中国の「信用スコア」ブラックリスト入りで1746万人が飛行機に乗れない

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03/03/2019 by kaztaira

中国の「社会信用スコア」システムによる”ブラックリスト”に載ったことで、のべ1746万人が飛行機搭乗、547万人が高速列車の乗車を制限された――

「社会信用スコア」を管轄する国家公共信用情報センターが発表した、同スコアのブラックリストに関する2018年の年次報告でそんなデータが明らかにされている。

14億人の国民すべてを対象に、その信用度をデータ化するという「社会信用スコア」。

そして「信用スコア」は中国の「芝麻信用(ジーマクレジット)」など、AIによる信用の「スコア化」として民間でも広がりを見せている。

投資家のジョージ・ソロス氏は、今年のダボス会議で「社会信用スコア」を「ゾッとするような忌まわしさ」と指摘。「1984年」的な中国のAI社会を批判した。

一方でAI社会の競争力を考えた時、膨大なデータを抱える「中国モデル」は、大きな脅威でもある。

●1421万件のブラックリスト情報

国家発展改革委員会傘下の国家公共信用情報センターが「2018年信用喪失ブラックリスト年次分析報告」を公表したのは2月14日。

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それによると、「社会信用スコア」のシステムである「信用情報プラットフォーム」には、1421万件のブラックリスト情報が登録されており、このうち2018年に追加されたのは409万6400件。これには企業、個人が含まれており、新たなブラックリスト入り企業は359万4000件。

ブラックリスト入りとなる「信用スコア」喪失の引き金は様々だ。顧客に対する詐欺行為から、虚偽・ミスリーディングな広告掲載、違法なファンド募集から、ローン滞納、さらには列車での指摘席の不正占拠まで。

ブラックリストに登録されることによる懲罰措置としての制限分野は、入札や調達から不動産取引、列車、飛行機の利用、婚姻届まで幅広い。

報告書によると、ブラックリスト入りした企業は、100万社が入札制限、1万2800社が政府調達への応札制限、1万2200社が社債発行制限などの措置を受けた。

また、1277万人のブラックリスト入りの個人に対しては、のべ1746件の旅客機の搭乗、547件の高速列車の乗車を制限したという

一方で、ブラックリストから削除される道もある。税金、延滞金、罰金を納付することなどして、「信用スコア」を回復したケースは217万5200件だった。

2018年に新規登録されたブラックリスト企業を地域別にみると、経済発展を続ける沿岸地域に集中。トップは江蘇省で16.71%、次いで広東省の12.77%、浙江省の8.09%。この三つで全体の4割近くを占める。

また、報告書は中国で大きな社会問題となっている、AIを活用したフィンテック、ピアツーピア(P2P)レンディング(融資)に関連したブラックリスト企業についても分析している。

貸し手と借り手をネット上で結びつけるP2P融資は急成長し、中国で20兆円規模の市場を持つとされるが、債務不履行や詐欺などのトラブルが急増。中国政府が締め付けに動いている。

報告書では、このP2P融資のプラットフォームのうち、問題ありとされた企業は1282社。うち浙江(287社)、上海(236社)、広東(208社)の上位3地域で6割近くを占める。

●14億人を対象にスコア整備

「社会信用システム」については、筆者の新刊『悪のAI論』でも取り上げている。

中国国務院が2014年6月、社会規範の向上を旗印に打ち出したプロジェクトだ。目標年次は2020年。14億人の国民を対象に「社会信用」のスコアを整備するというものだ。首都・北京市も2018年11月、2020年までに全市民に「信用スコア」を登録する、と明らかにしている

中国ではすでに民間レベルでも、「信用スコア」の仕組みが実現している。

広く知られているのが、中国のネット通販最大手「アリババ」傘下の「アント・フィナンシャル」が提供する信用評価システム「芝麻信用(ジーマクレジット)」だ。

ネット上での購買履歴、支払い履歴、サービス利用履歴、さらには交友関係まで、様々なデータをAIが判断。950点~350点の範囲で信用度のスコアをつける。このデータ収集には、警察など公的機関の情報も含まれるとしている。

このスコアによって、ホテルやレンタカーのデポジット(保証金)が不要になるなどの特典を受けられるという。「芝麻信用」などの民間システムと、政府の「社会信用システム」とは別物とされている。だが、あらゆる振る舞いがデータ化され、スコア化されるという、『1984年』的な懸念は根強い。

投資家のジョージ・ソロス氏は1月24日、世界経済フォーラム(ダボス会議)で行った講演で、中国の「社会信用システム」についてこう述べている

社会信用システムは、個人の運命を一党独裁国家の利益に従属させる、未曾有の仕組みだ。(中略)このシステムに、私はゾッとするような忌まわしさを感じた。

●ローテクな「信用スコア」

だがその一方で、地方ではかなりローテクな現実もある、との指摘も出ている。

香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニングポスト」は、山東省栄成市の片田舎で、紙と鉛筆を手に村を回り、村民の「信用スコア」をつけて回る52歳の女性の姿を報じている。

村の遊び場に8時間をかけてバスケットボールのゴールを設置した村民には2ポイント、3000元(5万円)相当のテレビ画面を村の集会所に寄贈した村民には30ポイント、息子がチベットの軍に入隊した夫婦にはそれぞれ10ポイント。

高スコアでは、村の委員会から米や食用油、現金などの支給による優遇があり、村の掲示板に掲示される、という。

一方で、ごみのポイ捨てや高齢の両親の面倒を見ない、などの行為はポイント減点の対象になる、という。

栄成市の「社会信用システム」は、すべての成人が1000ポイントからスタートし、200を超す加点減点の項目によって、「AAA」から「D」までのランクづけが行われている、という。

ただ、「社会信用スコア」からイメージするハイテクシステムは都市部のみで、地方の村落では上述の紙と鉛筆ベースの運用も行われているのだという。

●「中国化」の行方

AIの競争力を考えた時に、まず必要なのはデータだ。

14億人の人口を抱え、プライバシー保護についても緩やかな中国は、データの確保においてアドバンテージを握る。

では、AIの競争力確保を考える場合、この中国のモデルを、日本からどう考えればいいのか。

これは、2月26日開催の『悪のAI論』に関連したトークイベント「AIリスク社会を生き抜くリテラシー」でも、様々な議論を呼び起こす重要なテーマとなった。

より多くのデータを、と考えれば「中国化」が一つの選択肢として浮上し、必然的にプライバシー保護と衝突することになる。

今ある民主主義やプライバシー保護を維持するのか。それとも、より多くのデータを選ぶのか。

AIリスク社会を考える上で、中国の現状は他人事ではないのだ。

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