「ルールは突然変わる」グーグル、アマゾン、フェイスブックの危険度

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05/26/2014 by kaztaira

オークションの「イーベイ」はグーグルでの順位を大幅に下げ、出版社の「アシェット」(※訂正あり)はアマゾンから〝締め上げ〟を受け、そしてフェイスブックがメディアに逆上する――。

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ネットで先週、そんな不可解な事例が相次いだ。

共通するのは、いずれもネットを席巻する巨大サービスの〝ルール〟にまつわるということだ。

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ネットサービスの〝ルール〟は、システム変更によって突然変わる。だが大抵は、そもそものルールも、それがどう変わったのかもわからぬまま、どこかで誰かが思いもよらぬダメージを受ける。

そして、ネット社会のインフラと化した巨大サービスが、それを具体的に説明することはまずない。

グーグル、アマゾン、フェイスブック。ガリバーが支配する市場の危うさを、ブログニュースサイト「ギガオム」のマシュー・イングラムさんが、改めてまとめている。

巨人たちの悪行:グーグル、フェイスブック、アマゾンが独占とブラックボックス化したアルゴリズムの問題を思い知らせる

●パンダ4.0のインパクト

グーグルは今日からパンダ4.0のアップデートを公開中

グーグルのウェブスパム(迷惑)対策チームのリーダー、マット・カッツさんは20日、ツイッターでそう宣言した。

合わせて、〝ペイデイ(給料日)ローン〟と呼ばれる「際立ったスパムクエリー(検索語)対策」も実施した、という。

〝パンダ〟は、2011年2月に最初に公開されたアルゴリズム(検索結果表示プログラム)の改修のことだ。

この時の公式ブログでは、パンダについて、こう説明している。

このアップデートは、低品質サイト、つまりユーザーとって価値のないものだったり、他のサイトからコンテンツをコピーしていたり、全く役に立たないようなサイトを、検索結果のランキングから排除するたものだ。同時に、これはオリジナルコンテンツや研究、掘り下げた記事、示唆に富む分析といった高品質のサイトのランクキングを押し上げることにもなる。

その結果、最初のパンダでは、11.8%の検索結果のランキングが変更される、という影響が出たという。全体の1割強の順位が入れ替わるというのは、グーグル経由のアクセスに依存しているサイトにとっては、由々しき事態だ。

検索専門ニュースサイト「サーチエンジンランド」によると、今回の影響は英語圏で最大7.5%に及ぶといい、最初のパンダに次ぐ規模になったようだ。

●イーベイの急落

SEO(検索エンジン最適化)ツールや分析を手がける「サーチメトリクス」は、パンダによる影響の「勝者と敗者」をまとめている。

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サーチメトリクスのランキング指標(SEOビジビリティ)では、Q&Aサイト「アスクドットコム」が50%減、さらに、ニュースサイトの「グローバルポスト」が、なぜか75%減にまで落ち込んでいる。

グローバルポストは、18人の専従特派員、50人以上の契約ジャーナリストを抱えるニュースサイトなのに、だ。

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逆に、医療情報サイト「eメディスンヘルス」など500%増になっているサイトもある。

そして、ランキングが急落したサイトの一つがオークション大手の「イーベイ」だ。

上記の一覧表では33%減。さらに、パンダ公開前の18日と公開後の25日のデータを比べるとマイナス48%、つまり半減している

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SEOコンサルティングの「MOZ」の調査でも、3月以来、ランキングで6位を維持していたのに、パンダ公開前日に12位へと下げ、パンダ公開当日の20日には25位にまで落ちている

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●グーグルによるペナルティ

だがニュースベンチャー「リ/コード」は、これがパンダの影響ではなく、グーグルによる「マニュアルアクション(手作業)」、つまり意図的に下したペナルティーだったと、関係筋の情報として報じている。

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テックブログ「レフギークス」のケブ・カークさんは、イーベイのカテゴリーページの一部が、SEO対策専用につくられたもので不適切と見なされたのではないか、との見立てをしている。

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パンダ公開前からランキングを下げているところを見ると、あり得そうな話ではある。

だが、これがパンダの影響か、手作業のペナルティーか。そもそもパンダの変更がどんなものなのか。グーグルは説明しないので、どこまでも推測の域を出ない。

●老舗ブログの窮状

1999年創設の老舗コミュニティブログ「メタフィルター」を運営するマット・ホーヒーさんは、以前のパンダアップデートの影響とみられるトラフィックの減少が、一晩で4割減にも及びモデレーターを務めるスタッフ3人を、今月末をもってリストラせざるを得なくなった、と述べている。

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収入の9割をアドセンスに依存していたといい、トラフィックの減少は、収入に直接響いたようだ。

ただ、この件に関しては、ホーヒーさんとグーグルのマット・カッツさんの間で話し合いが行われている、とカッツさんがツイッターで明らかにしている。

●アマゾンの〝締め上げ〟

ニューヨーク・タイムズは23日付け(紙では24日朝刊1面)の記事「アマゾンと闘う出版社の本が消える」で、アマゾンが出版大手「アシェット」との手数料値上げ交渉の過程で、同社が発行予定の書籍の「予約ボタン」を無くしたり、配達を故意に遅らせるなどの〝締め上げ〟を行っている、と報じている。

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タイムズによれば、両社の交渉をめぐっては、すでにアシェットが8日に、アマゾンが同社の新刊の配達を3週間待ちにするなど、故意に遅らせている、との声明を明らかにしていた

だが、事態はさらに進み、「ハリー・ポッター」シリーズの著者、J・K・ローリングさんがペンネーム「ロバート・ガルブレイス」名義でアシェットから6月発行予定の新刊「シルクワーム」のページには、「利用不可」と書かれ、ハードカバーの予約ボタンが表示されていない。予約できるのは、48ドルのオーディオ版CDだけだ。

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アマゾンは2010年にも、出版社「マクミラン」の書籍に対して、同じような措置を取ったことがある、という。

また、ドイツの出版社「ボニエ」の書籍でも、アマゾンの配達の遅延が出ているという。タイムズによると、ボニエのCEOは「アマゾンはこの遅延が、交渉中の電子書籍の契約条件よるものだと認めた」と話しているようだ。

これら、アマゾンとの契約交渉絡みのケースとは別に、アマゾンに批判的な書籍にも、影響は出ているという。

ジェフ・ベゾスさんの素顔とアマゾンのビジネスの内幕を描いた「The Everything Store: Jeff Bezos and the Age of Amazon」はアシェットの書籍ではないが、10月発行のペーパーバック版は、アシェットのものと同様、「利用不可」として予約ボタンは表示されていない。

(邦訳『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』のアマゾンのページには、今のところ、これといった異変は見あたらない)

同紙のテクノロジーコラムニスト、ファーハッド・マンジョーさんは、こう見立てている

アマゾン批判派が危惧する最悪のシナリオを、アマゾン自身が証明している。

●フェイスブックのメディアへの不満

プライバシー設定など〝ルール〟の急変では、こちらもよく知られるフェイスブックだが、今回はやや奇妙な話だ。

騒動は、マイク・ヒューダックさんが23日、「メディアの現状」に対する不満を、自分のフェイスブックページに書き込んだことに始まる。

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この国の新聞は、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、ウォールストリート・ジャーナルを除いては、ほぼ全く空洞化してしまった。ゴースト・イン・ア・シェルだ。それらの新聞だって、教えられたことを書くだけだ。(中略)本当に意味のあるニュースをインターネットのスピードで報じる力はない。

テレビから、ハフィントン・ポスト、バズフィード、さらに新興ニュースベンチャー「ヴォックス」を立ち上げた元ワシントン・ポストのエズラ・クラインさんまで、なで斬りだ。

そして、ヴォックスで最も一番読まれていた記事が「ジーンズを凍らせても洗濯にはならない」だとは、と嘆く。

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誰を責めればいいのかわからない。ただ、誰かがこのひどい状況をなんとかしなきゃ。

問題は、ヒューダックさんがフェイスブックのプロダクトディレクターだったことだ。

ニュースは益々ソーシャルメディアから読まれるようになっている。大きな入り口の一つがフェイスブックのニュースフィードだ。

そしてフェイスブック自身、「より適切な記事、高品質のコンテンツをフィードに届ける」として、ニュースフィードのアルゴリズム、つまりフェイスブック版の〝パンダ〟アップデートを昨年12月に公開した経緯がある

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それだけに、ヒューダックさんの投稿には、メディア関係者から一斉に突っ込みが入った。

「責める」べき相手は、メディアではなくフェイスブックそのもの、その〝ルール〟を決めたザッカーバーグCEOだろう、と。

名指しされたヴォックスは、ライターのマシュー・イグレシアスさんが早速、こんな記事を掲載した。

フェイスブックのプロダクトディレクター、ニュースへの〝フェイスブック効果〟に怒る

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雑誌「アトランティック」のテクノロジー担当のシニアエディター、アレクシス・マドリガルさんは、ヒューダックさんのコメント欄にこう書き込んだ

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あなたの指摘したそれらの傾向は、フェイスブックこそが、主な要因になってるんじゃないか。(中略)あなたのCEOの有名な文句がこの現象を説明している。『家の前で死んでいるリスの方が、アフリカで死んでいく人々よりもあなたの今の興味をそそるのかもしれない』。我々メディアの側に病理がないとは言わないが、グーグルとフェイスブックの、ソーシャルとアルゴリズムの影響力は、この世界の生態系を支配しているんだから。

確かに。

【訂正】27日6:30AM:出版社名「Hachette」を「ハチェット」と表記していましたが、「アシェット」の誤りでした。

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※このブログは「ハフィントン・ポスト」にも転載されています。

※GQ JAPANのウェブサイトに、「ジャーナリズムの伝統と流行」というテーマで、筆者のインタビュー記事が掲載されています。「ジャーナリズムが得た新たな表現方法──平和博よろしければどうぞ。

Twitter:@kaztaira

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