忘れられる権利:ルールを決めるのはグーグルかEUか

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07/26/2014 by kaztaira

欧州連合(EU)の司法裁判所がグーグルに対し、「公開当初の目的から見て、不適切、関連のない、もしくはもはや関連のなくなった、行き過ぎた」検索結果は削除を要請できる、とした今年5月の「忘れられる権利」判決

グーグルにはすでに9万件を超える削除要請が寄せられ、その半数以上で削除を実施しているというが、EUはその対応の仕方が気に入らないようだ。

削除をEU域内のサイトに限定していることや、対象となったメディアなどに削除記事を通知するのを、やめるよう求めているのだという。

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プライバシーと表現の自由の線引きのやり方を、グーグルが決めるのか、EUが決めるのか。ネット全体を巻き込む勢いで、雲行きはさらに怪しくなってきている。

●グーグルによる対応実績

今月24日、EUのプライバシー保護当局の代表者が集まる「EUデータ保護指令第29条作業部会」とグーグル、マイクロソフト、ヤフーの検索3社が、ブリュッセルで「忘れられる権利」判決の履行についての協議を行ったという。

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今秋に予定しているガイドラインづくりの参考にするのだという。作業部会がプレスリリースを出し、検索3社に回答を求めた26項目の質問を公開している。(ちなみに、マイクロソフトもグーグルに続き、ビングへの削除申請受け付けのページを立ち上げている)。

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このタイミングで、グーグルの削除要請への対応実績のデータや、EU側の要求を、各メディアが一斉に報じている。

例えば、テッククランチの記事によると、これまでに寄せられた削除要請は約9万1000件で、削除対象となる記事のリンクは32万8000件。

その半数以上で削除を実施し、約3分の1は削除を拒否、15%は申請内容が不十分として補足を求めたという。

国別ではフランスがトップで1万7500件(対象リンク5万8000)、次いでドイツ1万6500件(同5万7000)、英国1万2000件(同4万4000)、スペイン8000件(同2万7000件)、イタリア7500件(同2万8000)、オランダ5500件(2万1000)。

●削除の効果

忘れられる権利:ガーディアン、BBC、デイリーメールの記事が欧州グーグルから削除される(※そして一部復活する)』でも紹介したが、削除に際してグーグルは、二つの対応をしている。

一つは、削除の対象をグーグルの英国版やフランス版など、EU域内のローカルサイトに限定すること。もう一つは、削除を行った記事の発行元メディアなどに、削除の事実と当該記事のURLを通知すること。

グーグルは、ローカルサイトでの表示結果の変更については、過去に中国版などでも行っている。また、著作権侵害コンテンツなどの削除を行った場合にも、削除事実の通知を行っている。

だが、メインサイトなど、削除対象のローカルサイト以外で検索すれば、要請に基づいて削除された記事のリンクも、以前と同様に表示される。

また上記記事で取り上げたように、削除事実の通知を受けたガーディアン、BBC、デイリーメールといったメディアは、当然のようにそれを記事にし、削除申請をしたとおぼしき人物とその記事は、削除以前よりも注目を集めることになった。

調査会社「スタットカウンター」のデータによると、欧州の検索市場におけるグーグルのシェアはこの1年、93%前後で推移している

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つまり、前述した第29条作業部会の26項目の質問は、事実上、グーグルが名宛て人とも言え、その趣旨はひと言でいうと「なんでそんな厄介なことをするんだ」と読める。

●「忘れられる権利が台無しだ」

アイルランドのプライバシー保護機関のデータ保護コミッショナー、ビリー・ホークスさんは、ブルームバーグのインタビューにこう答えている

グーグルが通知をすれぼするほど、報道機関はその情報を改めて報じる、そして忘れられる権利は台無しだ。

英国のプライバシー保護機関、情報コミッショナーのクリストファー・グレアムさんも、BBCのラジオ番組でグーグルの対応を批判している。そして、グーグルによるメディア操作があるのではないか、と。

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グーグルは個人情報を処理することで、膨大な収益を上げている巨大企業だ。そろそろ物事を整理すべきだろう。(中略)歴史の書き換えとか、気まずい過去の出来事の抹消などと言われている――これは全くナンセンスだし、そんなことは起きるはずもない。(中略)(微罪について一定期間経過後)法は刑が消滅し、前科は抹消されたとみなすが、ことグーグルに関しては、そうではないのだ。

●「歴史を書き換えている」

400の報道機関が加盟する英国の編集者協会の常任理事、ボブ・サッチェルさんは、「忘れられる権利」判決は、「極めて問題がある」とし、欧州人権条約の10条に定める「表現の自由」に反するとして、キャメロン首相宛て(ダウンロード)と、第29条作業部会の議長、イザベル・ファルケ-ピエロタンさん宛て(ダウンロード)に公開書簡を送ったという。

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グーグルが立ち上げた「忘れられる権利」諮問委員会のメンバーであり、ウィキペディアの創設者、ジミー・ウェールズさんは25日、BBCラジオでこうコメントしたという

これは極めて危険な道行きだ。そしてこのまま進んでいこうとすけば、我々は歴史を検閲することになる。その判断をする役回りを、グーグルのような一民間企業にさせるべきではない。

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ジャーナリストでアリゾナ州立大学ジャーナリズムスクール教授、ダン・ギルモアさんはツイッターでこう述べている。

グローバル検閲:EUの規制当局はグーグルに、欧州版だけじゃなく全サイトからリンクを削除させようとしている。

ハーバード大学教授でバークマンセンター共同設立者のジョナサン・ジットレインさんも、こう指摘する。

報道によればEUは、検索業者が表示結果から削除したことを当該サイトに通知するのをやめるよう求めているようだ。それを禁じるというのは、あまりにやりすぎだ。

ニューヨーク市立大学ジャーナリズムスクール教授でブロガーのジェフ・ジャービスさんの場合はこうだ。

くそっ、EU、あんたたちは歴史を書き換えてるんだ。その危うさを、欧州の歴史は教えなかったのか?

●線引きの仕方

EUとグーグルの因縁は、和解するかに見えたグーグルに対する独占禁止違反容疑などでも、こじれにこじれている。

背景にあるのは、グーグルのような巨大なネットのプラットフォームが、国境を越えた独自の勢力圏を広げることへの危機感だ。

グーグルがルールや秩序を一方的に決める世界は、確かに居心地が悪い。

だが、EUの裁判所の判断がネット全体を縛るという世界も、それはそれで歪んでいる。

EU司法裁判所の「忘れられる権利」判決をもとに、グーグルの判断によって削除が行われ、しかもどのような判断基準で、何が削除されたのかもわからぬまま、その適用範囲はネット全体に及ぶ――。

今やってこようとしているのは、そんな世界だ。

この問題にうまい落としどころはあるんだろうか。

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※このブログは「ハフィントン・ポスト」にも転載されています。

※GQ JAPANのウェブサイトに、「ジャーナリズムの伝統と流行」というテーマで、筆者のインタビュー記事が掲載されています。「ジャーナリズムが得た新たな表現方法──平和博よろしければどうぞ。

Twitter:@kaztaira

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