ネット解禁でも選挙は大して変わらなそう

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06/02/2013 by kaztaira

土曜日、人影まばらな永田町で、情報ネットワーク法学会と日本インターネットプロバイダー協会の特別講演会「インターネット選挙運動解禁で選挙はどう変わる」を見てきた。

07278e6ecb2011e292c922000a1fb771_7かなり濃い講演会だったが、どうも、ネガティブキャンペーンなどの削除要請が持ち込まれるプロバイダーや、新しいタイプの選挙違反を摘発する捜査など、実務の現場はすごく面倒なことになりそうだが、それには割に合わない感じで当面、選挙そのものはそう変わらなそうな印象を受けた。

基調講演に立った岡村久道弁護士は「ネット選挙運動の解禁に至る経緯――約17年間に及ぶ遠く長い道程」と、1996年の新党さきがけによる自治省選挙課への「回答願」までさかのぼってこの間の動きを振り返った。

その頃、私もこんな記事を書いている。1996年10月1日付けの朝日新聞朝刊第3社会面だ。

インターネットにホームページ開設、公選法に抵触…具体例はなに?

インターネットをどう利用すると、公職選挙法に触れるのか――。パソコンの普及で「電脳メディア」の導入が進む政党や政治家に困惑の波が広がっている。自治省は「パソコン画面の情報は、公選法で規制を受ける文書図画にあたる」というが、具体的には「ケース・バイ・ケース」としかいわない。八日には総選挙も公示されるし、これでは集票の現場がやりにくい。インターネットの問題にはインターネットで、とばかりに「双方向性」を生かして質問例を集め、自治省にぶつける政党まである。

「インターネットを通じて演説会を中継できるか」
「ホームページで所属議員の写真を使うことは、選挙運動となるか」
「ポスターや政見放送で、ホームページのアドレスを記載していいか」
新党さきがけは近く、自治省を訪ね、質問集を届ける。発端は、他の政党に先駆けて昨年六月、開設したホームページの扱い。党の収支や政党助成金の使い道などをインターネットで公開し、総選挙の「候補者紹介」も載せてきた。日程が決まらないうちは気にならなかったが、解散で日程がはっきりしたことで急きょ、対応を迫られることになった。公選法に触れるのか、触れるとすればページをたたむのか……。
解散二日前だった二十五日、そのホームページに「お知らせ」を載せた。「インターネットと公職選挙法との関係について、自治省に質問を提出します」「その質問項目を募集します」という内容だ。提出予定の「質問書」の書式を掲示し、パソコンでこのホームページを読んだ人が自治省に質問したいことを電子メールで送れるようにしていた。
(後略)

それから17年後。政治家のネットの取り組みはどれほど進んだのだろうか。

岡村弁護士も指摘していたが、選挙運動でのネット利用とは、公示・告示日から投票日前日までの期間の、特定の候補者への投票、当選呼びかけという極めて限られた時間軸の話だ。参院選は17日間、衆院選は12日間。

参議院ならそれ以外の2000日を超す任期中、政治活動としてなら、フェイスブックでもツイッターでもユーチューブでもブログでも、ネットは自由に使えた。

公職選挙法は、政治活動は制限していないからだ。でも、使っていたか? 2000日使っていなかったネットを、17日間使うと選挙は変わるのだろうか? 急に日本の政治家も、海賊党や五つ星運動のようなネットドリブンなリキッド・デモクラシーに目ざめるのだろうか?

岡村弁護士が指摘するように、その手前の候補者側の「デジタルデバイド」による混乱なら、確かに想定されるかもしれない。

総務省選挙課、鈴木康之補佐の「改正公職選挙法の解説」も、味わい深かった。特に、SMTP方式及びSMS、つまりメールとショートメールを「電子メール」という区分けで送受信を細かく規制する一方、フェイスブックなどメッセージ機能を持つその他ウェブサービスは「インターネット等を利用する方法」として格段に規制内容が緩いという点も、不思議な味わい。

「メールとウェブの区別は、建て付けが古い。若い人たちはもうメールを使わない」という岡村弁護士の指摘もあった。

個人的にはさらに興味深かったのが、選挙違反の類型の部分だ。説明資料には「一般論としては、業者が主体的・裁量的に選挙運動の企画立案を行う場合には、当該業者は選挙運動の主体であると解されることから、当該業者への報酬の支払いは買収となるおそれが高いと考えられます」との一文があった。

これはしかし、広告キャンペーンとしては珍しくもない、ソーシャルメディアの「バズ」のパッケージを用意する業者が、「ご提案」としてそのモデルをそのまま選挙事務所に持ち込み、「主体的・裁量的に選挙運動の企画立案を行った」と認定されれば選挙違反になる可能性があるわけで、新しい類型として、目が離せない。

無防備にパッケージで受注しないまでも、包括的な請負のオプションとして、ソーシャル戦略を担当できるノウハウを持った「ボランティア」の「紹介」も盛り込まれている場合はどうだろう。実態としてはその「ボランティア」は有給で「主体的・裁量的に選挙運動の企画立案」を行っていたと認定されれば...とか、頭の体操をしていくと、いろいろ想像は膨らむ。

法政大の藤代裕之准教授の指摘も、考えるヒントになった。

選挙にかかわる情報発信者が増大する一方、断片的な情報が拡散。レピュテーションの低下という事実のみが残る事態も起き始めている中で、情報発信者の責任はどうなるのか、と。

情報発信の責任、信頼性、規範、評価といった問題点は今に始まった話ではないが、時間軸の限られた選挙期間という場面では、それなりの実害も織り込まざるをえないだろう。

情報セキュリティ大学院大学の湯淺墾道教授も、ネット選挙は、獲得票数、票差が少ない地方選で、より影響ができるではないか、との指摘をしていた。

おもしろかったのは韓国中央選管選挙研修院の高選圭教授の講演。選管や候補者のサイトにまるごとサイバー攻撃がかけられ、投票行動自体に影響が出るなど、ネット選挙に約10年の実績がある韓国の事例は、エキサイティングだ。

「選挙のたびに登場するニューメディアをいかにうまく使うかの勝負」(高教授)になっていきているなどすごく興味深い。

興味深いが、現場は大変そうだ。

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