メルケル首相との自撮りがフェイクニュースになり、テロリストにされる

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04/15/2017 by kaztaira

9月に総選挙を控えるドイツでは、フェイクニュースやヘイトスピーチへの警戒感が高まっている。

メルケル政権は今月5日には、違法コンテンツのすみやかな削除を怠ったソーシャルメディアに最大5000万ユーロ(60億円)の罰金を科す法案も閣議決定している

そんな警戒感の中で、メルケル首相も当事者となったあるフェイクニュースをめぐる裁判が注目を集めた。

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メルケル首相と一緒に写った19歳のシリア難民の自撮り写真が、「メルケル首相とテロリスト」の写真としてネットで拡散し、炎上した騒動。

騒動は、被害者となったシリア難民により、拡散の舞台となったフェイクブックを相手取って、裁判所に持ち込まれた。

●メルケル首相との記念写真

2015年9月10日、ドイツに到着してまだ1カ月のアナス・モダマニ氏はベルリンの難民センターにいた。19歳のシリア難民のモダマニ氏はその日、センターを訪れた女性とスマートフォンで自撮りの記念写真を撮った。

女性はドイツ首相のアンジェラ・メルケル氏。難民受け入れ政策を推進するメルケル氏にとっては、その政策を象徴する記念写真のはずだった。

ところが、モダマニ氏が自分のフェイスブックに投稿したこの写真が、全く違った文脈で知られるようになる。

シュピーゲルなどによると、モダマニ氏が取った自撮り写真は、翌2016年3月、ブリュッセルで起きたテロ事件の容疑者の写真と一緒にされて、「メルケル首相がテロリストと自撮り」した証拠としてネット上を拡散することになった、という

間抜け、いやそれ以上のアンジェラ:メルケルはブリュッセルのテロリストの1人と自撮りをしたのか?

写真には、そんなキャプションがついていた。

メルケル首相の難民政策は、フェイクニュースの攻撃の的となっている。そのあおりで、モダマニ氏は「テロリスト」としてソーシャルメディアに拡散されてしまったようだ。

「自撮り写真」は12月にも再び加工されて、拡散したという。ベルリンでクリスマスマーケットにトラックが突っ込み、60人にも上る死傷者が出たテロが起きたタイミングだ。

●難民政策への攻撃

モダマニ氏は、自身が投稿した「自撮り」は削除したものの、その加工されたコピーが繰り返しネット上に拡散することで、テロリスト扱いされ、脅迫も受け続けたようだ。

今年2月6日、「自撮り」が繰り返し拡散する舞台であるフェイスブックを相手取り、この写真の削除命令を求めてドイツ・ヴュルツブルク地裁に仮処分を申し立てる

フェイスブックにも言い分はあった。

名誉毀損による削除要請のあった画像には、対応はしている、という。さらに、そもそも名誉毀損のコンテンツについては、責任はフェイスブックではなく、投稿者にある、と。

また、フェイスブックはジオブロック(地域制限)によって、対象画像をドイツ国内からは閲覧できないようにもしている、という。

だがモダマニ氏の弁護士は、画像がフェイスブック上にあるかぎりアクセスは可能だと指摘。さらにこの「自撮り」が繰り返し投稿されるたびに削除要請をするのは、現実的ではなく、フェイスブックにはこれを削除する技術的な能力がある、と主張していた。

モダマニ氏はシュピーゲルのインタビューにこう話していた。

標的はアンジェラ・メルケル氏で、私じゃない。でも私はこれを、最終的にストップさせたいんだ。

●「あらかじめ排除する義務はない」

だがヴュルツブルク地裁は申し立てから1カ月後の3月7日、モダマニ氏の訴えを退ける決定をした

地裁は、フェイスブックが名誉毀損の加害者ではなく、侮辱的なコンテンツの投稿を、予防的に排除する義務は負わない、と判断したという

モダマニ氏はこの決定を受け、3月末、裁判の続行を断念した、という。本人や弁護士、ベルリンの受け入れ家族にも、脅迫が相次いだことも理由のようだ。さらに、裁判には支援金も寄せられたが、金銭面でも継続は困難な状況だという。

●違法コンテンツ削除義務の法案

モダマニ氏が指摘していたように、このフェイクニュース騒動の被害者は彼だったが、標的は難民受け入れ政策を掲げるメルケル首相だった。

そのメルケル政権が、フェイクニュース対策の強硬姿勢を打ち出したのが、フェイスブックなどのソーシャルメディアを対象に、違法コンテンツの削除義務を課す法案だ。

法案では、ソーシャルメディアは、ヘイトや名誉毀損などの違法コンテンツについて、違法性が明白な場合は苦情申し立てから24時間以内、違法性が明白でない場合でも、7日以内に削除などの対応し、苦情の申立人に結果を通知すること、とされている。

違反した場合には、法人には最大で5000万ユーロ、ドイツ国内の代表者には、500万ユーロの罰金が科せられることになる。

野党などからは、「表現の自由」への侵害を危惧する声も出ているという。

●米大統領選混乱を横目に

フェイクニュースをめぐる昨年の米大統領選の混乱ぶりは、メルケル政権にとっても他人事ではなかったようだ。

メルケル首相は、すでに米大統領選の投開票日にあたる2016年11月8日、ロシアによるサイバー攻撃とフェイクニュースの流布が、ドイツ総選挙に影響を与えかねない、と懸念を表明している

我々はすでに、今現在、ロシアから送り出される情報、ロシアを起点としたサイバー攻撃、デマをまき散らすニュースに対処する必要がある。

フェイクニュースが選挙結果を歪めるようなら、民主主義への危機といえる。だが一方で、フェイクニュースやヘイトスピーチ対策で「表現の自由」を侵害するなら、それもまた民主主義への脅威となる。

法案の行方が海外からも注目を集めている理由が、ここにある。

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※このブログは「ハフィントン・ポスト」にも転載されています。

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