アルゴリズムがユーザーを不安にさせるネットの「不気味の谷」(追記あり)

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12/20/2014 by kaztaira

アンドロイド(人型ロボット)が人間に似てくるに従って親近感が増すのに、人間そっくりに見える手前で、急に不気味さを感じて嫌悪感を覚える。「不気味の谷」(森政弘・東工大名誉教授)と呼ばれる現象だ。

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Photo by Robert Couse-Baker under Creative Commons license (CC BY 2.0)

どのコンテンツがユーザーの目に触れ、どのコンテンツは目に触れないか。今やその決定権の多くを、アルゴリズムが握っている。

アルゴリズムが判断するコンテンツのフィルタリングやターゲティング広告は、まさに「不気味の谷」を感じさせるのではないか――2015年を前にして、そんな論考が目についた。

●2014年に最も注目を集めた論文

今年、最も注目を集めた論文は何か。

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調査会社「オルトメトリック」によるランキング「2014トップ100」によると、科学専門誌「米科学アカデミー紀要(PNAS)」に掲載されたこの論文だ。

ソーシャルネットワークを通じた大規模情動(感情)伝染の実験的証明

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301本のニュース記事で取り上げられ、3801回ツイートされ、342回のフェイスブック投稿、130本のブログ投稿があったという。

この実験では、フェイスブックのユーザー689,003人を対象に、通常のアルゴリズムを変更し、「ポジティブ」や「ネガティブ」な内容の表示を制限することによる感情の変化を調べた。その結果、ソーシャルメディア上でも、「ポジティブ」や「ネガティブ」な感情は伝染していく、とのデータを示している。

フェイスブックのサイエンティストが行ったこの実験は、ユーザーへの事前告知もなく、アルゴリズムによる感情操作だとして、激しい批判を浴びた。

●アルゴリズムの不気味の年

そして、2014年はアルゴリズムがこれまでに増して注目を集め、我々を不気味な思いにさせた年だ、と指摘するのが、ノースカロライナ大学チャペルヒル校助教のゼイネップ・トゥフェッキさんだ。

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Photo by Peyri Herrera under Creative Commons license (CC BY-ND 2.0)

フェイスブックの騒動を取り上げ、トゥフェッキさんはこう述べる。

議論の大半は怒りに満ちたものだった:筆頭著者は、「フェイスブックでのソーシャルなやりとりを操作するなどということがよくもできたな」と嫌悪感を示す数百本にのぼるメールを受け取った;だがもちろん、実際のところそれは、フェイスブックがアルゴリズムによって毎日行っていることに過ぎないのだが。

2015年はこれらのアルゴリズム(あるいはAI[人工知能])が、様々な端末のチップやセンサーの形で、より幅広い生活の場面に浸透してくる、とトゥフェッキさんは見立てる。

我々は新時代の誕生を目にしている。判断するマシンの時代だ:データベースを素早くソートするための演算をしたり、数学の計算をするだけでなく、何が〝最適〟で〝関連〟があり〝適切〟で、何が〝有害〟かを〝判断〟するマシンだ。

そして、この問題にきちんと向き合っていく必要がある、と。

マシンは数百年にわたり、腕力で我々をしのいできた、そしてこの数十年、計算力でも。今やマシンは我々の代わって判断をし、その判断力でも我々をしのごうとしている。

2015年はそれが広範に可視化される年になるだろう。それはさらに不気味なものになるだろうか。そして、それに対する反動は? おそらくそれは2016年の話になるだろう。

●インテンション・エコノミー

著名ブロガーのドク・サールズさんも、ターゲティング広告をテーマに「不気味の谷」を取り上げている。

サールズさんは、ソーシャル時代の到来を告げた『クルートレイン宣言(邦題:これまでのビジネスのやり方は終わりだ―あなたの会社を絶滅恐竜にしない95の法則)』の共著者として知られる。

さらに、近著の『インテンション・エコノミー 顧客が支配する経済』では、ビッグデータから人々の関心を探り出すことに目標を置く「アテンション(関心)・エコノミー」ではなく、買い手の意思(スモールデータ)を中心に据えた、買い手主導の「インテンション(意思)・エコノミー」への転換を提唱している。

ビッグデータの解析とターゲティングは、どこまでいっても、「アテンション・エコノミー」の枠組みに縛られる。

そして、その精度が増していくほど、不気味さが立ち上がってくる、と。

伝統的なブランド広告――印刷媒体で目にしたり、ラジオで耳にしたり、テレビで見たりする――は、100%親しみがあるが、人間には似ていない。それは企業がメディア(これも人間ではない)を使って発信するものだ。やや親しみの度合いが下がり、少し人間寄りになるのが、旧式のダイレクト広告、ジャンクメールの類いだ。メッセージの文面はパーソナルな書きぶりで、その点では人間寄りだが、人間に近いというわけではない。監視によって得たビッグデータと超スマートなアルゴリズムに基づく高度にパーソナルな広告は、この2類型に比べれば親しみはずっと落ちるが、はるかに人間じみたものになる。だが、実際の人間ではないし、それは我々も知っている。その大半は、ただ不気味なだけだ。なぜなら、我々が安心できる範囲を超えて、はるかに多くのことを知っているのだから。

腹に落ちる論考だと思う。

【追記】21日17:00

では、この「不気味の谷」は越えられるのだろうか。

アンドロイドの場合、『ブレードランナー』のレプリカントように人間そっくりのレベルなら、「不気味の谷」は越えているといえるだろう。

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アルゴリズムも、人間の脳をまるごとシミュレートできるなら、どうだろう。

理研は2013年8月、「スーパーコンピュータ『京(けい)』の全計算ノード82,944個(約70万個のCPUコア)を使用した、17億3,000万個の神経細胞が10兆4,000億個のシナプスで結合された神経回路のシミュレーションに成功」した、と発表している。

「生物学的には1秒間に相当することを『京』では計算に40分」かかった、という。

では脳をまるごとシミュレートできる、いわゆる〝技術的特異点(シンギュラリティ)〟はいつごろになるのか。

グーグルのエンジニアリング・ディレクター、レイ・カーツワイルさんによると、その〝特異点〟は2045年で、それにより人間は不死を手に入れるのだという。

それはそれで、少し不安にさせる話だが。

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※このブログは「ハフィントン・ポスト」にも転載されています。

Twitter:@kaztaira

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