ウェブニュースは毎日がエイプリルフールか

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12/15/2013 by kaztaira

それがページビューを呼ぶ「ネタ」なら、内容の真偽よりもスピードが大事、なのか。ユーザーもそんなことは織り込み済みで楽しんでいるから、それでいい、のか。

そんな事例がこのところネットで相次いだ。

amazon_santa

アマゾンの長々としたURLを、クレヨンでたどたどしく手書きしたサンタへの手紙。リアリティショーのプロデューサーによる、飛行機で乗り合わせた女性との壮絶なバトルの連続ツイート。困窮女性に集まった60万ドルの募金――ネットニュースを通じて拡散されたそのいずれもが、「ネタ」だった、と。

If a Story Is Viral, Truth May Be Taking a Beating (New York Times)

2013: The Web’s year of the hoax (CNN)

それでいい、のか?

●アマゾンのURLつきサンタへの手紙

「サンタへの手紙」は、国内でも結構出回ったネタだ。フェスブックやツイッターで見かけた人も多いだろう。「今時の子どもは・・・」というコメントつきで。

そもそもこれは、ライターでコメディアンのザック・ポイトラスさんが、2011年の12月に創作した「ネタ」だった。

Dear Santa (Zack Poitras)

その画像を、ドイツ・ボン在住という@Gequeomanのアカウントが、今年11月29日にツィートしたところ、9000回を超すリツートという大反響に。

12月1日にはハフィントンポストが取り上げ、翌日にはヤフーニュースなども追随する(いずれも事態が判明したあと、更新情報として経緯を追記している)。

‘Dear Santa’ Letter With Full Amazon Link Is So 2013 It Hurts (Huffington Post)

Strangest Santa letter ever is simply a link to Amazon, of course (Yahoo News)

そして、4日ごろから、これが作り話だったという記事が出始める。

Kid’s Santa Letter With the Amazon Link Was a Hoax (Mashable)

そもそもの〝原作者〟であるポイトラスさんは、ハフィントンポストに掲載されている記事で騒ぎに気づき、@Gequeoman に連絡をとったところ、ソーシャルブックマークサイト「レディット」に画像があがっていたのでツイートした、との説明だったという。

ポイトラスさん自身は、笑ってもらうネタとしてこの画像を公開しただけで、誰かをかつぐつもりでやったのではない、と釈明しているようだ。

そして、当初この話を報じたニュースサイトについては、こうもいっている。

「どこも私に連絡してはこなかった」

●リアリティショーの「リアリティ」

人気のリアリティショー「バッチェラー」のプロデューサー、エラン・ゲールさんの連続ツイートがあったのは、感謝祭の11月28日。

dian

飛行機の遅れに苛立つ「ダイアン」という同乗客と、それをからかうゲールさんとの、メモのやりとりを通じたバトルの模様を、メモの写真付きでツイートし続けた。

最後には「ダイアン」ビンタを受け、「全部ツイートしたよ」というゲールさんからの捨て台詞のツイートで終わる。

バズフィードなどの口コミニュースサイトは、早速その日のうちにこの連続ツイートをまとめて報じている。

This Epic Note-Passing War On A Delayed Flight Won Thanksgiving (Buzz Feed)

さらに「ダイアン」のいとこが、「ダイアン」はガンで死の淵にある、との後日談もネットで明らかにしたという。

Elan Gale’s inglorious Twitter hoax (Los Angeles Times)

そして、ゲールさんは「ダイアン」が創作であり、実在しない人物であることを種明かしし、週明けの12月2日ごろにはバズフィードなどがそれを報じる。

The Truth Behind That Epic Note-Passing War On A Thanksgiving Flight (Buzz Feed)

当初、3万5000人程度だったゲールさんのツイッターフォロワー数は、この騒ぎをきっかけに、17万人以上に急増している。

ニューヨーク・タイムズが紹介しているゲールさんの言い分はこうだ――だれもこの話が本当か、と確かめなかったことこそ問題なんじゃないか。

「私は自分が何をしてるかがわかってるフォロワーに向けて中継していたんだ。それを報じたメディアこそが、彼らの聴衆をだました当事者だ」

●60万ドルのクラウドファンディング

自らの貧困体験をエッセイに綴り、クラウドファンディングで60万ドルを超す寄付を集めたリンダ・ワルサー・ティラードさんのケースは、やや複雑のようだ。

poverty

話の発端になったエッセーを公開したのは10月半ば。

Why I Make Terrible Decisions, or, poverty thoughts (Linda Walther Tirado)

反響は大きく、援助の申し出を受けるためにクラウドファンディングサイト「ゴーファンドミー」にページを立ち上げたところ、62万ドル近い資金が集まった

ところが11月末、ヒューストン・プレスが、ティラードさんはフリーライターで政治コンサルタントの仕事もあり、自宅もあり、夫は海兵隊員。貧困などではない、と報じたのだ。

That Viral “Poverty Thoughts” Essay Is Totally Ridiculous (Houston Press)

ただ、これに対しては、誤解された部分はあるものの、ティラードさんの件は作り話ではない、との報道もある。

Linda Tirado Is Not a Hoax (The Nation)

●365日がエイプリルフール

ニューヨーク・タイムズが引用しているハフィントン・ポストのワシントン支局長、ライアン・グリムさんの言葉が状況を端的に表現している。

「情報の代謝の高速化によって、事実確認をする人々は不利な立場におかれている」「事実確認なしで、まずはニュースをアップする。最初にアップできれば、数百万のページビューを手にできる。あとでそれが間違いとわかっても、そのページビューは変わらない。それが問題なのだ。このインセンティブこそが諸悪の根源だ」

pzriddle

「私がエイプリルフールで好きなこと:1年のうちその1日は、ニュースが本当なのかな、と問いかける日だということ。365日が全部そうあるべきだ」

“What I like about April Fool’s Day: one day a year we’re asking whether news stories are true. It should be all 365.” (@pzriddle)

米国のビジネスアナリスト、プレンティス・リドルさんの、2008年の有名なツイートを思い出す。

※追記:日本でも類似の事案はあるようだ。

フィフィさんも釣られた! 「スフィンクスの冠雪」写真の撮影場所は日本の東武ワールドスクウェア (ガジェット通信)

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Twitter:@kaztaira

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