忘れられる権利:ガーディアン、BBC、デイリーメールの記事が欧州グーグルから削除される(※そして一部復活する)

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07/03/2014 by kaztaira

ガーティアンBBCデイリーメール記事が、欧州のグーグルから削除されたという。原因は「忘れられる権利」だ。

それぞれがサイト上で報告している。

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「忘れられる権利」が「報道の自由」を縛る。その懸念が現実のものになってきた。

●忘れられる権利とグーグル

ネット上に残る過去のプライバシー情報の削除を要請できる「忘れられる権利」については、「『忘れられる権利』とグーグル:プライバシーは誰が守るのか」でも紹介した。

欧州連合(EU)最高裁にあたる司法裁判所が5月、グーグルの検索結果をめぐる裁判の判決で、個人の名前が含まれていて、「公開当初の目的から見て、不適切、関連のない、もしくはもはや関連のなくなった、行き過ぎた」検索結果は、削除を要請できる、との判決を出していた。

グーグルはこれを受けて同月末、EUの域内を対象に、削除申請のページを開設。

削除申請は約5万件にのぼり、先月末から削除作業を始めていた

●ガーディアンの6本

まずは、ガーディアンの報告から見ていこう。

削除対象となった記事は6本。うち3本は、サッカーのスコティッシュ・プレミアリーグの元審判、ドーギー・マクドナルドさんについてのものだったという()。

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マクドナルドさんは、2010年10月にあったダンディー・ユナイテッドとセルティックの試合での判定について、虚偽の説明をしたとして審判を辞任した経緯のある人物だ。

米国版グーグルで「Dougie McDonald Guardian」を検索すると、この騒動に関する当時のガーディアンの記事3本がトップに表示されたが、英国版グーグルでは、それらが表示されなかった、と検索結果画面のスクリーンショットとともに報じている。

他の3本はフランスの「ポストイット・アート」の話題(2011年)、詐欺事件の被告となっている事務弁護士が事務弁護士協会の役員に立候補(2002年)、メディアコラムニスト、ロイ・グリーンスレードさんの2011年10月31日から11月6日までの記事一覧

グーグルは削除理由を明らかにしていないという。

●BBCの1本

BBCは経済エディターのロバート・ペストンさんが、自身が2007年に書いたブログ投稿が、削除対象になったと報告している。

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投稿は、サブプライムショックによるメリルリンチの巨額赤字で引責辞任した元会長兼CEO、スタンレー・オニールさんに関し、その経緯を取り上げたものだ。

BBC宛てに届いた通知にはこうあったという。

グーグル検索からの削除通知: 残念ながら、欧州版のグーグルでのある種の検索に対する応答結果には、あなたのサイトの以下のページを表示することができなくなったことをお知らせします。

●デイリーメールの4本

デイリーメールが明らかにしているのは4本の記事。

ガーディアンと同じ、ドーギー・マクドナルドさんについての記事イスラム教徒が人種差別によってキャセイパシフィックへの就職を拒否されたという記事(2009年)、英国の大規模スーパー「テスコ」の従業員たちが客を侮辱するネット投稿をしていたという記事(2009年)、そして混雑する列車内で性行為を行ったとして逮捕されたカップルの記事(2008年)だ。

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デイリーメール発行人のマーチン・クラークさんは、このようなコメントを出している。

これらの例は、忘れられる権利がいかにナンセンスかを示している。これは、図書館に入っていって、気に入らない本を焼き払うのと同じようなものだ。

●グーグルの言い分

これについてはグーグルも言い分がある。

EU司法裁判所の判決を受けて、グーグル広報は英インディペンデントに対し、こう指摘していた

裁判所の判決はグーグルに対して、個人の〝忘れられる権利〟と公共の〝知る権利〟についての難しい判断をするよう求めている。

また、削除申請の受け付けにあたって、CEOのラリー・ペイジさんもフィナンシャル・タイムズにこう述べていた

この判決は、欧州のように先進的、進歩的ではない国々によって悪用されるのではないか。そして多くの人々が(削除を求めて)押し寄せるだろう。おそらく…大半の欧州人が眉をしかめるような理由で。

そして、ほぼその通りになった、ということのようだ。

●わかりにくい削除

欧州版のグーグルから、当該の記事が実際に削除されているのかを確認する作業は、少々面倒だ。

ある固有名詞の検索結果に、特定のページが表示されないようにするのが「削除」の内容だ。そのため、まずは削除申請をしたであろう固有名詞の目星をつける必要がある。

例えば、BBCのロバート・ペストンさんが書いた、元メリルリンチ会長兼CEO、スタンレー・オニールさんに関するブログ投稿。

ペストンさんは、削除が確認できないとしていたが、オニールさんの名前とBBC(Stan O’Neal BBC)で英国版グーグルを検索すると、少なくとも最初の検索結果には当該記事は表示されず、ページ末尾にこんな一文が出てくる。

いくつかの検索結果は欧州のデータ保護法に基づき削除された可能性があります。詳しくはこちら

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リンクをクリックすると、EU司法裁判所による「忘れられる権利」判決を、グーグルのサービスにどう反映させているかについての説明ページに飛ぶようになっている。

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これで、おそらくはこの元メリルリンチ会長の申請によって、この記事が検索結果から削除されたのではないか、と推測される。

では、ガーディアンのドーギー・マクドナルドさんに関する記事はどうか。

ガーディアンの記事では、英国版グーグルでの「Dougie McDonald Guardian」の検索結果と米国版グーグルの結果を比較して、削除が行われたのではないか、としていた。

だが、これで検索しても、英国版グーグルの末尾には、上述の注意書きが出てこない。つまり、削除申請者はマクドナルドさんではない可能性があるのだ。

では誰だ?

記事にはこの騒動に関連して辞任した元副審、スティーブン・クレーブンさんの名前も出てくる。そこで、「Steven Craven Guardian」で検索してみると……注意書きが出てきた。

デイリーメールのマクドナルドさんに関する記事についても、同じ事が起きる。

申請者はこの元副審の可能性がある。

可能性はあるが、状況はさらに複雑のようだ。

ブログ「サーチエンジンランド」のダニー・サリバンさんによると、著名人の場合、この注意書きが表示されないケースがある一方で、「Emily White」のような、ごく一般的な固有名詞を検索しても注意書きが表示されることもあるという。

事実を知っているのは、削除申請をした当人と、グーグルだけだ。

●「報道の自由」への縛り

「削除」はEU域内のグーグルサービスに限定されている。

それも完全な削除ではなく、例えば英国版グーグルで、ドーギー・マクドナルドさんの名前を含むガーティアンの記事のタイトルを、引用符つきで検索すると、一番最初に表示される。

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さらに、EU域内のユーザーが米国版グーグルを使えば、依然として元のままの表示結果だし、記事そのものが削除されるわけでもない。

また、今回の件がメディアで騒ぎとなり、それを報じる記事の中で削除対象記事も取り上げられ、余計に検索結果を賑わす状態になっている。

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それでもこの削除は、「報道の自由」を縛っていることに変わりはない。

【追記】4日09:00AM

@masanorkさんからこんなご指摘をいただいた。

確かに今回のケースだと、メリルリンチ元会長と、列車内の性行為で逮捕されたカップルとは、分けて考えた方がいいかもしれない。

ただ、その判断をグーグルに委ねるのか、という問題は残る。

英レジスターは、さらに深読みをしている。EU司法裁判所の判決は、グーグルが削除申請を却下すれば、申請者はプライバシー・コミッショナーなどの各国のプライバシー保護機関(第三者機関)か裁判所に改めて申請できる建てつけになっている。グーグルがあえて自社で削除申請を認めて削除しているのは、騒ぎを大きくして、新たなEUデータ保護規則から「忘れられる権利」を葬り去るための、キャンペーンの一環ではないか、と。

なるほど。

【追記2】5日09:30AM

ガーディアンは、削除されたリンクのうち、ドーギー・マクドナルドさんについての記事3本は、グーグルが再び表示するようになった、と明らかにした。

また、新たにデイリーテレグラフも、記事リンクが削除されたことを明らかにしているが、やはりマクドナルドさんに関する記事のリンクは復活したという。

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ガーディアンは、4日にBBCラジオ4で放送されたグーグルの欧州担当コミュニケーションディレクター、ピーター・バロンさんのインタビューも紹介。いろいろ興味深い話が出ている。

バロンさんは、削除申請がすでに7万件を超えているという。

今は、EU司法裁判所の判決を実行に移すための「学習過程」だとして、判決を覆すためにあえて拙速に削除を実施しているのでないか、との〝ネガティブキャンペーン説〟については否定した。

そして、メディアに対して削除ページの通知をすることで、グーグルの取り組みがより明確になる、としている。

さらに、削除対象となった記事が取り上げている人物が必ずしも申請者だとは限らないと指摘。BBCのロバート・ペストンさんが書いた、元メリルリンチ会長兼CEO、スタンレー・オニールさんに関するブログ投稿の件では、削除申請者はオニールさん自身ではなく、コメント欄への投稿者だったことを明らかにした。

そして、こう述べている。

EU司法裁判所の判決は、我々にとって望ましいものではなかったが、現在では欧州における法規だ。そしては我々は法規に従う義務がある。

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※このブログは「ハフィントン・ポスト」にも転載されています。

※GQ JAPANのウェブサイトに、「ジャーナリズムの伝統と流行」というテーマで、筆者のインタビュー記事が掲載されています。「ジャーナリズムが得た新たな表現方法──平和博よろしければどうぞ。

Twitter:@kaztaira

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