グーグルからみる「つながる新世界」の風景

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06/30/2013 by kaztaira

市川裕康さんも現代ビジネスの「デジタル・キュレーション」(「グーグル会長らによる新著『The New Digital Age』はデジタル時代の未来予測ロードマップ」)で取り上げておられるグーグル会長のエリック・シュミットさんとグーグルアイディアのディレクター、ジャレッド・コーエンさんの共著『ニューデジタルエイジ』が思いのほか面白かった。

Exif_JPEG_PICTUREITUのデータによると、世界のネット人口は24億。多くは専制国家や貧困下にある残る約50億人も、ネットでつながるようになったとき、「つながる世界」とはどんな風景なのか。「個人」「社会とメディア」「国家」「革命」「テロ」「紛争と介入」「復興」という多様なレイヤーでその見立てを披露していく。

もとになっているのは2010年の雑誌「フォーリン・アフェアーズ」に共同執筆した論文「インターネットと相互接続権力の台頭」。基本的な論点はそう変わっていないが、その後、「アラブの春」など「つながる世界」の変化がより具体化したことを踏まえた議論になっている。

もちろん、グーグル的な世界観が根底にある。例えばこんな記述。

「グーグル、フェイスブック、アマゾンそしてアップルなど、現代のテクノロジープラットホームは、大半の人々が考えているよりはるかに強力で、私たちの未来は、社会がそれらのプラットホームをどううまく取り込んでいくかによって大きく左右される。私たちはそう信じている」

「テロ撲滅には二つの方法がある。一つは法の支配、そして人々にチャンスを与えることだ」というアフガン米駐留軍司令官だった(失言で更迭)スタンレー・マクリスタルさんの見解を紹介。ネットのテクノロジーは、人々にとっての大きなチャンスを与える、とも述べている。

サイバー攻撃を受けた中国政府批判も容赦ない。プライバシーをめぐる批判も多々あるグーグル自身を総括しているわけでもない。

「もしグーグルが政府による訴追に直面するからといってすべての製品開発をやめるようなら、金輪際何もつくれなくなってしまう」

以前に「『ネット妄想』:欠けている視点」で紹介したエフゲニー・モロゾフさんが「サイバーユートピア主義者」と呼ぶ、その象徴的な人物がこの2人だ。

「サイバーユートピア主義者は、新たな改良型の国連をつくりあげようと野心を抱くが、できるのはせいぜいデジタル版シルク・ド・ソレイユといったものだろう」というその中心がシュミットさんらグーグル。そして「(2009年6月12日のイラン大統領選後の反大統領派の)デモの動きを広く伝え、推進したツイッターの役割を多くの人たちが称賛するが、6月25日のマイケル・ジャクソン死去は、あっという間にツイッターの人気トピックの座を奪っていった」。そのツイッターのメンテナンスを遅らせるよう国務省から連絡をしたのがコーエンさん。

それらを割り引いても、面白い。

グーグルという超国家企業を運営するシュミットさんも元国務省スタッフのコーエンさんもは、まず他の人間には書けないグローバルな「現場」を持っている。その現場感をベースにした見立てのいくつかは、なるほど説得力もあるのだ。

インタビューに登場する人々の発言も面白い。

例えば米元国務長官のヘンリー・キッシンジャーさんに聞く、ネット時代の革命。「フェイスブックの世界に、ドゴールやチャーチルのような人物が登場するとは考えにくいな」「(ネットによって)力を手にした市民は、人々を広場に集めるテクニックはあるが、集まった人々と広場で何をすればいいのかがわからない。まして、勝利を手にした時に何をすればいいのかも」

あるいはウィキリークスのジュリアン・アサンジュさんのこんなコメント。「非力な組織が秘密主義になるのは十分な理由がある。私に言わせれば、それは筋の通った話だ。彼らには秘密主義が必要なんだ。だって、力が無いんだから」「では強力な組織が秘密主義になるのは?」公になれば反対にあうことがわかりきっている案件だ、とアサンジュさん。

「サイバーユートピア主義」との批判に対して、バランスをとろうともしている。

「(ネットで)記録された過去は、多くの職場や日常生活で人々に影響を与えることになるだろう。いつの日か、ネットにどんな過去が取り上げられるのかと、不安を抱えながら生涯を過ごす人たちも出てくるだろう」

「間違いなく、データ革命によって人々の暮らしへのアクセスが増大すれば、それは抑圧的な専制国家が、市民を標的にするのにも役立つ、危険状況をもたらすことにもなる」

「つながることだけで破綻国家が復興できるわけではないが、市民の状況を劇的に改善することはできる」

「メディアへの知識は未来の超国家テロリストにとって最も重要な資質になるだろう」

そのテロリストが駆使するツールには、グーグルも含まれている。

ネットの分断(バルカン化)やサイバー戦争(冷戦[コールドウォー]ならぬコード戦争[コードウォー])、ビッグデータと政府の諜報活動(もちろんプリズム問題は出てこない)など、宗教、民族間のネットと現実の紛争の激化など、幅広い論点をひととおりカバーしている。

改めて、頭の中を整理するのにも役立つ。

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