オープンデータと監視社会が同じ顔してやってくる

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01/05/2014 by kaztaira

オープンデータと監視社会は、同じ顔をしてやってくるようだ。

政府のデータをどんどんネットで公開していく、というイニシアチブの一方で、空前の厳しさとも指摘される情報漏洩の摘発と、徹底したネット情報監視の実態が次々と明らかになる。

出したいのか、隠したいのか。

●透明性を超えて

まずはオープンデータから。

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IT技術者らが行政のオープンデータ促進に取り組む米NPO「コード・フォー・アメリカ(CfA)」。このNPOが出している「ビヨンド・トランスペアレンシー」という本が、かなり読みやすくて、面白かった。

Beyond Transparency–Open Data and the Future of Civic Innovation

シカゴの初代チーフ・データ・オフィサー(CDO)を務めたブレット・ゴールドスタインさんと、コードフォー・アメリカのコンンテンツ・マネージャ、ローレン・ダイソンさんによる編著。

5部22章の構成で、行政側のオープンデータの実務、データをもとにしたアプリ開発などの活用事例、オープンデータのビジョン、データを行政そのものに生かす事例、そして展望、といった幅広い内容で、テンポよくまとめてある。

●オープンデータを定義する

そもそもオープンデータとは、どう定義されている言葉なのか。

ワールド・ワイド・ウェブの開発者、ティム・バーナーズリーさんが2006年に「リンクト・オープンデータ」として5段階で定義したものがある。

berners-lee・ウェブ上で利用可能(オープンデータとして、オープンなライセンスで ★)  

・コンピューターによる読み取り可能なデータ(画像イメージではない ★★)

・独自フォーマットではない(エクセルなどよりCSV ★★★)

・情報記述の仕様がワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム(W3C)の標準に準拠(★★★★)

・他のデータにリンクしている(★★★★★)

およそ出回っているオープンデータの定義は、特に最初の3項目がベースになっているようだ。

『インターネットは民主主義の敵か』で知られる憲法学者のキャス・サンスティーンさんが、オバマ政権の行政管理予算局長として2011年9月に公表した政府機関宛のメモ「スマート・ディスクロージャ」であげている、データ公開のポイントも同じ文脈にある。

「アクセスのしやすさ」「コンピュータ可読性」「標準化」「適時性(タイムリネス)」「市場適応性とイノベーション」「相互運用性(インタオペラビリティ)」「個人識別情報とプライバシー保護」

ウェブ上で公開され、再利用自由なライセンス、パソコンで読み取れるデータ、標準的なファイル形式、といったあたりが相場感だろう。

デジタルデータとして自由に再利用できれば、それを使ったアプリを作り、行政課題の解決につなげることもできるし、データジャーナリズムでの活用や、あるいはビジネスの立ち上げの可能性も出てくる。何より、行政の効率化、省力化にも生かせる。

オープンデータ、「ガバメント2.0」「プラットフォームとしての政府(GaaP)」などのキーワードで、この流れを後押ししてきたオライリー・メディアCEOのティム・オライリーさんが執筆した「ビヨンド・トランスペアレンシー」の22章が、オープンデータの成果と悪用への規制を含めた全体像を示している。

Open Data and Algorithmic Regulation (Tim O’Reilly)

oreilly

オープンデータのガイドブックとしては、オープン・ナレッジ・ファウンデーションが公開している「オープンデータ・ハンドブック」もある。

●偽装としての「オープン」

ネット懐疑派の1人、エフゲニー・モロゾフさんは、オープンデータにも疑問の目を向ける。

Open and Closed (New York Times/ Evgeny Morozov)

morozov

ニューヨーク・タイムズへの寄稿で、モロゾフさんは「オープン」が何を意味するのか、曖昧なままに使われている「カルト」だと指摘。「オープンウォッシング」という表現までつかって批判している。

ここでいう「オープンウォッシング」とは、「ホワイトウォッシング」(ごまかし・粉飾)からの造語で、「オープン偽装」といった意味だ。「オープン」を標榜しながら、実態が伴わない、という。

「〝オープンガバメント〟――かつては説明責任を議論する際に使われた用語だが――今ではほとんど、大量の政府の情報へのアクセスや操作、〝リミックス〟がいかに簡単かを表す言葉として使われている。ここで〝オープンネス〟とは、そのデータが説明責任を向上させたかどうかではなく、単にそのデータでどれだけ多くのアプリが――取るに足らないものであろうと――つくられたかを評価するだけのものだ」

さらに、モロゾフさんは、近著の1章をまるまる使って、この問題を取り上げている

To Save Everything, Click Here: The Folly of Technological Solutionism

●説明責任と北朝鮮

オープンデータへの懐疑論は、モロゾフさんも紹介する、ハーラン・ユさん(プリンストン大)とデビッド・ロビンソンさん(イェール大)という2人の研究者が論文にもまとめている。

The New Ambiguity of ‘Open Government’ (Harlan Yu, David G. Robinson)

この中で2人は、定義されているようなオープンデータを実現したとしても、それが政府の説明責任の向上には、なんの影響も及ぼさない可能性もある、として、こんな指摘もしている。

「例えば、北朝鮮の政治指導者が、プロパガンダの声明を電子的に公開しても、閉鎖的で説明責任を負わないことで知られる政治体制の下、それがオープンデータの定義を満たしながら、透明性や説明責任の促進には役に立たないということもあり得る」

だからこそ、政策としての「オープンガバメント」と、テクノロジーとしての「オープンデータ」は分けて考えるべきではないか、と提言している。

●透明性とオープンガバメント

2013年10月に、NPO「ジャーナリスト保護委員会(CPJ)」はオバマ政権による情報漏洩の取り締まりと情報監視の実態をまとめた特別報告書を公開した。

執筆を担当したのは、ワシントン・ポストの編集主幹、副社長を務めたレナード・ダウニーさんと、CPJのサラ・ラフスキーさんの2人だ。

The Obama Administration and the Press–Leak investigations and surveillance in post-9/11 America (Committee to Protect Journalists)

cpj

「2009年以降、6人の政府職員とエドワード・スノーデンを含む2人の外部嘱託が、報道機関に機密情報を漏洩したとして1917年スパイ防止法違反で刑事訴追されてきた――これに対して、歴代政権では同種の訴追は合わせて3人しかいない。そして、さらなる漏洩事案についての刑事捜査も継続中だ」

報告書はそう指摘する。

100人以上が働くAP通信のオフィスでの、20を超す電話回線の通話記録を極秘収集。公判の供述書の中で、フォックス・ニュースの記者を「共同正犯、もしくは幇助犯、教唆犯としてスパイ防止法に違反したと信じるに足る相当の理由が存在する」と認定したFBI。

そして、スノーデンさんが暴露したNSAの機密資料による、大規模な情報監視の実態

2008年大統領選ではブッシュ政権の秘密主義を批判し、政権発足とともに「オープンガバメント・イニシアチブ」を推進したオバマ政権。

opengov

ホワイトハウスのホームページに掲載されている「透明性とオープンガバメント」と題したオバマ大統領の覚書はこううたう。

「政府は透明でなければならない。透明性とは、説明責任を促進し、政府の行いについて市民に情報を提供することだ。連邦政府が保持する情報は国家資産だ。わが政権は法と政策に基づき、情報を迅速に、市民が見つけやすく使いやすい形で公開するための、適切な措置を取っていく」

だが、報道機関の取材に対して、ますます口を閉ざす政府関係者。萎縮効果(チリングエフェクト)の実態を、登場するジャーナリストたちが口々に証言する。

「私が担当した中では最も閉鎖的で支配欲の強い政権だ」とニューヨーク・タイムズのワシントン支局長、デビッド・サンガーさん。

CBSのワシントン支局長、ボブ・シーファーさんはこういう。「私が担当した中で、最も操作にたけて閉鎖的な政権は、と聞かれれば、答えはいつも〝現政権〟だ」

「あらゆる政権は、前政権から学ぶ。そしてより秘密主義になり、情報を締め付ける。現政権はジョージ・W・ブッシュ政権以上の統制を行い、ブッシュはその前の政権以上の統制を行ったということだ」

●オープンデータの優等生

米国がオープンデータの優等生であることは間違いない。

ティム・バーバーズリーさんのワールド・ワイド・ウェブ財団(W3F)が2012年9月に公表したオープンデータのランキングでは、米国は対象61カ国中で1位だ。

Introducing the Open Data Index (World Wide Web Foundation)

w3f

オープンナレッジ財団(OKF)が2013年10月末に公表したランキングでは米国は対象70カ国中で2位。1位は、やはり情報監視で知られる英国だ。

The Open Data Index assesses the state of open government data around the world. (Open Knowredge Foudation)

参考までに、日本の順位も見ておく。

W3Fのランキングでは19位、OKFでは27位。

情報統制の厳しい中国を見てみると、W3Fではオープンデータで日本を上回っていて18位、OKFでは日本をやや下回る34位だった。

まあ、そんなものなのだろう。

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Twitter:@kaztaira

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