フェイスブックが「ニュースの砂漠」を嘆くパラドックス

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03/22/2019 by kaztaira

米国人の3分の1は、十分なローカルニュースが届けられていない地域に住んでいる――。

そんな米国におけるニュースの「空白地帯」を示すデータが18日に公開された

新聞の相次ぐ廃刊などにより、メディアによって地域のニュースが報道されない地域が広がっている。ニュースの不毛の地、といった意味合いで「ニュースデザート(砂漠)」と呼ばれている問題だ。

メディアのチェックがなくなることで、地域住民の情報不足にとどまらず、汚職などの不正行為の増加なども指摘されるなど、深刻な課題となっている。

その最新データが明らかになるのは、重要なことだ。ただ、これを伝えるニュースに対し、メディア関係者からは次々と”怨嗟”の声が上がっている。

このデータを調査し、公開したのがフェイスブックだったからだ。

フェイスブックはグーグルとともに、ネット広告収入を大半を握る一方、メディアは広告不振にあえいでいる。

特にフェイスブックは、昨年1月のニュースフィードのアルゴリズム変更によって、ニュースの表示を抑制した。その結果、深刻な影響を受けた数々のメディアが事例が報告されている。

そのフェイスブックが、「ニュースの砂漠」を嘆く。

ツイッターなどでもは、「地獄に落ちろ」「おまえが言うな」など、口を極めたコメントが並んでいる。

●「ローカルニュースを救う」

フェイスブックが「ニュースデザートの研究をサポートする」と題したブログ投稿を公開したのは18日。

ブログでは、フェイスブックによる地域に特化したニュースのアグリゲーションサービス「トゥディイン」に関する調査結果を明らかにしている。

「トゥディイン」は2018年1月に、まずニューオリンズなど6都市から導入を開始。現在は米国で400カ所以上に加え、オーストラリアでも、それぞれのローカルニュースを紹介している。

ただ、このサービスを展開していく中で、そのための十分なローカルニュースが確保できない地域が明らかになってきた、という。

具体的には、米国のフェイスブックユーザーの3人に1人は、過去28日間で、5本以上のローカルニュースを収集できた日が1日もなかった地域に住んでいることがわかった、という。

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そんな、ローカルニュースの過疎地「ニュースデザート」の割合は、中西部、北東部、南部では35%に対し、西部では26%にとどまる、という。

さらに、州ごとにも濃淡があり、アリゾナは13%と目立って低い割合だが、逆にオハイオは58%とユーザーの過半数を占め、オハイオは31%で全米の平均的な割合となっている。

●「ニュースの砂漠」の実態

ニュースデザート」は、これまでもノースカロライナ大学ジャーナリズムスクール教授のペネロペ・アバナシー氏らがその実態調査を進めてきた。

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それによると、全米50州にある3142の郡のうち、171はローカル紙が存在せず、半数近い1449がローカル紙は1紙のみで、その大半が週刊紙だという。

これらの地域では、住民が行政や議会の情報を入手し、チェックすることが困難になり、汚職などの不正行為が野放しになる危険があるという。

また、調査報道メディア「ポリティコ」の調べでは、これらの「ニュースデザート」では、トランプ大統領支持層が目立つという。

フェイスブックは、同社の調査によって得られたデータを、ノースカロライナ大のほか、ハーバード大、デューク大、ミネソタ大に提供する、としている。

●アルゴリズム変更の影響

イーマーケターの調査によると、フェイスブックは米国のネット広告の2割超を占め、グーグルと合わせると2社だけで6割に迫る勢いだ。

対照的に広告収入の激減で苦境に陥っているのが、新聞などのローカルメディアだ。

そして、ニュース接触においても、フェイスブックは大きな存在感を持つ。

ピューリサーチの調査では、米国の成人の7割近くがソーシャルメディア経由でニュースに接触し、そのうちの4割超がフェイスブック経由だ。

そのフェイスブックは、2018年1月、ニュースフィードのアルゴリズム変更を発表。友人や家族の投稿を優先表示するようにし、メディアなどによるコンテンツ表示を従来の5%から4%に抑制している。

この変更によって、大手メディアにはさほどの影響を受けなかったところもある一方、深刻なアクセスの減少が数々のメディアで確認されている。

さらに、このアルゴリズム変更の果てに、「中絶」など、議論が激しく対立するコンテンツや、「怒り」をかき立てるコンテンツが、エンゲージメントの上位を占めていることも明らかになっている

※参照:フェイスブックが広げているのは「分断」と「怒り」だった(03/18/2019)

そのフェイスブックが、ローカルニュースの過疎問題「ニュースデザート」を憂慮している、というのだ。

調査データの大学への提供だけでなく、ローカルメディアに対する助成金などの支援プログラムも展開するという。

だが、これに対してメディア関係者からは、”怨嗟”の声が相次いだ。

●メディアからの”怨嗟”の声

この発表を報じたAPの見出しも、やや刺激的ではあった。「ローカルニュースの不足でサービスに支障が出ている、とフェイスブックが表明

マザー・ジョーンズ編集長のクララ・ジェフリー氏は、こうツイートしている。

何よりもまず、フェイスブックは地獄に落ちろ。

マザー・ジョーンズも、フェイスブック経由のアクセスを大きく落としているメディアの一つ。これまでの繰り返し、フェイスブックを指弾する記事を掲載している

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ザッカーバーグ氏がユダヤ人であることからか、図々しさを示すヘブライ語の「フツバー」という言葉を引いて、今回のフェイスブックの発表を皮肉るコメントもある。

ハーバード大学の図書館キュレーター、ジョン・オーバーホルト氏は、こうコメントしている。

“フツパー”は時にこう定義される。両親を殺しておきながら、孤児になったと慈悲を請う。

ニューリパブリックのエディター、ジート・ヘール氏も、同じ「両親殺しの孤児」の例えをツイートしている。

法律専門メディア「ALM」社長のジェイ・キルシュ氏のコメントはこんな感じだ。

オオカミが、なぜヒツジが足りない、と声をあげている。

ニューヨーク・タイムズのコラムニスト、チャールズ・M・ブロウ氏は、こうコメントする。

フェイスブックは伝統メディアのビジネスモデルを全焼させる片棒を担いでおきながら、今になって灰の中に何も残っていないと泣き言を口にする。#自分でまいた種

ワシントン・ポストの安全保障担当記者、デブリン・バレット氏もこう述べる。

ブラックユーモアの黄金時代だな。

同じワシントン・ポストの経済担当記者、ジョナサン・オコネル氏は、こうだ。

おまえがいうな。

フィラデルフィア・インクワイアラーのコラムニスト、ウィル・バンチ氏は、「フェイスブックはローカルニュースを殺した。今やジャーナリズムを”救いたい”という。その代わりに奴らを分割しろ」というタイトル通りの内容のコラムを書いている。

フェイスブックが支援したいという、ローカルジャーナリズムを殺したのは誰だ? といっても、世紀の犯人さがし、というほどのことでもない。そのかけ声は、カリフォルニア州メンロパークにあるマーク・ザッカーバーグ氏の巨大なガラス張りの家の中から聞こえてきた。フェイスブックがレガシーな報道機関を殺した単独犯、とはいえないかもしれない。ただ、殺害現場にはフェイスブックのDNAが散乱しているのだ。

メディア関係者の琴線に触れる発表であったことは、間違いなさそうだ。

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