「新聞」が消えた後のメディア

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02/17/2013 by kaztaira

創業150年の歴史を持つ「ロッキーマウンテン・ニュース」が、様々な驚きの声とともに廃刊を迎えたのが2009年2月末だった。

rmn新聞の地盤沈下の象徴のような「事件」から4年、「ロッキーマウンテン・ニュースの廃刊でコロラドのメディア状況はどう変わったか」という興味深い記事が米ポインター研究所のサイトに掲載された。

筆者はポインターの編集長、マラリー・ジャン・テノレさん。

廃刊後のジャーナリストたち、起業とジャーナリズム、そしてメディアの持続モデルなど、メディア界が抱えている問題点が凝縮したようなストーリーだ。

まずは廃刊後のジャーナリストたち。ライバル紙のデンバー・ポストに移った人たちもいるという。4人のコラムニスト、論説主幹、政治やエネルギーなどの担当記者4人(さらにそこから転出した人もいるようだ)。〝看板記者たち〟ということだろう。

ただ、ライバル紙といっても2000年の共同事業協定を結んでいて、業務部門については「デンバー通信」のもとで2紙が共同運営する形態だったらしい。このためロッキーマウンテンの読者には、廃刊後、購読契約期間内はポストを配達していたようだ。

ジョン・テンプルさんの、このブログは味わい深い。

ロッキーマウンテンの編集長・発行人として4回のピュリツァー賞を受け、そして廃刊を見届けた人だ。

テンプルさん自身は、デジタルジャーナリズムに積極的に取り組んだ人らしい。廃刊後には、ホノルルのニュースサイト「シビルビート」の創刊編集長兼編集局長を務めた後、昨春からワシントン・ポストの編集局長に就任している。

「シビルビート」の創設者は、イーベイの創業者、ピエール・オミディアさんだ。

ブログの日付は廃刊から2年後の2011年2月。テンプルさんは、廃刊時のパートタイムを含むスタッフ194人のその後の聞き取り調査を実施。146人から回答があり、うち52人はすでにジャーナリズムとは無関係だったという。建設現場、レストラン、大学、広告会社、と職種はまちまち。無職、引退、などの回答もあったが、4割、22人はロッキーマウンテン時代より暮らし向きはよくなった、という。一方、ジャーナリズムの世界に残った人たちで暮らしがよくなったと回答したのは、4分の1足らずだったようだ。

ロッキーマウンテンの親会社だったスクリップスは、同紙廃刊から2年で株価が8倍にあがったのだという。

そして、ジャーナリズムの世界に残った人々。

月額4ドルの課金モデルで2009年7月に始めたニュースサイト「ロッキーマウンテン・インディペンデント」は、わずか3カ月で終了してしまう。

やはり2009年2月にスタートしたサイト「インサイト・ザ・ロッキーズ」も3年で終了。

一方で、調査報道を担当していたアン・イムセさんがコロラドの公共放送「コロラド・パブリック・テレビ12」と提携して立ち上げたNPO「コロラド・パブリック・ニュース」は、今では全米44のメディアにコンテンツを提供するまでに成長したという。健康問題に焦点を絞り、深く掘り下げた記事で特色を出しているようだ。

スタッフは6人、記事配信は無料。配信先に支援を依頼しても反応はなく、資金は財団からの助成金で成り立っているという。

取材力が限られる州内の小さなローカル紙では、パブリック・ニュースの配信するすべての記事を掲載しているところもあるようだ。コロラド全体をカバーし、ローカル紙にも配信していたロッキーマウンテン・ニュースがなくなったことで、州内のほかの地域で何か起きているか、というニュースが途絶するようになったのだという。

ローカル紙にとっての大きなニュースの配信元であるAP通信ですら、コロラドのスタッフは2人減員なのだと。

やはりのロッキーマウンテン・ニュースの調査報道記者だったローラ・フランクさんが立ち上げたのがNPO「ロッキーマウンテン・インベスティゲーティブ・ニュースネットワーク(I-News)」。当初から公共放送のロッキーマウンテンPBSと提携関係にあったが、公共ラジオのKUVOを加えた3者が今月、統合して、複合プラットホームのメディアとして再スタートをきることになったようだ。

ニーマン・ジャーナリズム・ラボの記事をみると、この統合で、I-Newsは財政的には安定するが、そもそも年間1100万ドル程度の助成金や支援金で運営されているPBSにとっては、I-Newsの5人のジャーナリスト(ロッキーマウンテン出身)増員分の50万ドル程度をさらに調達することが必要になる、とロッキーマウンテンPBSのCEO、ダグ・プライスさんが話している。

ただ、プライスさんはポインターの記事で、報道局を統合することで「運営コストを下げながら、コンテンツを増やすことができる」とも述べている。

さらに「持続可能性は調査報道NPOの重要課題。それは多くの新聞社にとっても言えることだ」とI-News編集局長のジェームズ・トロッターさん。

一方のデンバー・ポストだが、ロッキーマウンテン・ニュースの廃刊後半年で、同紙購読者の86%を獲得したという。 約41万部の部数は全米10位に食い込む。ただ、部数の減少傾向はとまらず、リストラも続く。

そして、I-Newsやコロラド・パブリック・ニュースの配信も受けながら、教育や行政といった自社の強みに注力していくのだという。

他のメディアと連携しながら、それぞれの強みに特化し、競争力をつけ、コストをおさえ、持続可能なモデルに軸足を移していく。

ロッキーマウンテン・ニュースの廃刊から4年の間にコロラドで起きている変化は、メディアの規模を問わず、学ぶべきところがあると思う。

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