グーグルが個人情報とネット閲覧履歴を隔てていた”壁”をなくす

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10/23/2016 by kaztaira

調査報道メディア「プロパブリカ」が報じた、グーグルのプライバシーポリシー変更を巡る記事が話題になっている。

これまでグーグルは、ユーザーのプライバシー保護のため、傘下の広告サービス「ダブルクリック」が持つクッキーによる(個人が特定されない)ネット閲覧履歴と、グーグル本体のアカウントの個人情報の間には”壁”を設け、ユーザーの同意なしには結びつけない、と表明していた。

だが今年6月末に行われたポリシー変更により、この”壁”がいつの間にか消えていた、と「プロパブリカ」は指摘している。

これによって、閲覧履歴と個人情報がひも付けられ、広告配信のパーソナル化に利用されているという。

グーグルはこの時、「新機能の追加」という名目でユーザーの「同意」を求める「オプトイン」の体裁はとっており、私を含め、中身をよく吟味しないで「同意」ボタンを押したユーザーは多そうだ。

フェイスブックのように、すでに個人情報とネット上の行動履歴をセットで活用するソーシャルメディアが席巻する中で、グーグルとしては”遅れ”を挽回する狙いのようだ。

9年前のダブルクリック買収当初、プライバシー侵害への懸念の声が上がり、連邦取引委員会(FTC)も調査に動いた経緯からすると、大きな方針転換であることは間違いない。

そして、あまり評判はよくない。

「気持ち悪い」と感じるユーザーは、今からでも、「オプトアウト」は可能だ。

●「新しい機能の追加」

「Googleアカウントに新しい機能が追加されました」

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そんなメッセージが、6月末以降、グーグルのサービスへのログインのタイミングなどで、ユーザーに表示されるようになった。

Googleのサービスを利用すると、Googleアカウントに検索履歴やアプリの使用履歴などのデータが保存されます。今回追加される機能では、これらのデータの使用方法をご自身で細かく設定できるようになります。これにより、ご自身の興味やニーズに合わせてカスタマイズされた広告が表示されるようになります。

そして、「同意」が促される。

新しい機能を有効にするには[同意します]を、その他の選択肢を確認する場合は[その他のオプション]をお選びください。

この追加された「新機能」は具体的に何だったのか。

新機能は2つ。「ウェブとアプリのアクティビティ」と「広告のカスタマイズ」だ。

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字面を見ていると、閲覧履歴や利用履歴、広告表示の確認、設定が便利になるような印象を受ける。

だが、ここに書かれていないことを見てみると、また違った印象になる。

●プライバシーポリシーの変更

ちょうどこのタイミング、6月28日付でグーグルのプライバシーポリシーが変更されている

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それ以前には、このような一文があった

お客様の同意なしに、DoubleClick Cookie情報を、個人情報と結び付けることはありません。

それが、変更後はこの一文が削除され、以下のような一文が新たに加わっている

アカウント設定によっては、GoogleのサービスやGoogleが配信する広告を改善するために、他のサイトやアプリでのアクティビティがユーザーの個人情報に関連付けられる場合もあります。

ここでカギになるのがダブルクリックの「クッキー情報」だ。

クッキーとは、ウェブサイトの閲覧時などに、ユーザーの端末に送り込まれる識別情報。特にネット広告の配信会社は、これを使って、特定のユーザーがどのようなサイトを閲覧しているかという行動を把握し、その興味や関心に応じた広告を配信することができる。

だが、クッキーには氏名などの個人情報は含まれないため、あえて個人情報と結びつけない限り、それが「誰」かはわからない仕組みになっている。

グーグルも、これまでのプライバシーポリシーで、クッキーとアカウント情報の間に”壁”を設けることで、それを担保していた。

だが、6月末のポリシー変更でこの”壁”を取り去り、クッキーとグーグルアカウントの個人情報を一体で運用する、と宣言しているのだ。

ダブルクリックの広告配信のネットワークは、トップ100万サイトの3割超、31万サイトをカバーしているという

ここにグーグルアカウントの個人情報を加えることで、「ご自身の興味やニーズに合わせてカスタマイズされた広告が表示されるように」なる、と。

つまり、「新しい機能の追加」とは、プライバシーの保護のレベルが下がることと合わせて、ユーザーに確認と設定の機能を用意した、ということになる。

●ダブルクリック買収騒動

グーグルがディスプレイ広告に強みを持つ「ダブルクリック」の買収に合意したのは2007年4月。買収金額は31億ドル(3200億円)で、前年の「ユーチューブ」の買収額(16億5000万ドル)の倍近い。

この時、市場の競争を阻害するとの指摘に加えて、プライバシー侵害への懸念の声もあがり、FTCは8カ月に及ぶ調査を行っている

「ダブルクリック」買収に際して、グーグル共同創業者のサーベイ・ブリンさんはこう述べていた

すべての面において、我々はエンドユーザーのプライバシーを非常に大切に思っているし、広告プロダクトを検討する場合には最優先事項になるだろう。

「ダブルクリック」には、プライバシー絡みでその前段があった。

「ダブルクリック」は1999年、ネットマーケティングの名簿を持つ「アバカス・ダイレクト」を買収。その後、ネット広告配信にクッキーだけでなく、個人情報も使う計画を表明したことが問題に。

プライバシー侵害への懸念から、人権擁護団体、さらにFTC、ニューヨークやカリフォルニアなど10州の司法長官が調査に乗り出す騒動となった。

結局、計画は撤回。2002年には10州と和解金45万ドルを支払うことで同意している

グーグルのプライバシーポリシーの、ダブルクリックの「クッキー情報」と「個人情報」の間の”壁”は、このような”歴史的”経緯が反映されたものだった。

●最後の砦

「プロパブリカ」のジュリア・アングウィンさんは21日、「グーグルは個人特定のウェブ追跡禁止を静かに解除する」と題した記事で、この事実を指摘した。

この中で、ジョージタウン大学ロースクールのプライバシー・テクノロジー・センター所長のポール・オームさんのこんなコメントを紹介している。

ダブルクリックのデータが、個人情報と常時接続されていなかったという事実は、非常に重要な最後の砦だった。それは常時監視と、わずかながらのプライバシーの存在とを隔てる国境の壁だった。その壁は崩れ去った。

グーグルは2012年、複数のサービスごとに取得していたユーザー情報を統合するという、プライバシーポリシーの大幅変更を行っている

この大幅変更でも残っていたダブルクリックの”壁”に、今回、手をつけた。

グーグルはプロパブリカに対し、こんな声明を出している

我々の広告システムはスマートフォン革命以前にデザインされた。このシステムはユーザーにコントロール機能を提供し、適切な広告配信を判断していく。ただそれは、端末ごと別々に、という制限があった。今年6月、我々は広告システムと、連携するユーザーのコントロール機能を更新した。多くの端末をまたがって使うという、現在のグーグルの利用状況に適合させるためだ。ユーザーに明確な選択と透明性を提供するにはどうしたらいいか。この更新を実装するにあたって、それを理解するために、我々は世界中でテストを行った。その結果、この更新は100%任意の選択とした―もしユーザーが設定変更にオプトインしなければ、グーグルの利用環境は変更なし、ということだ。また同時に重要なのは、我々が今回の変更を、ユーザーの目につく形で、わかりやすい表現で告知し、さらにユーザーが自身のデータをコントロールし、削除することができるシンプルなツールも用意したということだ。ユーザーは「マイアカウント」を訪れることで、すべてのアカウントのコントロールをすることができる。そして、我々は最初の年だけで10億人以上がそれを完了したことをうれしく思う。

●フェイスブックをめぐりベルギーで裁判

クッキーによる閲覧履歴の収集とプライバシーをめぐっては、フェイスブックでも問題になっていた。

ベルギーのプライバシー保護委員会は昨年5月、フェイスブックがクッキーを使い、同社の「いいね」ボタンなどが設置されている外部サイトを、たとえ非ユーザーが訪れた場合でも、閲覧履歴を収集していると指摘。翌6月、これがベルギーの個人データ保護法および欧州連合(EU)個人データ保護規則(1995年制定)に違反しているとして、収集の差し止めを求めてベルギーの裁判所に提訴した。

裁判所は保護委員会の訴えを認めたが、フェイスブックが控訴。控訴審は今年6月末、ベルギーの保護委員会は、アイルランドに欧州の本社機能があるフェイスブックに対し、管轄権がないとして、訴えを退けている

●「同じぐらいの気持ち悪さ」

グーグルの今回の方針変更は、あまり評判はよくない。

ガーディアンの記事の見出しが端的に物語る。「グーグルの広告追跡はフェイスブックと同じぐらい気持ち悪い

ただその中で、米シンクタンク「フューチャー・オブ・プライバシー・フォーラム」CEOのジュール・ポロネツキーさんは、このようなコメントをしている。

グーグルは、実際にはこのゲームではかなりの後発組だ。今では、あなたの訪れる大半のウェブサイトが、すでに行動履歴をサードパーティーの大規模なネットワークと共有している。彼らは、ターゲット広告のために、個人情報を共有し、共同で取り扱い、リンクをしたり、外したり、といったことを行っているのだ。

適切な広告が表示されることを好むユーザーもいるだろうし、そうでない数多くのユーザーもいるだろう。重要なのは、これ以上データによる一方的なターゲティングをされたくない、と望む人たちに、それが簡単にできるような手立てを用意することだ。

ちなみにポロネツキーさんは、2000年から2002年、まさに「ダブルクリック」がプライバシー問題の渦中にあった時の同社の最高プライバシー責任者。つまり、かつての当事者でもある。

●「新たな機能」を解除するには

グーグルの言うほど、「アカウント情報(マイアカウント)」が使いやすいとは思わないが、この「新たな機能」を解除することは可能だ。

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1つは「ウェブとアプリのアクティビティ」の停止。

アカウント情報>個人情報とプライバシー設定>Googleでのアクティビティの管理>ウェブとアプリのアクティビティ、とたどり、設定を「一時停止」にすればいい。

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念のため、「Chromeの閲覧履歴とGoogleサービスを使用するウェブサイトやアプリでのアクティビティを含める」のチェックボックスも外しておくといいかもしれない。

もう1つは「広告のカスタマイズ」の停止。

アカウント情報>広告設定>広告のカスタマイズ、とたどり、設定を「オフ」にすればいい。

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※このブログは「ハフィントン・ポスト」にも転載されています。

Twitter:@kaztaira

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