「消えゆく新聞」の価値

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11/19/2012 by kaztaira

データジャーナリズムの元祖とも言えるノースカロライナ大学チェペルヒル校のフィリップ・メイヤー名誉教授の著書『消えゆく新聞(The Vanishing Newspaper: Saving Journalism in the Information Age)』を、今さらながらに読んだ。8年も前の本なので、ソーシャルメディアもビッグデータも一切出てこない。だが、新聞の現状、課題と取り得る選択肢を、データジャーナリズムの手法で説き明かしているまさに今読むべき本だった。


メイヤー教授については、以前も紹介したが、コンピューターとデータ、統計的手法をジャーナリズムに取り込むコンピューター支援報道(CAR)を60年代から実践し、70年代からはそれをさらに発展させた「Precision Journalism(精度ジャーナリズム)」を実践・提唱してきた。いまのデータジャーナリズムは、さらにそこにデータのビジュアル化の要素が加わったものだが、源流はCAR、Precision Journalismにある。

その元祖の著書「消えゆく新聞」が出版されたのは、グーグルやアマゾン、ヤフーなどのネット企業の台頭で、新聞の危機が切実さをもって叫ばれるようになった2004年。米新聞業界を倒産、身売り、解雇の嵐が本格的に襲うのはそれから数年後のことだ。

メイヤー氏自身も30年以上にわたって新聞業界、それも今はなきかつての巨大新聞チェーン、ナイトリッダーで活躍してきた新聞人だ。

本書が取り上げるのは、まさにその新聞の「価値」とは何か、というテーマだ。そしてその「価値」は新聞の収益にどう結びつくのか。

このテーマが新聞人の精神論として語られることは、さほど珍しくはない。メイヤー氏は、それをデータで示していく。

まず新聞ビジネスの専門家たちの見立てを紹介する。新聞の「価値」は8割が「のれん」、物理的な資産価値は2割にすぎない、と。そして「のれん」はすなわち、読者からの信頼であり、社会への影響力だと言う。

その「信頼」は、新聞の閲読率、広告料金とどのような相関関係にあるのか。メイヤー氏はそれをひとつひとつデータで検証。因果関係はともかく、そこに相関関係があることを明らかにする。

メイヤー氏の分析は、さらに記事の正確さ、読みやすさ、綴りの間違いの有無、編集者の能力にまで及ぶ。

そして、デジタル時代のジャーナリズム。「ジャーナリストの使命は、(ニュースの)運搬からプロセッシング(処理)へとシフトしてきた」とメイヤー氏。「そして、真実を読者の手元に届けるだけでなく、その頭の中へと届けなければいけないなら、読者がどのようにニュースを消化していくのか、その認識のプロセスを理解することが重要になってくる」

それはデータジャーナリズムの核心部分でもある。そのことを通じて、デジタル時代の「信頼」を確保していかなくてはならない、とメイヤー氏は説く。

この分野に関心がある人には、学ぶところは多いと思う。

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