ジャーナリズムのインパクトを計測する

コメントする

07/28/2013 by kaztaira

「データジャーナリズムで報道局をハックする」でも取り上げたが、ジャーナリズムをデータで解析するという取り組みには、切実な需要があるようだ。

7月10日付でこんな報告書が公開されていた。「インパクトを計測する: NPOのニュース評価の技法、科学、そしてナゾ(Measuring Impact: The art, science and mystery of nonprofit news assessment)」

Exif_JPEG_PICTURE

筆者はアメリカン大学コミュニケーション・センター調査報道ワークショップのチャールズ・ルイス教授とヒラリー・ナイルズさん。ルイスさんといえばセンター・フォー・パブリック・インテグリティ(CPI)国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)など非営利組織(NPO)による調査報道の第一人者として知られる人だ。

報告書のテーマは、「非営利の報道機関にとって、〝インパクト〟とは何か、そしてどうすれば継続的な計測ができるか」だ。

NPOの報道機関は、運営費用を財団などからの助成金に頼ることになる。かつてはCPIなど数えるほどしかなかったNPO報道機関も、この数年で急増。ルイスさんが理事を務める調査報道ネットワーク(INN)の加盟団体数だけでも82にのぼるという。

一方で、同大コミュニケーション・センターのインタラクティブ・ジャーナリズム研究所(J-Lab)の調べによると、2005~2009年にNPO報道機関に助成金を交付したのは180財団で計1億4500万ドル(約142億円)。財団側としては、財源には限りがあるから交付先を選別せざるを得ず、さらに助成金を交付したことによる成果をできるだけ正確に評価したい。

そこで報道機関が公開した記事の本数や番組数という〝成果物〟のデータだけではなく、それらが社会に及ぼした影響、すなわち〝インパクト〟のデータが求められるようになってきている、というのだ。

公開した記事やビデオの数を数えるだけでなく、それらがコミュニティの中でどんな反響を呼び起こしたかも調べよう。他の報道機関やニュースレターがあなたの署名記事を取り上げたか、あるいはあなたの特ダネを追いかけたか。それらを控えておこう。議員や政策担当者は、あなたの記事が明らかにした新事実に基づいて、制度の改革を提案したか。そういった経過をたどっておこう。ここで述べたような常識的な取り組みも、結局は報道の一部であり、手順の一つなのだ。

報告書は、ウィスコンシン調査報道センター(WCIJ)のパブリック・エンゲージメント・エディター、ローレン・ハスラーさんが取り組む〝インパクト〟測定の事例を紹介する。WCIJは、ルイスさんが設立に関わり、理事も務めている。

wisconsinハスラーさんの資料(Tracking your impact)によると、測定データは助成金を受け取る財団への報告、新規の助成金を得るためのプロモーション、読者への説明、そして編集判断のための材料、などの役割を担っている。

測定には毎月8時間程度をかけるという。外部サービスは料金が高い上に不正確で、結局、自前の測定になったという。

測定は、WCIJに関連する検索語をグーグルアラートに設定しておいて、ヒットしたらメールで受け取ったり、複数の検索エンジンで、筆者名な記事に関連するキーワードで検索をかけたり、という手作業が中心だ。

測定の項目は他のメディアやブログで取り上げられた件数など。記事を取り上げたメディア名、取り上げ方(メインの記事か、コラムや社説か)、扱い(写真、グラフ、関連記事の有無)、メディアのタイプ(活字、ウェブ、ラジオ、テレビ)。

それらをエクセルなどのスプレッドシートにまとめ、さらにグーグルマップ上で、地域的な波及具合を表示してみせる。

グーグルアナリティクスでホームページの解析も行い、フェイスブックページの「インサイト」のデータも活用する、という。

これまで新聞ならば発行部数や閲読率などの従来からのデータに加え、ホームページのページビューや、ユニークユーザー数などのデータがあった。これらはあくまで到達度〝リーチ〟の定量化だったと報告書は言う。

新たに求められているのは、報道機関とユーザーの双方向の情報流通〝エンゲージメント〟、さらにジャーナリズムが社会にどのような影響を与えたかという〝インパクト〟の数値化だ。

〝エンゲージメント〟の材料としてはツイッターのフォロワー数やリツイート数、フェイスブックページのフォロワー数や「いいね!」の数などもあるが、データの評価法が確立されているわけではない。

社会に〝インパクト〟を与える報道には、「質」が欠かせないが、「報道の質」はどう数値化すればいいのか。その〝インパクト〟の追跡と数値化の手法の確立もまだこれからだ。

メディアとしての分類の問題もある。「みんながメディア、ではジャーナリストはだれ?」でも取り上げた、ジャーナリズムの定義の問題だ。

助成金を申請するNPOは、報道機関ばかりではない。各種の権利擁護(アドボカシー)団体もある。そして、〝インパクト〟の評価では、ジャーナリズムとアドボカシーを区別する必要も出てくる、と報告書は指摘する。

ニーマン・ジャーナリズム・ラボによる、ルイスさんのインタビュー記事(Journalists and their funders: Whose job is it to measure impact, and how should it be done?)が掲載されいてる。この中でもルイスさんはこう述べる。

ある慈善活動の分野に対して、実際に用いられている(評価)基準だからといって、それがそのままジャーナリズムに当てはまるとは考えられないだろう。

紙の新聞が減り続け、いつしかデジタルだけになったとき、ネットの生態系の中で、ジャーナリズムの価値はどう評価すればいいのか。〝インパクト〟のデータは、報道のフィードバックループにどう組み込んでいけばいいのか。

これはNPO報道機関の話というより、メディアそのものが直面している課題だ。

———————————–

『朝日新聞記者のネット情報活用術』

電子書籍版がキンドルiブックストア楽天koboなどで配信中

cover3

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中

アーカイブ

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。