「言ったこと」が「言っていないこと」になり、そして炎上する

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12/31/2013 by kaztaira

米インキュベーター「Yコンビネーター」の共同創業者でプログラマー、そして『ハッカーと画家』などの著書がある人気エッセイスト、ポール・グレアムさんが、インタビュー記事の発言で炎上したようだ。

女性蔑視ととられる発言をした、と。

「私たちは、女性にハッカーの視点で世界を見させることも、フェイスブックを立ち上げさせることもできない。過去10年間、プログラムをしてきてないからだ」

そう、インタビューで語ったという。

●「私が言っていないこと」

グレアムさんが、自身のブログで経緯を説明している。タイトルは「私が言っていないこと

paul_graham

まずこの発言には前段のやりとりがあったという。

女性の起業家が極めて少ないという、という現状についての話から、「それは女性のハッカーが少ないからでは」とグレアムさん。

記者「ではYコンビネーターが、ハッカー的視点を育成すれば」、グレアムさん「3カ月程度のトレーニングでハッカーじゃない人間にハッカー的視点を持たせるのは無理だ。ハッカー的視点を持つにはハッカーになるしかないし、それには数年かかる」

そして、問題の発言。録音を書き起こしたトランスクリプトでは、以下のような発言だったという。

「問題は、これらの女性たちは23歳になるまで…例えばマーク・ザッカーバークのように10歳やそこらの年から、プログラミングやコンピューターをいじり始めたりしていないということだ。フェイスブックを始めるときには、彼はハッカーだったし、だからハッカーの視点で世界を見ている。それが、彼がフェイスブックを始めた理由だ。私たちは、そういったの女性たちにハッカーの視点で世界を見させることも、フェイスブックを立ち上げさせることもできない。過去10年間、プログラムをしてきてないからだ」

発言の文脈が、違うものに置き換わっている、とグレアムさんは指摘する。

・記事では、「私たち」が〝社会一般〟と読めるが、ここではYコンビネーターのことを指している。

・記事では「女性たちにハッカーの視点で…」と〝女性一般〟のように読めるが、発言は十代の頃からプログラミングをしていない「そういった」女性に、短期間でハッカーの視点を持たせることはできない、という文脈だ。記事では、その限定を示す「そういった(these)」が省略されていた。

●インタビューではないやりとり

しかも、この記者とのやりとりは、インタビューですらなかった、とグレアムさんは明かしている。そもそも、このやりとりは、記者が、グレアムさんのパートナーでありYコンビネーターの共同創設者でもあるジェシカ・リビングストンさんに関する記事を書くための、バックデータ集めとして交わした会話なのだという。

この記事を掲載したのは、元ウォールストリート・ジャーナル記者のジェシカ・レッシンさんが鳴り物入りで立ち上げた年間購読料400ドルの有料サイト「ジ・インフォメーション」。下記でその記事が読めるが、オリジナルのものではなく、アップデート版になっている。

YC’s Paul Graham: The Complete Interview (The Information)

そして、こんな注記がついている。

「この記事はアップデートされ、女性起業家についてのグレアム氏のコメントを追加している。グレアム氏は編集された記事が、発言の意味を変えた、と述べている。我々はそうは思わないが、透明性の観点から、追加の情報を提供した」

さっそく、業界界隈では反応が出てきている。

テッククランチの創業者、マイケル・アーリントンさんは、自身のブログで「報道における最悪の罪の一つ」と指摘している。

これは、ほんと、自戒を込めて。

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Twitter:@kaztaira

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