2013年のジャーナリズム(その1)

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01/04/2013 by kaztaira

年末年始のたのしみの一つが、ハーバード大学のニーマン・ジャーナリズム・ラボが掲載する「新年のジャーナリズム予測」のシリーズだ。

nieman毎年、メディアのイノベーションの最先端で活躍する業界著名人たちが登場し、年の瀬、翌年のジャーナリズム状況を占ってみせる、という企画。1年のおさらににもなるし、それぞれが業界の当事者でもあるので、話がリアルで刺激的。

「2013年のジャーナリズム予測」も36人の専門家たちがさまざまなトレンド予測を、独特の語り口で披露している。

まずは、『あなたがメディア!』の著者、ジャーナリストのダン・ギルモアさん。「算数をしろ(Do the math)

先月、アリゾナ州立大にメディア業界の著名人たちが集まった「ニュース・フーキャンプ」で、大統領選オバマ陣営のCTO、ハーパー・リードさんがメディア業界へのアドバイスを問われて、「とにかく算数をしろ(Fucking do math)」といったとか。

「そのテーマについて、データが何を物語るのか。数字を使うことで、ジャーナリストはそれを読者に伝えることができ、しかも相対的なリスクのあり方などのニュアンスを説明することもできる」

『ネット・バカ』のニコラス・カーさんは、「2013年はついに(ジャーナリズム)”崩壊”について議論しなくてもすむ年になるだろう。そう願いたい。そこでようやく、どんな変化が起きているのか、ということに加え、その中で何が生き残っていくのかという議論を始められるのだから」

犯罪検証サイト「ホーミサイド・ウォッチ」の創設者、ローラ・アミコさんは、コネチカットの小学校での銃乱射事件から、「では私たちは何をしたらいいのか」という読者の疑問・課題解決の役割を担う「ソリューション・ジャーナリズム」という考え方を提示する。「政治的な、そして読者の関心の高いテーマについて、コンテクストを提示し、読者のコミュニティをつくりあげる報道。それは読者の価値ある会話に関わっていくジャーナリズムだ」

ニューヨーク・タイムズのエマージングプラットホーム・エディター、フィオナ・スプルールさんは、「モバイルファースト」。「11月現在、ニューヨーク・タイムズへの総アクセス(ウェブ、モバイル、アプリを含め)の37パーセントが携帯電話とタブレットからだ。2011年が28パーセント、2010年が20パーセントで、年々その割合は上がっている。話は単純。大半の読者がいる場所に、注力しろ、ということだ。ただ、もちろん実際にはそう簡単な話ではない」。リソースの問題、ビジネスモデルの問題。課題は山積、だと。

ノースウェスタン大ナイト・ラボ所長のミランダ・マリガンさんは、「ロボットの台頭」。「ジャーナリズムの願いがかなうなら、2013年はニュースの未来を担う無数のロボットたちが登場してくるだろう――そしてそれは多分実現すると思う」。これはすでにいくつかの実用例がある、記事の自動生成システムが、さらに高性能になって普及していくという「ロボット・ジャーナリズム」の見立てだ。

著書(とウェブも)『ニューソノミクス』で知られるメディアアナリスト、ケン・ドクターさんは数字をベースにしたシニカルな10の見立てを披露。「都市部の新聞発行人の半減期:5年前の半数に」「2ダース:ニューヨーク・タイムズの課金の後追いをし、年間の購読料収入が広告収入を上回る日刊紙」「名門紙の入荷:あれこれ注文が多くて時間ばかりかかる人材採用なんかしている場合じゃない。お屋敷を買うぐらいの値段で新聞社が買えるんだぞ。5年前にダウ・ジョーンズが売りに出たときの10分の1ちょっとの値段でトリビューングループの8紙の全株式が買えるんだ。2紙ぐらいどう?」

コミュニティーサイト「メタフィルター」創設者、マット・ホーヒーさんは別の意味でシニカル。「破壊者が崩壊し始めている」。 「最近気づいたのは、破壊者の勢力が自分たちも崩壊を始めているんじゃないか、という雰囲気だ。2000年代半ばのウェブ2.0企業(フレンドスター、ブログラインズ等)はみんな姿を消したか売りに出されて大手にのみ込まれたか、だ」。フェイスブックも収益確保には苦しんでいるし、モバイルアプリも確たるビジネスモデルがあるわけではない。つまり一言でいうと、「インターネットさんよ、俺ら自分で自分をクレイグズリストで売りに出してるぜ(Hey Internet, We’re Craigslisting Ourselves Now)」

「コンテンツ・マガジン」のエディター、エリン・キセンさんは、「データジャーナリズムの登場とジャーナリズムのためのプログラム開発はワクワクさせる動きだ。ジャーナリズムのあちらこちらで雇用が活発化するのがうれしいのはその通りだけど、それによって読者が積極的にニュースに接することができるのがいい」

アトランティックのビジネスサイト「クォーツ」編集長、ケビン・J・デラニーさんは、「ネイティブアプリかHTML5か」問題について。 「ネイティブアプリは処理能力が要求される重たい画像満載のゲームなどには向いているけれど、おおむねニュースサイトはそんな要求水準にはない。それにモバイルやタブレットのハードの性能向上で、ウェブアプリのパフォーマンス自体も上がっていくだろう。多くのパブリッシャーが2013年にはネイティブアプリへの注力を考え直して、HTML5の検討を始めると思う」

カナダのニュースサイト「Globalnews.ca」のデジタルディレクター、デビッド・スコックさんは『イノベーションのジレンマ』のクレイトン・クリステンセンさんと、ジャーナリズムにおける”破壊的イノベーション”について共同研究をしてきたという。その論文もあとでぜひ読んでおきたいが、その結論は「マーケット主導でハイクオリティのジャーナリズムが復活する」というもの。「読者の満足度をさらに高めていく必要があり、それはつまりハイクオリティで深掘りの報道に投資をしていくということを意味する。一方、報道機関のニュースをかき集めるアグリゲーター勢力にも問題はある。既存の報道機関がニュースへのコストを極端に切り詰めているため、そのニュースに依存するだけ、というモデルが成立しなくなっているのだ。そこで破壊者勢力は、自分自身でオリジナルのニュースコンテンツをつくるための投資が必要になってきている。2013年はかなりユニークな光景が展開されるだろう。破壊者をくい止めようとする既存の報道機関は、独自のジャーナリズムに投資をしてくだろう。そしてマーケットシェアを広げたい破壊者もまた、独自のジャーナリズムに投資をしていく。私たちにとってはいいニュース、というわけだ」

ガーディアン米国版の経済エディター、ハイジ・ムーアさんは、「報道局は作戦司令室に(Newsrooms as war rooms)」。「報道局の日々のニュースへの関与度は弱まっていくだろう――24時間、毎分ごとのニュースのサイクルは、すでに私たちの手にあまる。それよりも、戦争の作戦司令室か研究所のようなものになっていくだろう。そこでは研究者のチームがニュースの日付にこだわらず、コンテクストをどう描き、どう見せ、どう解説し、そしてカギをなる情報を広めていくか、ということを考えていくのだ」。データジャーナリズム、そしてユーザー体験をどうする、という話だ。

センター・フォー・インベスティゲイティブ・リポーティング(CIR)の論説主幹、マーク・カッチェスさんはその肩書ならではのリアルな見通し。「さらば社説」。「新聞社は次第に社説の執筆をやめていくだろう。読者の輪に加わる、フォーラムを企画する、イベントを開催する、円卓会議のとりまとめをする。そういったことを通じて、コミュニティーをリードしていく役割を担うことができるということに、気づいていくだろう。それによって、一方的に読者に考えるべきポイントを提示する、というスタイルで、読者の大半を疎外してしまうという危険を回避することもできる」

なるほど。(続く)

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朝日新聞記者のネット情報活用術

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