米国がついにインターネットの監督権限を手放した

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10/02/2016 by kaztaira

米国政府が10月1日をもって、インターネットの監督権限を手放した

米国内では直前まで、共和党から監督権限移管に抵抗する動きが相次ぎ、差し止め訴訟まで起こされたが、結局は退けられた。

1969年10月に米国で生まれたインターネットは、半世紀近くを経て、世界人口の半分が使うまでに広がった。

特にスノーデン事件をきっかけに、「米国政府のインターネット支配」に対する批判が強まり、管理権限を手放すための検討が続いていた。

※参照:米国政府がインターネット重要資源の監督権限を手放しました(JPNIC)
※参照:インターネットの管理権限を米政府が手放す(新聞紙学的)

インターネットは新たに、関係団体や技術専門家、ユーザーらの「マルチステークホルダー」と呼ばれる国際的な“インターネットコミュニティ”の監督下に置かれることになる。

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●マルチステークホルダーへの移管

インターネットの中核的な資源であるIPアドレスやドメイン名の管理は、ロサンゼルスに拠点を構える国際NPO「ICANN(アイキャン)」が担っている。

そしてインターネット発祥の歴史的経緯から、その業務は米商務省との契約に基づく監督下に置かれてきた。

だが、インターネット運営の米国政府からの独立は、ICANNが設立された1998年から目指してきた方向性だ。

10月1日、監督権限移管を受けて、ICANN理事会議長のスティーブ・クロッカーさんは、こんな声明を出している。クロッカーさんは1969年、インターネットの技術標準を示す文書「RFC」の第1号、「RFC1」を書いた人物だ。

今回の(監督権限)移管は、18年前に構想されてからこれまで、インターネットコミュニティが不断の努力を続け、最終提案を起草し、そして実現にこぎつけたものだ。コミュニティは、(その取り組みにより)インターネットガバナンス(統治)におけるマルチステークホルダーのモデルが機能することを立証した。ビジネス、学術、技術専門家、市民社会、政府、その他のあらゆる声を取り込むガバナンスのモデルこそ、未来のインターネットが現在のように自由、オープン、アクセス可能なものであるための、最良の方法であることを示したのだ。

●”商務省の監督”からの離脱

ICANNに対する米商務省の監督権限は、中国やブラジルなどから「米国政府によるインターネット支配」として批判が根強かった。

このため2009年には、ICANNの機能のうち、ドメイン名管理などについての方針策定に関しては、米商務省の関与から事実上独立することで合意した。

だが、IPアドレスの管理や、ドメイン名とIPアドレスをひもづけるシステム(DNS)を支えるサーバー群の管理といった、〝インターネット資源〟の運用の根幹を担う「IANA(アイアナ)」機能と呼ばれる部分については、依然として米商務省の監督下に置かれたままだった。

しかし、2013年に明らかになったスノーデン事件をきっかけに、「米国支配」の批判が一気に勢いを増す。

それを受けて翌2014年3月、商務省は監督権限を移管する意向を表明する。

今年3月には、ICANNを中心とした監督権限の移管プランがまとまり、商務省に提出。

6月には商務省がこの提案を了承していた

●「米国のインターネット」最後の1日

商務省とICANNの監督権限にかかる契約の期限は9月30日。契約が期限切れとなれば、10月1日から自動的に権限移管のプロセスがスタートする。

だが米国監督下のインターネットは、最後の1日に至るまで、にぎやかなフィナーレを迎えた。

移管反対ののろしを上げたのは、共和党だ。

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9月初めには上下両院の委員長らが連名で、政権に権限移管についての懸念を表明する。

さらに共和党の大統領候補指名をドナルド・トランプさんと争った上院議員、テッド・クルーズさんも声を上げる

クルーズさんの主張は、政府が監督権限を手放せば、ICANNにおいて、インターネットの運営に対するロシアや中国の影響力が増大する、ということのようだ。

ニューヨーク・タイムズによると、クルーズさんは上院で開催した公聴会でこう述べていた。

インターネットが多くの中東諸国のように運営されることを想像してもらいたい。それらの国々では、冒とくと見なされれば処罰されてしまう。あるいは、政権批判に関与すれば処罰や投獄の対象となる、中国やロシアのようなインターネットを想像してほしい。

これに同調したのが、トランプさんだ

トランプ陣営は9月21日、こんな声明を出した。

インターネットの自由は今、危機に瀕している。大統領はその監督権限を国際的な関係機関に譲渡しようとしている。そこには、中国やロシアといった、長きにわたってネット検閲を強制してきたことで知られる国々も含まれるのだ。

ただ、これらの主張が、技術的な誤解に基づいたものであることは、多くが指摘するところだ

DNSやIPアドレスは、検閲とは関係ない。

むしろ、今回の監督権限移管は、スノーデン事件以降の「米国支配」批判の中で、各国が独自のインターネットを構築に動きだすなどの、“ネットのバルカン化(分断化)”への懸念があったことが、後押しとなっている。

●テキサスでの裁判

だが、権限移管阻止への動きはやまない。

契約期限満了の2日前、9月28日になって、アリゾナ、オクラホマ、ネバダ、テキサス4州の、いずれも共和党の司法長官が、テキサス南部地区連邦地裁に、権限移管は政府資産の違法譲渡にあたる、として差し止めの仮処分を申し立てた

これ対し、権限移管の準備を進めてきたインターネットコミュニティがこぞって反論する。

グーグル、フェイスブック、アマゾン、ツイッター、ウーバーなどIT企業40社が加盟する業界団体「インターネット・アソシエーション」や、インターネット技術の標準化や政策策定にかかわる国際NPO「インターネット・ソサエティ」などが連名で意見書を提出移管差し止め請求に反論した

そして連邦地裁は期限満了の30日州司法長官らの申し立てを退ける決定をした。

●短い声明

米商務省は10月1日付で短い声明を発表する

テキサス州の連邦裁判所は、原告らの差し止め救済の申し立てを退けた。2016年10月1日をもって、IANA機能の契約は失効した。

以後、ICANNを監督することになるのは、インターネットの運営を担って来た国際的な関連団体などの”コミュニティ”だ。

具体的には、インターネットの技術標準を推進してきた「IETF(インターネット・エンジニアリング・タスクフォース)」や、IPアドレスの配布・管理を担うAPNIC(アジア太平洋)、ARIN(北米)、RIPE NCC(欧州)、LACNIC(中南米)、AfriNIC(アフリカ)の5つの「RIR(地域インターネットレジストリ)」などが、その役目を負うことになる。

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※このブログは「ハフィントン・ポスト」にも転載されています。

Twitter:@kaztaira

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