電話、入退出記録、電子メール・・・「スパイ共謀者」としてのジャーナリスト

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05/26/2013 by kaztaira

ネット傍受の強化が、セキュリティを危険にさらす」で紹介した米司法省によるジャーナリストに対する情報漏洩捜査の問題は、先週、さらに新局面を迎えていた。

当初明らかになっていたのは、アルカイダのテロ計画報道を巡り、AP通信の20を超す電話回線の発信記録を、司法省が事前通告なしに押収していた、という問題だった。

Exif_JPEG_PICTURE新たな問題は、20日のワシントン・ポストの報道で明らかになった。

A rare peek into a Justice Department leak probe (The Washington Post)

司法省による漏洩捜査の対象は、フォックス・ニュースのワシントン支局長、ジェームズ・ローゼンさん。明らかになった捜査内容は、電話の通信記録押収より、さらに徹底している。

個人用のGメールのアカウントまで捜索令状の対象にされ、役所の入退出記録、さらに通話のタイミングまで追跡されていたという。

ワシントン・ポストが入手したのは、そのGメールの捜索令状請求に添付された、FBI特別捜査官による宣誓供述書。ここにローゼンさんに対する捜査の内容がかなりリアルに記載されている。しかも、ローゼンさんの扱いはスパイ容疑の「共謀者」だ。

事の発端は2009年にさかのぼる。

ローゼンさんによる、6月11日付のこの記事だ。

NK’s Post UN Sanctions Plans, Revealed (FOX news)

国連安保理による制裁決議を受けて、北朝鮮が新たな核実験を計画している、との内容で、米情報筋の見解として伝えている。

宣誓供述書によると、基になった情報は「機密(TS/SCI)」に区分されていた。そして、この情報が関係者限定のレポートとして流されたのが、11日の朝だ。

そして情報の流出元とされたのが、このレポートにアクセスできた国務省の検証遵法実施局(VCI)所属でローレンス・リバモア研究所に派遣されていたスティーブン・キムさんだ。キムさんは、国防上の秘密情報を漏洩したとして、スパイ防止法違反の罪で起訴されている。

そしてこのレポートが関係者限定でアクセス可能になった11日朝から、フォックスニュースの記事がネットで配信されるまでの数時間に情報漏洩があったとして、供述書はキムさんと「記者」の接触について、極めて具体的な描写をしている(捜索令状にはGメールアカウントは特定されているが、ジェームズ・ローゼンさんの名前は出てこないし、供述書では「記者」としか表記されていない)。

「このレポートは、記事の出た日の午前11時27分、11時37分、11時48分に、キム氏のアカウントでアクセスされている。国務省のセキュリティ(ID)カードのアクセス記録から、キム氏はこの時、レポートにアクセス可能なパソコンのあるVCIの自席にいたことになっている」

「キム氏のアカウントがTS/SCI情報レポートにアクセスしたのと同じ時刻、キム氏の卓上電話から記者の卓上電話に2度、電話がかけられている。具体的には、1度は午前11時37分ごろ(キム氏のアカウントが情報レポートを閲覧したのと同時刻)、国務省内のキム氏の卓上電話から記者の卓上電話に。電話は約20秒間。その直後もう1度、キム氏の卓上電話から記者の携帯電話に。この2度目の電話は約1分8秒間」

さらに、国務省のセキュリティ(ID)カードのアクセス記録から、キム氏と記者がこの電話の後、ほぼ同じ時間帯に25分間近く国務省のビルから外出しており、直接面会していたことが伺われる、としている。

「キム氏は12時2分ごろ国務省を出て、そのすぐ後、12時3分ごろに記者も外出している」

「キム氏は12時26分ごろ国務省に戻り、そのすぐ後、12時30分ごろに記者も戻っている」

「ほぼ同時刻の入退出の数時間後、当該記事がインターネットに配信されている。記事配信の後、もう1本の電話がキム氏の国務省の卓上電話から記者の国務省の卓上電話にかかっている。電話は約22秒間」

そしてキム氏に対する捜索によって、キム氏のヤフーメールのアカウントと「記者」のGメールのアカウントの間のやりとりも追跡されていき、そのメールの文面そのものも供述書には引用されている。メールではキム氏は”レオ”、「記者」は”アレックス”の名前を使っている。

さらに、暗号のようなものも使われている。

「*(アスタリスク)一つはコンタクトする、もしくは事前打ち合わせのコンタクトの予定は、そのまま進めることで同意、との意味。*二つはその反対の意味」

「ありがとうレオ。私の関心は、あなたもおわかりだろうが、ライバルに先駆けて特ダネをものにすることだ。私は[北朝鮮<※>]に対する米国の新たな戦略や政策の変更、同国内の動向、情報筋が把握した情報などを、正確に、他社に先駆けて報道したいと思っている(中略)そのための唯一の方法は、政策を、[北朝鮮]の思惑を公表することであり、それを正確に行うための唯一の方法は、証拠を手にすることだ」(※供述書の中の引用では「外国」という言葉に置き換えられている)

そして、供述書はこう述べる。

「これらのことから、記者は(キム氏とともに)キム氏の共同正犯、もしくは幇助犯、教唆犯としてスパイ防止法に違反したと信じるに足る相当の理由が存在する」

「記者」すなわちローゼンさんの、情報提供を求めるメールの文面は、特ダネを追う記者なら、だれもが取材先と交わしている典型的なやりとりだ。これが「犯罪」とされるのなら、取材は成り立たない。

AP通信の通話記録の押収あわせ、立て続いて明らかになったメディアに対する捜査手法は、当事者となったメディア企業(AP通信社長のゲイリー・プルーイットさんやフォックスニュースCEOのロジャー・アイルズさん)はもちろん、メディア全体の問題(長く編集主幹を務めたワシントン・ポスト副社長のレナード・ダウニーさん)と捉えられている。

AP president blasts “unconstitutional” phone records probe (CBS news)

AP letter to Eric Holder on seizure of phone records (USA TODAY)

Fox News CEO Roger Ailes blasts administration, praises his team (Los Angels Times)

Leonard Downie: Obama’s war on leaks undermines investigative journalism (Washington Post)

司法省は、ジャーナリストを訴追する予定はない、としているようだ。オバマ大統領も23日の対テロ戦略演説の中で、この問題に触れている。

「司法省による、国家安全保障に関する情報漏洩捜査の問題は、安全保障と開かれた社会の間の適切なバランスを取ることの難しさを改めて示している。最高司令官として、我々の作戦や現場の要員を保護するために、情報の秘密は保持する必要があると信じている。そのためには、法令に違反し、機密情報を保持する責務に背いた人物には、結果責任を負わせる必要がある。一方で報道の自由は我々の民主主義に欠かせない。それが我々の社会だ。情報漏洩捜査によって、政府に説明責任を果たさせる調査報道を、萎縮させるかもしれないとすると、それは残念なことだ。

ジャーナリストが職務を遂行することで法的な危険にさらされるのは、あってはならないことだ。我々の狙いは、あくまで法令違反者に限定されるべきだ。このため、我々は議会に対して、政府の越権行為への対抗手段となるメディア・シールド法(情報源秘匿法)の成立を求めている。また、司法長官も問題意識を共有しており、この件の検討を求めている。司法長官は、記者に関わる捜査についての司法省のガイドラインの見直し作業に入ることになっており、その一環としてメディア企業を召集し、聞き取り調査を行うことにしている。その結果については、7月12日までに報告するよう司法長官に指示している」

Remarks by the President at the National Defense University (Whitehouse)

司法省のガイドライン (GPO)

しばらく目が離せない。

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朝日新聞記者のネット情報活用術

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