「忘れたい写真」を使ってネットでゆすられる

コメントする

10/15/2013 by kaztaira

「忘れたい写真」を収集し公開する専門サイトが乱立する。しかも削除には金銭を要求する。その排除に動き出したのがグーグル、そしてマスターカードやペイパルといった決済機関だ。だが、その「排除」には不安の声もつきまとう。「それでいいのか」と。

●容疑者写真がデータベースになる

問題を報じたのはニューヨーク・タイムズの5日付けのこの記事だ。

「ネット上の容疑者写真で金をむしられる(Mugged by a Mug Shot Online:New York Times)」

mugshotImage1米国では警察署がネット上で公開している「容疑者写真」。これをスクレイピング(自動収集)し、「犯罪者データベース」として再公開する。子どもの野球チームの監督や、デートの相手に性犯罪などの犯歴はないか――そんな検索ができるサービスとして、容疑者写真サイトにはそれなりの需要もあるようだ。

ただ、それらのサイトによって、弊害も出ているという。

直ちに釈放されたり、結果的に不起訴になったようなケース、あるいは軽微な形式犯でも、顔写真(と個人情報)は自動的に容疑者写真サイトに登録され、就職などの際に、採用担当者が氏名の検索をかけると――「犯罪者」としてヒットしてしまう。就職活動には深刻なダメージを及ぼす。

運営は、善意によるものばかりでもなく、そこにはビジネスが成立している。「削除して欲しい」との要請に対しては、30ドルから400ドル、場合によってはそれ以上の「料金」が発生する、というのだ。しかもそれは1サイトあたり。複数のサイトに転載されていてば、サイトごとに削除要求をし、料金が発生する。

さらに複数サイトの写真削除をまとめて請け負う、と称する業者まで存在するようだ。「カモ」を求めてネットの「ゆすり」「たかり」が多重構造化している、ということだ。

同種のサイトは80以上にのぼり、これらのサイトに対する集団訴訟も起きているという。

これに対し、オレゴン、ジョージア、ユタの各州では規制法も成立しているようだ。

だが、ジャーナリストの法的支援NPO「報道の自由委員会(RCFP)」などは、公開されている公的記録への規制は、言論の自由を定めた修正憲法1条に抵触する、と批判の声を上げているという。フロリダの新聞社、タンパベイ・タイムズの「マグショッツ」のように、顔写真サイトを既存メディアが手がけている例もある。

プライバシーと言論の自由、ジャーナリズムが衝突する問題であり、一方で欧州委員会が提起する「忘れられる権利」にもつながるテーマだ。

そこで登場したのが、グーグルだ。

この記事を執筆したデビッド・シーガル記者は、この問題への対応について、グーグルにも取材をかけていた。当初の同社の回答は「検索結果の削除は極力行わないことにしている」との内容。だが、再度の回答では、10月3日にアルゴリズムの変更がある、とし、翌4日には、容疑者写真サイトが少なくとも検索結果のトップページには表示されなくなったという。

そして、マスターカードやペイパルも、それらのサイトへの送金の扱いを解除。アメリカン・エキスプレスやディスカバーも同様の措置をとり、ビザも事実関係を調査中だという。

ウェブ検索と決済。そのいずれの道も断たれてしまったのだ。

●グーグルとマスターカードの標的

それですべてが解決した――とは思えない、と指摘するのは人気ブログ「ギガオム」のライター、マシュー・イングラムさんだ。私たちが何を目にして何を目にしないかを、どれほどグーグルに頼っているか、ということではないのかと。

First they came for the mugshot websites, but I said nothing…(GIGAOM)

「グーグルやマスターカードが他のサイトを標的にしようと決めたら、一体何がおこるだろうか? 例えばウィキリークスを遮断しようとしたなら――マスターカードが2010年にやったように」

一方で、たとえばマイクロソフト創業者、ビル・ゲイツさんがニューメキシコ州アルバカーキでの交通違反事件で撮影されたという1977年の有名な容疑者写真は、いまだにネットで公開されている。

ネットに公開された情報は、容易には消えない。そして、イングラムさんも「忘れられる権利」をめぐる問題を指摘する。

●「復讐の写真」を禁止する

「忘れたい写真」をめぐっては、10月1日にも関連する動きがあった。

元交際相手や元配偶者が、プライベート写真をいやがらせのためにネットに公開する、「リベンジポルノ(復讐のポルノ)」と呼ばれる行為を禁止する法律がカリフォルニア州で成立し、1日から施行されたのだ。

Jerry Brown Signs Anti-Revenge Porn Bill (Associated Press)

「リベンジポルノ」には投稿専用サイトがあり、削除には料金を要求する。容疑者写真サイトと同様、悪質なネットの「ゆすり」「たかり」だ。

この州法では、精神的なダメージを与える目的で、許可なく他人のヌード写真を投稿した場合には、6カ月以下の禁錮、1000ドル以下の罰金が科せられる。

ただ、この州法にも言論の自由を規制するとして、アメリカ自由人権協会(ACLU)は反対を表明していたという。フロリダ州議会は今年、やはり言論の自由に対する懸念から、同趣旨の法案を否決しているという。

州法の成立を受けて、反リベンジポルノ運動「エンド・リベンジポルノ」「サイバー公民権イニシアチブ」を推進し、自身も被害者であるホリー・ジェイコブズさんが、ガーディアンに寄稿している。

Victims of revenge porn deserve real protection (Guardian)

州法の成立は歓迎するが、ほろ苦い勝利だ、とジェイコブズさんは言う。州法では撮影者本人が投稿する場合を処罰化している。だが、被写体が自分で撮影して渡した写真を、元交際相手や元配偶者が投稿するケースは含まれない。そして、ジェイコブズさんの被害は後者のケースだったと。

だが、反リベンジポルノ運動は続けていく、と。

これもまた、「忘れられる権利」につながる。

あれもこれも、横着せずに現実解を探すことになる、ネットのリアリティだ。

———————————–

『朝日新聞記者のネット情報活用術』

電子書籍版がキンドルiブックストア楽天koboなどで配信中

cover3

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中

アーカイブ

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。