「両手を上げるデモ」香港と米ファーガソンにつながりはあったのか

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10/05/2014 by kaztaira

両手を上げて抗議を行う香港のデモには、「暴力には訴えない、撃つな」という意思表示があるようだ。

そして、このスタイルには何らかの見覚えがある。

米ミズーリ州ファーガソンで起きた警官による黒人少年射殺事件への抗議のデモだ。

数千キロ離れた場所で行われている二つのデモは、連鎖反応のように見える。

友人でジャーナリスト、米アリゾナ州立大ジャーナリズムスクール教授のダン・ギルモアさんは、香港のデモの写真とともに、こんなツイートをした。

香港の〝手を上げろ、撃つな〟というファーガソンを見習ったデモは、強く訴えかける映像だ。

ギルモアさんによるこの書き込みはその後、750回以上もリツイートされた。だが、二つのデモの関連を裏付けるデータは、今のところ出てきてはいないようだ。

因果関係と相関関係、そして偶然の一致。その特定は、見た目よりも難しい。

●「ファーガソンを見習う」への反応

ギルモアさんはシリコンバレーの地元紙、サンノゼ・マーキュリー・ニュースの元コラムニスト。

現在もサンフランシスコ湾岸地域(ベイエリア)在住だが、香港にもゆかりがある。

1999年から6年ほど、毎年秋には、香港大学で数週間の集中講義を持っていたという経歴の持ち主だ(この集中講義は今年から再開されるという)。

ギルモアさんが最初のツイートをしたのは米国時間の9月28日。

まずあった反応は、中国政府による弾圧を支持する立場からの投稿だったという。ギルモアさんはこれを無視する。

だがそれに続いて、ギルモアさんの投稿に対して、全くの〝間違い〟だとする指摘が寄せられ、中には〝間抜け〟呼ばわりするものもあったという。

そこでギルモアさんは、自分の投稿を読み返してみて、その〝問題〟に気づく。

●「両手を上げる」ことの関連

非暴力をアピールするための〝両手を上げる〟デモのスタイルは、ファーガソンと香港で確かに共通していた。

だが、香港のデモ参加者がファーガソンを参考にしたかどうか、ギルモアさんは知らなかったし、そのような情報も目にしたわけではなかった。

香港のデモを、ファーガソンのデモを「見習った」と関係づける根拠を持っていなかったのだ。

ギルモアさんに対し、そのことを具体的に指摘したのはガーディアンの記者だったという。

いくつかのニュース記事をチェックするが、両者の関連を示すような〝証拠〟は見あたらない。

ギルモアさんは、最初のツイートを取り消し、こんな風に表現を〝弱め〟ようかとも考えたという。

強く訴えかける映像だ。ファーガソンのデモとの関連はあるのだろうか。

これならば、両者の関連について、より中立的な表現になる。

だがその時すでに、最初のツイートは、投稿から数時間で751回もリツイートを繰り返されていたという。

●メディアが拡散する

ギルモアさんの投稿は、リツートされだけではなく、それを引用する形でメディアが拡散するという事態になっていた。

ニュース解説サイト「ヴォックス」は、「ファーガソンを見習った」というギルモアさんのツイートを引用。それをさらに、ワシントン・タイムズが孫引きする、といった具合に広がっていった。

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これに対して、ニュースサイト「クォーツ」は香港発で、「両手を上げる」スタイルについて、香港のデモのリーダーの指導によるもので、参加者の大半はファーガソンのことを知らない、として両者の直接的な関係を否定する記事を掲載した。

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これを受けて「ヴォックス」も記事をより中立的に修正したようだ。

ギルモアさん自身も、香港の友人に問い合わせをしてみる。友人からは次のような返信があったという。

私に言わせれば、ファーガソンとジェスチャーが似ているのは、全くの偶然だろう。香港では、ファーガソンのことは主要メディアでもソーシャルメディアでも、ほとんど報じられていないのだから。

●生徒に聞く

ギルモアさんは、ブログ草創期の1999年からブログを続けている古参のジャーナリストブロガーでもある。

ギルモアさんは、結果的に、このてん末を自らのブログでまとめることにする。

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ギルモアさん本人の思いは、ファーガソンと香港のつながりよりも、香港の抗議活動に対する敬意を示すことにあったのだ、と。

それに先立ち、アリゾナ州立大ジャーナリズムスクールの生徒たちに、反面教師の教材として、そのブログ投稿を読んでもらった。

そこで生徒から寄せられたひと言の一つがこれだという。

これをたまたま目にしただけの人たちは、私の意図を理解できるだろうか?

ギルモアさんは、この問いを肝に銘じることにしたという。

●「アラブの春」と「オキュパイ」

地球の裏側で起きていることが、関連し合うというケースもこれまでにあった。

たとえば2011年初めの中東民主化運動「アラブの春」で、民衆によるエジプト・カイロのタハリール広場占拠とムバラク政権の崩壊は、同年9月に始まる「オキュパイ・ウォールストリート(ウォール街を占拠せよ)」影響を与えたと指摘された

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それだけに、話は余計ややこしくなる。

すべてがつながっているわけではないが、つながっていることもある。

今回の香港のデモの中心組織である「オキュパイ・セントラル・ウィズ・ラブ・アンド・ピース(OCLP)」は、その名前からも「オキュパイ・ウォールストリート」のイメージが重なる。

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アトランティック」は、2011年の「オキュパイ・ウォールストリート」、それに呼応した当時の香港の「オキュパイ・セントラル」と、今の新たな「オキュパイ・セントラル・ウィズ・ラブ・アンド・ピース(OCLP)」について、それぞれ運動としての射程の違いなどをうまく整理している。

一方で、「ウォール・ストリート・ジャーナル」のブログによると、中国政府寄りの現地紙は、デモのリーダーの一人、弱冠17歳のジョシュア・ウォンさんについて、米政府とのつながりがある、と報じているという。

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米国とつながるイメージは、宣伝戦の材料にされる側面もあるようだ。

因果関係と相関関係と偶然を見分け、〝そのデータでどこまで言えるのか〟をわきまえる――当たり前のことだが、やはり改めて肝に銘じておきたいと思う。

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※このブログは「ハフィントン・ポスト」にも転載されています。

Twitter:@kaztaira

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