未来のニュース産業のモデル

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03/17/2013 by kaztaira

『ニューソノミクス ニュースを変える12の新潮流(Newsonomics: Twelve New Trends That Will Shape the News You Get)』という2010年に出た本がある。こちらがホームページ

ネットとジャーナリズムに関心のある人にはかなりおすすめの本で、業界周辺で話題にもなり、誰か翻訳出版の企画書を回しているだろうなと思ったが、結局、翻訳は出てきていない。

Exif_JPEG_PICTURE「ニュースのゲートキーパーはいなくなった。私たちは自分自身の、そしてお互いの編集者になった」「記者とブロガーの違いぐらいみんなわかってる、よね? いや、もう一度考えてみよう」「ジャーナリズム・ルネッサンスの青空が見える...でもその前に、苦痛のキャズムを越えなければ」

著者はメディアアナリストのケン・ドクターさん。全米2位の新聞グループだった今はなきナイトリッダーに20年以上在籍し、ウェブ部門ナイトリッダー・デジタルの副社長などを務めたデジタル系の新聞人だ。

ナイトリッダーは70年代から電子新聞に取り組んだ、ジャーナリズムのデジタル化のフロントランナーでもあった。そんなネットとジャーナリズムの「現場」を知っているだけに、この人の分析にはかなり説得力がある。
そのドクターさんが、フィナンシャル・タイムズについて、こんな記事を書いていた。

「未来のニュース企業のニューソノミクス」

デジタル版「FT.com」の担当取締役、ロブ・グリムショーさんのインタビューをもとに、同社のメディア戦略を分析している。2018年、つまり5年後のニュース企業はどんな風になっているだろうか、と。

フィナンシャル・タイムズは業界に先駆けて「メーター制」を導入したことで知られている。全くのフリーでもなく、全面課金でもなく、登録をすれば今は月に8本まで無料で記事を読むことができるが、それ以上を読む場合は課金になるというシステムだ。ニューヨーク・タイムズもこの課金スタイルを取り入れている。

週5.19ポンド(747円)のスタンダード、名物コラムなどが読める週6.79ポンド(977円)のプレミアム、さらに紙の新聞とセットの週13.50ポンド(1943円)という料金体系になっている。紙だけなら週11ポンド(1583円)。

メディア企業のデジタル戦略で、フィナンシャル・タイムズが存在感を持つ理由の一つが、デジタルの購読数が紙の部数を越えている、名実共にデジタルファーストな点だろう。

ドクターさんの記事によると、今年2月時点で、紙の部数28万6000に対してデジタルの購読数は31万6000。しかも、このデジタル購読数のうち51%にあたる16万3780は法人ライセンス契約、つまりB2Bモデルなのだという。法人契約数は2011年から4割増の勢いだ。さらに、教育・研究機関を対象としたライセンス契約にも乗り出しているという。

デジタル購読の内訳を見ると、高い方のプレミアムの契約が全体の3分の1を占めている。経済紙としてのニュース・分析の専門性が評価されているのだろう。

トラフィックの3分の1はモバイル。前年の4分の1から順調に伸びている。フィナンシャル・タイムズは、いち早くモバイルのネイティブアプリ脱却を宣言し、ブラウザベースのウェブアプリに特化するなど、とにかく足さばきが早い。

それでは紙とデジタルのセット、週13.50ポンドの契約数はというと、3万。「(読者はいったんデジタルを手にすると)紙との間で行ったり来たりはしない。それは一方通行だ」とグリムショーさん。

アグリゲーションサービスのフリップボードとも提携する。フリップボードグリムショーさんはこう話す。「金を払っているのは読者――そして記事の読み方を決めるのも読者」「今や読者が王だ」

ドクターさんはこう解説する。「読者はコンテンツを、映画や音楽、テレビ、ニュースをどんな風に手に入れるかという仕掛けには全く興味がない。今、ここで、それが見たいだけだ」

そして最後の読者、つまり登録のみの無料読者(私もそうだ)は480万。フィナンシャル・タイムズは、この読者層を、購読者予備軍としてターゲットしていく「ファネルの中間層」と位置づけている。

同紙が力を入れるのが、データだ。30人ものデータチームを抱え、分析、商品開発、テクノロジーの3部隊に分かれて、読者動向の把握、キャンペーンの展開、広告料金と収入における「収益最適化(レバニューオプティマイゼーション)」にデータを生かしているのだという。

さらにこのデータ活用は、デジタルだけでなく、紙の分析チームとも統合して、一体的に展開しているようだ。

ネット企業の説明を聞いているような、デジタルへの振り切りと、データ主導のこの展開ぶり。アマゾンのモデルからも多くを学んでいるという。なるほど未来の手がかりはここにあるのかも知れない。

ドクターさんは、オズの魔法使いのセリフを引いて、こうつぶやく。「ご同輩、私たちはもう、古き良きニュース企業にはいないんだ(Folks, we’re not in news-company Kansas anymore.)」

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『朝日新聞記者のネット情報活用術』

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