『ネットユーザーの同意』とネットの自由

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11/26/2012 by kaztaira

読まなくてはと思いながら、1年近く手つかずになっていたレベッカ・マッキノンさんの本『Consent of the Networked: The Worldwide Struggle For Internet Freedom』を、休日をつかって一気読み。

期待に違わぬよい本だった。

裏表紙にならぶ推薦の言葉はMITメディアラボ所長の伊藤穣一さん、ハーバード大のジョセフ・ナイさん、そしてクレイズリストの創業者、クレイグ・ニューマークさん。おおよその読者層も察しがつくというものだ。

レベッカ・マッキノンさんは、元CNN北京特派員、東京支局長。アクティビストで、国際的なブログのアグリゲーションサイト「グローバル・ボイス」の共同創設者でもある。

タイトルが示している通り、本書はまさにネットの自由の現状と課題を、様々な角度から丁寧に深掘りした労作だ。「統治される者の同意(Consent of the Governed)」に由来するこのタイトルは、「ネットユーザーの同意 ネットの自由をめぐる世界規模の戦い」といった訳語になるか。

ネットは市民に自由をもたらし、独裁政権をもゆるがす。アラブの春を見れば、大筋において、それはその通りだ。

ただ、マッキノンさんの議論はより細部にわたり、現実を直視する。テクノロジーは個人に力を与えると同時に、その恩恵は専制国家にも及び、より大きな監視と統制の力を与える、と。

崩壊前のチュニジアやエジプトの独裁政権は、まさにソーシャルメディアを反体制派の監視に利用し、エジプトにいたってはインタネットの回線そのものの遮断まで実施した。そして、それをより大規模に、成功裏に進めているのが中国だ、と。

コンテンツのフィルタリングシステム「ネットの万里の長城(great firewall)」からプロバイダー(ISP)を通じた監視、政府系ハッカーやブロガーの活動――幾重にも階層化したネットの統制が、中国版のジャスミン革命を効果的に阻止する。

そして、その監視には機器やシステムには、米国ブランドのものが使われ、米国の投資が流れ込む。

ポルノや著作権侵害、有害コンテンツ。ネット監視の理由や技術は、翻って民主国家であるはずの米国でも(本書で言及はないが、実際は日本でも)、使われている。

さらに、革命に一役かったというフェイスブックのサービスも、一方ではプライバシーの不安が指摘されて久しい。個人生活情報の固まり、プライバシーの固まりとも言えるソーシャルメディアは、独裁政権側からみれば人間関係をまるごと補足できる便利なツールだ。

いや応なく社会が暮らしがネットに依存するようになっことで、ソーシャルメディアや通信などのサービスが、ローレンス・レッシグさんの言う、事実上の「法(コード)」として機能している今。統治する者とされる者の間の「同意」のような、ネットユーザーとサービス側、さらに政府との新たな「同意」が必要だ、とマッキノンさんは指摘する。

そのために、「グローバル・ボイス」のほかに、企業や研究機関が連携してネットの自由を確保していくプロジェクトで、マッキノンさん自身も関わる「グローバル・ネットワーク・イニシアチブ(GNI)」などの取り組みも紹介する。

巻末で紹介される中国の芸術家でアクティビスト、艾未未さんとの対話のエピソードが味わいがある。

「民主主義は政治的な理想論ではない。民主主義は問題に取り組むための手段だ。この手法は効果的だ――なぜ? 社会の一人ひとりが自らの責任を果たしていくからだ」と艾未未さんが言う。

そしてマッキノンさんはこう記す。「デジタルパワーを悪用させないために、それを自分たち自身で悪用しないために、私たちみんなができることをやっていく責任がある」

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