということなのだろう。

ちなみに、ワイアードの創業者の2人は、今はサンフランシスコで「TCHO」というチョコレートの製造販売の会社を経営している。これもモノの世界だ。

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