シリコンバレーが握るメディア空間で、ジャーナリズムがやるべきことは何か

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11/29/2014 by kaztaira

コロンビア大学ジャーナリズムスクールのデジタルジャーナリズムセンター所長、エミリー・ベルさんが先月21日、オックスフォード大学ロイター研究所で行った講演が、界隈で話題になっている。

タイトルは「ジャーナリズムとシリコンバレー:和解か決別か」。

報道機関はもはや報道の自由の担い手ではなく、記事を読者に届ける主要ルートのコントロールを失ってしまった。公共圏は今や、シリコンバレーにある少数の民間企業によって運営されているのだ。

Photo by Chris Monk https://www.flickr.com/photos/101251639@N02/ Under Creative Commons License (CC BY 2.0) https://creativecommons.org/licenses/by/2.0/

Photo by Chris Monk  under Creative Commons License (CC BY 2.0)

ベルさんは、ジャーナリズムの側が独自のプラットフォームをつくるべきだ、と主張する。

だが、20年前からの最古参ブロガーでブログソフトの生みの親、デイブ・ワイナーさんは「ジャーナリズムは、テクノロジーについて聞く耳を持っていない」と反論する。

誰もが記事を発信できるツールを手にしたとき、ニュースに何が起きるか。ジャーナリズムはそれを無視したんだ。

少し心当たりのある話ではある。

●アルゴリズムによる編集判断

ベルさんは、英ガーディアンでデジタル担当役員などを歴任。新聞とデジタルの両方を手がけてきた論客だ。

ベルさんが指摘するのは、ネットユーザーがどの記事を目にするかを決めるのは、もはやメディアではなく、フェイスブックやグーグルなど、シリコンバレー企業が提供するプラットフォームのアルゴリズムだ、という点だ。

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その明暗はこの20年ではっきりとした。

エンジニアたちがフェイスブック、ユーチューブ、ツイッター、リンクトイン、インスタグラム、レディット、ピンタレスト、エロ、メディアム、キックスターターなどを開発する間、広く受け入れられるソーシャルプラットフォームを計画したり、開発したりするジャーナリズム企業、メディア企業は一つとしてなかった。そして、メディア企業に買収されたのはたった2社、マイスペースとレディットが、それぞれニューズコープとコンデナストに買収されただけだ。それがこの20年間の実績だ。

フェイスブックのユーザーはほぼ全人口の2割にものぼる。

ただ問題は、シリコンバレー企業は、ジャーナリズムの社会的責任には何の関心もない、という点だ。

〝我々は編集判断に関わるつもりはない〟。これはシリコンバレー企業から繰り返し聞かされてきたフレーズだ:我々は〝単なるプラットフォーム〟で、〝テクノロジーはニュートラルだ〟と:〝我々は編集判断をしているわけではない〟と。だがアルゴリズムが修正されるたび、そこで編集判断が行われているのだ。

●フェイスブックの実験

そして、そのアルゴリズムの中身も、どのように使われているかも明らかにされることはないし、シリコンバレー企業にそんな義務もない。

ベルさんは端的な例として、フェイスブックがユーザーの〝感情〟を操作する実験や、2010年の米中間選挙で投票率上昇の効果を測定する実験を、いずれもユーザーへの告知なしに行っていたことを指摘する。

コンテンツのフィルタリングには慎重だったツイッターも、イスラム国(ISIS)が公開した米国人ジャーナリストの処刑動画を巡り、関連するアカウント、及びそれをリツートしたアカウントの停止を表明した

これもまた、〝編集判断〟だ。

●三つのやるべきこと

ベルさんは、ジャーナリズム側がやるべき三つのポイントを提言する。

まず第一に、フェイスブックやグーグルに依存しない、ジャーナリズムに特化したツールとサービスの開発だ。

二点目はシリコンバレー企業への、独占などに関する規制のあり方をもっと精力的に提起すること。

そして最後は、シリコンバレー企業について、もっときちんと報道していくこと。それはアイフォーン発売の行列などではなく、人権や政治的問題として、議会を取材するように報道せよ、と。

我々は社会に対し、権力の新たなシステムについて説明し、彼らに説明責任を果たさせる必要がある。

ベルさんは、このテーマについて、ガーディアンのコラムでも改めて取り上げている。

●20年間の空白

ニューヨーク市立大ジャーナリズムスクール教授、起業家ジャーナリズムセンター所長で著名ブロガーのジェフ・ジャービスさんは、ベルさんの主張におおむね賛同する、としながら、いくつかのポイントでクギを刺す

まずは、ベルさんも取り上げた〝20年間の空白〟だ。

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ここで思い出しておきたいのは、商用インターネットが普及してから現在まで、職業としてのジャーナリズム、そしてニュース産業には20年の時間があったということだ。(中略)グーグルのようにユーザー個々人に適切で価値あるサービスを届ける:フェイスブックのように情報の収集、共有、やりとりのためのツールによってコミュニティーにサービスを提供する:その両者がやっているように、広告主に効率的なサービスを提供する:20年という時間でそれらを学ぶこともできたはずだった。だが、我々はそれをやらなかった。

そして、つかみどころのない〝ハッカージャーナリスト〟や〝プログラマージャーナリスト〟にジャーナリズムの未来を託したり、政府の規制に期待したりする気にはなれない、という。

むしろ、「彼女が提起した問題に取り組むため、グーグル、フェイスブック、ツイッターなどの企業と議論の場を持つことを提案したい」と言う。

●無視したジャーナリズム

さらに、デイブ・ワイナーさんもこの〝20年〟について、指摘する

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ワイナーさんは1994年から自らのブログ「スクリプティングニュース」を続けており、ブログで使われる配信通知規格「RSS」を策定したことでも知られる。

ブログが根付いていくのを、ジャーナリズムはただ傍観するだけだった。ブログについて報じることはあっても、ほとんどは無視していた。私はスクリプティングニュースで、たびたび警告してきた。配信システムをテクノロジー業界に握らせることについて、後悔する日が来ると。そして、その日が来たということだ。何の抵抗もせず、ジャーナリズムはテクノロジー業界の参入を許し、そして乗っ取られたのだ。

さらに、こうも指摘する。

不透明なアルゴリズムなら、ジャーナリズムにだってある。ニュースかニュースじゃないかをどうやって決めているのか、読者の誰も知らないじゃないか。

そして、こう提言する。

私が報道機関の経営者なら、テクノロジー業界が配信システムを所有していることを受け入れ、それを前提としたプランを立てる。すべての見出しはツイッターとフェイスブックに流す。そしてそれと連携するするような独自の配信システムの開発を始めるのだ。

しかも、そのために使えるオープンなツールはいくらでもあるんだから、と。

いや、しっかりと耳を傾けておきたい話ですよ。

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※このブログは「ハフィントン・ポスト」にも転載されています。

Twitter:@kaztaira

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