ワシントン・ポスト、最後のオンブズマン

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02/24/2013 by kaztaira

こんなことまで可視化される時代なんだな。

2月15日付けでワシントン・ポストのサイトにこんなコラムが載っていた。「ワシントン・ポストの最後のオンブズマン?

筆者は同紙のオンブズマン、パトリック・B・パクストンさん。まぎれもない当事者本人だ。

ombudsman新聞社のオンブズマンとは、一定の任期で外部の有識者を招き、読者の代表として新聞の紙面や取材のあり方などに意見を述べてもらうという制度だ。週1回の程度の割合でオピニオンのページにコラムを書いたりする。日本の新聞社でも似たような仕組みはある。

パクストンさんは、30年近いキャリアを持つジャーナリストだけあって、コラムは書き出しから簡潔明瞭。

「私はワシントン・ポストの最後の独立オンブズマンとなり、今月28日に2年の任期が切れた後は、このポストは空席になるようだ。それはつまり、常勤の読者代表であり批評家を雇用するという、この新聞が43年近くも堅持してきた勇気と自信の歴史に終止符が打たれるということだ」

パクストンさんがあげる理由はコストカット、ソーシャルメディア時代の変化、そして新聞社が財政基盤の弱体化で批判に打たれ弱くなっている点だ。

パクストンさんは、同紙の新編集主幹、マーティ・バロンさんとのやりとりまで紹介してみせる。

「我々の報道を批判してくれる外部の人間なら、ごまんといるんだよ。彼らは編集局からは完全に独立しているし、給料を払ってるわけでもないのに」

彼ら、とはブロガーであり、ツイッターユーザーだ。誰でもメディア時代、批判は即座に、あらゆる方向から押し寄せる。しかもタダで。

バロンさんは「(限られた)リソースのせめぎ合い」が起きている、とも口にしたそうだ。編集局幹部なみのオンブズマンの給料は、削減候補にはなるだろう、とパクストンさん。

それでも、とパクストンさんはオンブズマン廃止には反対する。オンブズマンは読者の最後のよりどころだと。
毎週日曜日に掲載しているコラムやブログの内容は、8割は読者からの声で気づかされたこと、そして1割はワシントン・ポスト社内から寄せられる問題点指摘の声だという。残りの1割が、「何でもフリー」という今の激動するメディア状況を何とか理解しようとするパクストンさん自身の視点だと。

コラムの執筆にかける時間は全体の3割程度。残りの時間は、月に5000通にものぼるメールなどの読者とのやりとりに費やされ、それは日夜、休日も問わないようだ。

そしてオンブズマンのコスト。

パクストンさんとアシスタントは、日に何度も購読をやめたいという声をきちんと聞きくことで、読者をつなぎとめているという。「宅配の年間購読料383ドルを考えれば、つなぎとめた購読料分で私たちの給料は十分ペイできている」

さらにソーシャルメディア時代に、実は読者の声が新聞社に届いていない現実があると指摘する。

「ソーシャルメディアのユートピア的な発想で、今や記者も編集者も、読者のあらゆる不満に即座にネットで対応できるから、オンブズマンのような両者の橋渡し役の役目は終わったと言う」

「だが現実には、記者も編集者も、かつてないほどのスピードを求められ、より大量の出稿を求められる。ツイッターだ、ブログだ、写真にビデオも撮れ、とにかく何でもしろ。彼らは常に疲弊している。そこで置き去りにされているのは、伴侶や子どもたちの他に誰がいる? 読者だ」

読者が疑問や不満があっても、電話やメールを返してくれるような記者や編集者はほとんどいない、と。

行き場を失った読者の声をすくい取り、しがらみのない立場で問題は根本から洗い出し、忌憚のない意見をのべることができるのが、オンブズマンだとパクストンさんは言う。

「オンブズマンがワシントン・ポストの信頼性を高めたと言えるだろうか。それを証明できるような研究結果はついぞ知らない。ただ、メディアへの信頼は低下し続けている。オンブズマンの廃止は近視眼的な方策だ」

メディア関係者なら、読んでいて身につまされるだろう。というかリアルすぎて半分涙目に。

これに反応したのがスティーブン・プリチャードさん。「ワシントン・ポストがオンブズマンを存続させるべき理由」。 英オブザーバーの読者エディターで、ニュースオンブズマン機構代表でもある。

プリチャートさんは、この話を知って、ワシントン・ポストの編集長、マーティ・バロンさんに電話で懸念を伝えたという。バロンさんからの回答は、コスト削減を迫られていること、読者対応にはこれまでとは別の方法を考えていること、そして、その判断をするのはバロンさんではなく、発行人のキャサリン・ウェイマスさんだろうということ。

そしてプリチャードさんは、ポスト紙がオンブズマンを廃止することになれば、それは財政的にも悪い結果をもたらすだろうと指摘する。

「そろばん勘定だけでは通用しないメディアの世界で、透明性を確保し、説明責任を果たすことが、逆境のビジネスを下支えすることになる。苦情に対して素早い救済策を提供することによってのみ、信頼を高めることができる。ネット上の臆測があふれるこの世界で、既存メディアがますます高めていかなければならないのが、この信頼性なのだ」

そしてオンブズマンは消えゆく仕事ではない、と。新たに導入したいというメディア企業の招きで、プリチャードさんはハンガリーやドイツにも出張しており、アルゼンチンやコロンビア、メキシコなどの中南米でもメディアのオンブズマンは広がっているのだと。

そもそもワシントン・ポストは米国でオンブズマンを導入した2番目に古い新聞社なのだという。

「ワシントン・ポストで成熟したこのシステムは、今やそれを見習って世界中のあらゆるメディア企業い広まっている。このシステムに価値があるからこそだ。この価値基準を生み出した新聞社が、その価値を理解できることを望むばかりだ」

一読をおすすめします。
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