ソーシャルメディアはジャーナリズムの何の役に立つのか

コメントする

03/10/2013 by kaztaira

ソーシャルメディアとジャーナリズム、というテーマでは、すでに様々な本やレポートが出ているが、これはちょっと変わった視点のレポートだった。

ツイッターは何の役にたつのか? 公共ジャーナリズムにおけるソーシャルメディアの価値

Exif_JPEG_PICTURE筆者はナジャ・ハーンさんというオーストリアの公共放送ORFの経済記者。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のポリス研究所で、欧州放送連合(EBU)研究員としての研究成果だという。

ハーンさんのテーマは、受信料収入によって成り立つ公共放送にとって、ソーシャルメディアはどのような意味を持つのか、というもの。さらに興味深いのは、ハーンさん自身はソーシャルメディアの活用を「法律で」制限されている、という点だ。

この点は、報告書の中でも参考資料として詳しく説明されているが、オーストリアでは、公共放送のソーシャルメディア活用が、民間放送の広告市場に悪影響を及ぼす、というロジックで、公共放送がソーシャルメディア企業と提携したり、ソーシャルメディアのページにリンクしたりすることを制限する法律が3年前に通ったのだという。

つまりこのレポートは、ソーシャルメディアに精通したジャーナリストが最先端の活用事例を紹介する、というのとは対極の、ソーシャルメディアを禁じられたジャーナリストが、それでも公共ジャーナリズムにとってのソーシャルメディアの価値を探る、という建て付けになっているのだ。

だから、このレポートには、驚くような最新のテクニックも理論も出てこない。それでも特にジャーナリズムの現場にいるとっては、妙に生々しくて説得力のある実例と見解が満載だ。

紹介事例は英国のBBCなどが中心だが、どのメディアのどの報道局にもあてはまるエピソードばかりだ。

たぶん、このレポートがリアルなのは、誰もがもやもやと感じていながら、今更口にできない疑問を一から問い詰めているからだろう。

結局、ソーシャルメディアはジャーナリズムの何の役に立つのか、という疑問だ。

例えばニュースの収集。BBCの国際ニュースのプロデューサー、スチュアート・ヒューズさんは、3年前まではロイターやAPといった通信社のニュースと自社のニュースを主にチェックしていたが、いまや通信社のニュースの依存度は2割。8割はツイッターでのニュースチェックに割いているという。

ニュースはツイッターではじける、と。

そして、情報収集、リアルタイムの速報、視聴者との双方向性、情報の確度のチェック、記者のトレーニングなど、ソーシャルメディアの利点、注意点を丁寧におさらいしていく。

ツイッターで特ダネが台無しになるのか。英民間放送局ITVのオンラインニュース・エディター、ジェイソン・ミルズさんは「他社がネタを横取りするのはかなり難しい。もしあるテーマを(ソーシャルメディアで)取り上げていれば、それが誰のネタなのかは一目瞭然だから」。

さらにBBCのヒューズさんは、ソーシャルメディアで手持ちのデータをあまり気前よく出し過ぎるべきでもないが、視聴者にちょっとした質問をするぐらいなら、テーマ全体を開示することにはならないという。そして、24時間サイクルの猛スピードで動くニュースの世界では、いずれにしても特ダネの賞味期限はそう長くはない、と。

カーネギーメロン大、MIT、ジョージア工科大の研究によると、ツイッターユーザーが嫌うツイートとは:誰かの会話の断片、個人的な気分とか行動の報告、迷子になりそうな複雑なリンク、何の説明もないサイトや写真へのリンク、ツイッター上でいったん収束したような古いニュース。

ではツイッターユーザーが好むツイートとは:フォロワーへの質問、情報の共有、自分が書いたコンテンツへのリンクなど自己プロモーション。

なるほど。

BBCのソーシャルニュース・エディターのマーク・フランケルさんは、ツイートをするいは、記事を書くのとは違う新しいスキルが必要だという。ユーザーに問いかける、興味を引くような発言を取り上げる、事実の裏付けを加えることでツイートをさらに魅力的にする、ツイッターを安易にフェイスブックに連動させてフォロワーをうるさがらせたりしない、など。

これも、なるほど。

総選挙、災害、あるいは厄介な事件を担当する競合の2人の記者がいたとして、先にそれをツイートした方がスクープを手にしたことになるんだ、と。どの報道局にも懐疑派はいるが、いつかそれが腑に落ちる時がくる、と。

ただ、ソーシャルメディアを使うにも、リソースは限られている。現実的なポートフォリオが必要になる。

BBCラジオ4の番組「PM」のエディター、ジャンア・カーさんは、聴取者の年齢層が比較的高く、番組でのコミュニケーションはソーシャルメディアよりもメールの方が好まれるという。あまり活発な反応がないブログはリストラしたりもしている。フェイスブックにリソースを割くのにも否定的だ。だが、情報収集にはソーシャルメディアは欠かせないし、何より「ツイッターの使い方がわからないような人を雇うつもりはない」とカーさん。

BBCのソーシャルニュース・チームのマネージャー、マーク・フランケルさんのこの言葉もわかりやすい。「もし人々が以前のようにテレビやラジオを見たり聴いたりしなくなっているなら、ソーシャルメディアは重要なマーケティングツールだ。私たちは視聴者の中に入っていかなければならない。見に来てくれるかどうかは視聴者次第、ではなくて、視聴者を探せるかどうか、それは私たち次第なのだ」

実務系のメディア関係者には、特に勉強になるレポートです。

————————

cover3

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝日新聞記者のネット情報活用術

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中

アーカイブ

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。