2013年のジャーナリズム(その2)

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01/07/2013 by kaztaira

2013年のジャーナリズム(その1)」で紹介した、ハーバード大学ニーマン・ジャーナリズム・ラボの「2013年のジャーナリズム予測」の続き。

nieman2ナイト財団のメディアイノベーション・プログラム・リーダーで元ガネット副社長のマイケル・マネスさんはタイトルから辛口。「速報ニュースが壊れてる(Breaking is broken)」。「ソーシャルメディアの時代に、既存の大手報道機関の速報ニュースへのアプローチも考え直す必要がある。ハリケーン・サンディの報道ぶりがいい例だが、速報ニュースの出来事を前に、報道機関はリソースは浪費するばかり。だが一方で、しっかりとした報道がいかに不可欠かを示せるチャンスでもあるのだが」。アラブの春について、圧倒的なソーシャルメディアのキュレーション機能を果たしたNPRのアンディ・カービンさんを例に、「先進的でコンテクストを提示できるジャーナリストの報道に加えて、報道局に求められるのは、ソーシャルメディアの情報を、フィルターにかけ、真偽を確かめ、キュレーションし、読者に広めていくことができる能力だ」と言う。

ワシントン・ポストの元編集主幹で、現在はウォールストリト・ジャーナル・デジタル・ネットワークの編集主幹、ラジュ・ナリセッティさんの話は、リアルすぎて気が滅入る。タイトルは「希望と現実は別物(Hope ≠ reality)」。ナリセッティさんは、単なる予測ではなく、「起きるべきこと(What should happen)」と「起きるだろうこと(What will happen)」を分けて論じていると、特に前者が赤裸々。「報道局の責任者たちは、2013年、報道局のジャーナリストの役割には、自分の記事により多くのデジタル読者を連れてくることが含まれるんだと、もっと公式に強調しておくべきだ」「報道局は、デジタル読者に優れたコンテンツを提供するというだけの評価基準から、そのジャーナリズムによって読者に優れた「体験」を提供できているか、という評価基準へとシフトするべきだ」「『モバイルファースト』はすべての報道局のスローガンにするべきだ。大半の報道局で、デジタルコンテンツへの接触の3割から5割がモバイル端末にシフトしていく」
そして、「起きるだろうこと」も辛辣。「米国の新聞社からの無料ニュースコンテンツは、課金制度の普及でより稀少なものになるだろう。一方、ニューヨーク・タイムズの課金制に見習う「じゃあウチも」組の課金は、収入の追加はあるにしても、大半の都市部の新聞社ではビジネスモデルを維持できないだろう」「新聞社の統合の波は、米英のトップクラスの新聞社も襲うだろう」。そのパンチは最後まで衰えない。「編集局の予算管理や雇用の維持には一切責任のない人々による、ツイッターでのメディアの箴言はなお衰えを知らないであろう」

フロリダ大学教授のミンディ・マクアダムスさんは、「読者の視点に立て」という。

「2013年のジャーナリストにとって、それがリアルな課題だ」と。「それは、ビジネスモデルよりも重要。だって売ろうとしているものを誰も欲しがっていないなら、そもそも売れっこないんだから。ジャーナリストが考えなくちゃいけないのは、毎朝、新聞のウェブサイトを見に来るような人たちじゃない。それに(ニューヨーク・タイムズのコラムニスト)ニコラス・クリストフのフェイスブック・ページや(CNNのキャスター)アンダーソン・クーバーのツイッターをフォローしているような人たちでもない。ニュースジャンキーは、これといったニュースのない日にだってニュースを探している。ジャーナリズムのビジネスに何の関係もない人たちに聞いてみれば、彼らは大体ネットでニュースを見てる、と言うでしょう。それはウソじゃない。ただ、彼らはニュースジャンキーと同じアプローチはとらない。シリア情勢のニュースを追いかけたりもしない。しかし、スポーツ専門局のアメフット中継に関係するあらゆることをフォローしているかもしれない。多くの大学生はゲームサイトのニュースを定期的にチェックしている。それが彼らのニュース収集の作法なのだ」。例えばコネチカットの銃乱射事件。メディアは、そのような読者が身近に必要としているニュースを報じることができていたか、と。

メディア・イベント・リサーチの「ストリートファイト」共同創業者デビッド・ハーシュマンさんとローラ・リッチさんは、「ローカルニュースが自動化されていく」と占う。ジャーナティック社は、「ロボット」プログラムによる記事の自動作成と、低賃金のフィリピン人ジャーナリストらの活用で、ローカル紙などに対する低コストでのニュース配信を実現していた。だが、記事の署名偽造などの問題が表面化、契約打ち切りが相次いだ。「たた、一つ明らかなことは、ローカルニュースをフルタイムのプロのジャーナリストが手がけるとなると、高くつきすぎる――そして恐らく、多くの記事で、そのコストが収入に見合わなくなってしまうのだ」。そしてジャーナティックのような自動化と効率的なニュース配信こそがローカル紙を持続可能にしていくモデルなのだ、と。

ネブラスカ大学教授のマット・ウェイトさんは、このところ話題の「レスポンシブ・ウェブ・デザイン」について、「レスポンシブ・デザインがおかしなことになっていく年」。レスポンシブ・ウェブ・デザインとは、パソコン、タブレット、スマートフォンなど、画面のサイズを判別し、デザイン・レイアウトを自動調整すること。BBC、タイム、ガーディアン、マッシャブルなどが相次いで採用している。ただ、画面サイズはそれだけにはとどまらない、とウェイトさん。「ではそのコンテンツはスマートテレビではどう見える。あるいは(スマート家電の)冷蔵庫のドアでは、でなければトイレの鏡では?」。さらに、グーグルが手がけるスマートメガネ「グーグル・グラス」ではどんな見栄えになる? レスポンシブが暴走を始める、というわけだ。

ここまで見たところで、今のジャーナリズムのキーワードは、ほぼ網羅されていたのではないだろうか。2013年は、そんな年になるらしい。

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