クレイグズリストは新聞を殺したのか

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09/17/2013 by kaztaira

ロイターが先月、こんな記事を配信していた。「クレイグズリストがローカル紙に与えたダメージに関する新たな研究 (New Research Looks at Craigslist’s Damaging Blow to Local Newspapers)」

Exif_JPEG_PICTUREクレイグズリストとは、サンフランシスコ在住のエンジニア、クレイグ・ニューマークさんが1995年に、当初は地元のイベントを紹介するメーリングリストして始めた、求人広告や売ります/買いますなどのクラシファイド広告(いわゆる3行広告)の超人気サイトだ。

トラフィック調査サイト「コンピート」を見ると、1日当たりのユニークユーザー数は7500万超、サイトラインキングでは13位。2900万程度のCNN(42位)、1550万程度のニューヨーク・タイムズ(99位)などのメディアサイトは足元にも及ばない。

今や日本を含む70カ国、700都市以上で展開している。ほどんどの広告は無料のため、「新聞キラー」との批判が根強くある。

ロイターの記事が紹介しているのは、ニューヨーク大学スターンン・ビジネススクール助教のロバート・シーマンズさんとハーバード大学ビジネススクールのフェン・ジューさんの共同研究「多面的市場の参入への対応: クレイグズリストによるローカル紙へのインパクト (Responses to Entry in Multi-Sided Markets: The Impact of Craigslist on Local Newspapers)」だ。

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2000年代にクレイグズリストが参入した市場約300を対象に、参入がその市場のローカル紙に与えた影響を研究したという。研究の狙いは、ローカル紙のクラシファイド広告にどんな影響が出るか、さらにそれは、それ以外の戦略にもどのような影響を与えるか、という点だ。

中でもインパクトがあったのは、クレイグズリストの参入の影響により、2007年時点を見ると、2000年と比べたクラシファイド広告費が50億ドル(約4900億円)減少した、との推計だ。その他のポイントは次の通り:
・クラシファイド広告料金が20.7%下落
・新聞購読料が3.3%上昇
・新聞購読数が4.4%下落
・競合紙との新聞記事の差別化が16.5%増加
・ディスプレイ広告料金が3.1%下落
・記事コンテンツのネットへの配信の減少

クレイグズリストの参入で最も大きな影響を受けるのが、クラシファイド広告の値崩れというのはわかりやすい。新聞社はクラシファイドの減収分を補おうと購読料を値上げし、一方で購読部数は下がる。さらに紙面のクオリティで勝負に出ようと記事の差別化をはかり、コモデティ化を避けようとネット配信を絞り込む。

残念ではあるが、まあ気持ちは分からなくもないという結果だ。

さて、クレイグズリストが奪い去った、というクラシファイド広告50億ドルについて見てみよう。

米新聞協会が公開している新聞の広告収入を見てみると、2000年のクラシファイド広告収入が196億ドルに対して、2007年は142億ドル。54億ドルの減少となっている。その大半がクレイグズリストの影響だったという見立てになる。

では、クラシファイド広告などよりボリュームのある不動産広告なども含めた新聞の広告収入全体の中で見るとどうか。2000年の総額は487億ドルだが、これにはネット広告は含まれていない。ネット広告が含まれるようになった2003年が462億ドル。ところが、リーマンショックによる急落を経て、2012年は223億ドルにまでほぼ半減している

(※ピューリサーチセンターの報告書でもそのあたりをグラフ化している

これを見ると、クレイグズリストは新聞のクラシファイド広告にかなりの打撃を与えたが、それが新聞を殺した、とまでは言えない。報告書にもその点の断り書きがある。イーベイやグーグル・ニュースなどのサービスは地域を問わないため、その影響を特定することが難しい。だがクレイグズリスト場合、市場ごとに細分化、ローカル化されたサイトのため、その影響力が測定しやすかった、と。

この報告書を取り上げたフォーブズの記事も、見出しは50億ドルに焦点を当てているが、その中でもシーマンズさんは「クレイグズリストが新聞を殺したと言っているわけではない」と述べている。

Sorry, Craig: Study Finds Craigslist Took $5 Billion From Newspapers (Forbes)

人気サイト「ギガオム」のマシュー・イングラムさんも、この点を改めて取り上げている。インターネットそのものの影響、さらにグーグルなど他のプレイヤーの影響をきちんと見ろ、と。

No, Craigslist is not responsible for the death of newspapers (GigaOm)

クレイグ・ニューマークさんは、ポインター研究所とともに、デジタル時代のジャーナリズム倫理のガイドラインづくりプロジェクトを支援するなど、ジャーナリズムへの肩入れも見せる。

The Poynter Institute and Craig Newmark to Host Journalism Ethics Symposium (Poynter)

だが、これに対しては「偽善」との厳しい指摘もある。

Hypocrisy for Sale: Craigslist Founder Invests in Journalism Ethics Book (New Republic)

批判の声は以前からあり、2004年に私がニューマークさんにインタビューしたときにも、同趣旨のことを聞いている。その時のニューマークさんの回答はこうだった。「そんなことより、まず自社のカスタマー・サービスの質を上げる方が先じゃないだろうか。そして、利用者の信頼を得ることに心を砕くべきだと思う」

「人気サイト「クレイグズリスト」創設者、クレイグ・ニューマーク氏に聞く ()」

今聞いても、そうなのだろう。

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