アマゾンの家庭用AIドアフォンが「警察の監視カメラ」になる

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06/06/2019 by kaztaira

安価なAIドアフォンが各家庭に急速に普及し、それが実質的に「警察の監視カメラ」ネットワークとして機能している――。

アマゾンが家庭用のAIドアフォンとして提供する「リング」をめぐり、こんな懸念が指摘されている。

アマゾンと警察が提携し、住民に無料もしくは割引で「リング」を提供。その一方で、「リング」で撮影した動画を、警察が提供を受ける。

そんな二人三脚によって、「リング」のユーザー拡大が、実質的な「警察の監視カメラ」のネットワーク拡大につながっているのだという。

「リング」をめぐっては、これまでにも撮影動画をめぐるプライバシー問題や人種差別を引き起こす懸念など、様々な課題が浮上している。

「警察の監視カメラ」としての広がりは、その実態も検証されないままで実績だけが積みあがっている状態だ。

●全米50超の警察と連携

米CNETは、アマゾンの「リング」は過去2年間で全米50を超す警察と提携し、その撮影動画が犯罪捜査に活用されてきた、と指摘している。

CNETは人口5万人足らずのニュージャージー州ブルームフィールド警察のケースを紹介。

同警察では2017年から、主に管内の企業などの監視カメラについて、防犯目的での登録依頼を続けており、その数は442ほどだった、という。

だが、「リング」の設置台数はその10倍ほどになり、現在では約14平方キロメートルのブルームフィールド全域をカバーしてしまう、という。

「リング」は連携する「ネイバーズ」という防犯ソーシャルアプリを提供している。ユーザーは、近隣の犯罪・不審者情報とともに、「リング」の動画を共有できる。

警察のメリットは、「リング」と提携することで、「ネイバーズ」のデータを地域や犯罪類型で絞り込むことができる警察用の操作画面が提供され、この動画を犯罪捜査に活用できることだ。

そして、管内全域をカバーする実質的な「警察の監視カメラ」ネットワークには、税金はかかっておらず、議会の承認も経ていない。

人権擁護団体「電子フロンティア財団(EFF)」のシニア調査リサーチャー、デイブ・マース氏は、CNETのインタビューに、議会のチェックなしに広がる「警察の監視カメラ」の問題点を指摘している。

もし警察が独自に、管内全域に監視カメラを設置するなら、そのすべての設置場所を計画し、その費用を見積もり、それが議会で承認される必要がある。おそらく議会では議論が行われるだろう。我々が、警察による監視テクノロジーの利用に対して、あらかじめ議会の承認を必要とする条例を制定すべきだと主張しているのは、まさにそこに理由がある。

●無料プレゼントや8割引きで

インディアナ州ハモンドでは4月、総額3万7500ドル(約400万円)の予算を確保し、「リング」を購入する市民には125ドル(約1万3500円)の補助金を支給するという施策を発表している。

市の持ち出しは半額の1万8750ドルで、残りは「リング」からの提供だという。

「リング」の159ドルのドアフォンならほぼ8割引きの34ドルで購入することができる。

「リング」と警察が提携し、監視カメラを購入する住民に補助金を出す、という施策はインディアナ州のほかに、ニュージャージー州、カリフォルニア州でも行われている、という。

また、カリフォルニア州のエルモンテ警察では5月、20台の「リング」を用意し、容疑者逮捕に結びつく情報提供を行った住民に、それぞれ1台を無料で提供する、と発表した。

テキサス州のヒューストン警察でも3月、無料での「リング」提供を発表した。

ただし、ヒューストン警察の場合には、無料提供の条件として、「リング」が年間30ドルで提供している動画保存サービスへの契約と、犯罪発生時に関連動画の警察への提供に同意すること、などが義務付けられている。

●不在宅配品の盗難対策

「リング」は2013年設立、2018年にアマゾンが10億ドル(1100億円)で買収した。

「リング」の警察との提携はアマゾンの買収前から始まっており、ロサンゼルス警察と提携したケースでは500個を寄付。2015年下半期の強盗件数が55%減少した、という。

このほかにも、コロラド州のオーロラ警察ニューメキシコ州のアルバカーキ警察、さらにカリフォルニア州のヘイワード警察レイクランド警察などでの提携が行われてきた。

「リング」などのスマートドアフォンの設置が広がっている背景の一つには、玄関先に置かれた不在宅配品を盗む「ポーチ・パイレーツ」の問題があるという。

米国では住民が不在の場合、玄関先に配達物を置いていくことがある。これを狙った「ポーチ・パイレーツ」への対策として、比較的安価に設置できるスマートドアフォンに注目を集まっているようだ。

CNETの取材に対し、「リング」は端末の提供については認めているが、ヒューストン警察による動画の提供義務付けなどについては、関与を否定している。

動画を共有するかどうか、動画保存プランの契約をしたいかどうかを判断する場合も、「リング」の顧客は、ご自身の動画を管理する権利を保持しています。「リング」は「ネイバーズ」の法執行機関との提携プログラムにおいて、地域住民への提供のために端末を寄贈した事実はあります。

「リング」は端末提供の条件として動画保存プランの契約を求めたり、動画の提供を義務付けたりすることには、関与していません。

●プライバシー侵害、人種差別への懸念

「リング」をめぐる懸念は、これ以前からも指摘されてきた。

2018年11月には、アマゾンが、カメラのネットワークと顔認識テクノロジーを組み合わせることで、不審者データベースを構築する、という特許申請を行っていたCNNが報じている

発明者は「リング」CEOのジェイミー・シミノフ氏だった。

アマゾンは、AI顔認識システム「レコグニション」をめぐり、捜査機関へのサービス提供や、上下両院28人の議員の顔を犯罪者と誤認識し、しかも黒人議員らの誤認識の割合が高かったという問題などで批判を浴びた。

※参照:AIと「バイアス」:顔認識に高まる批判(09/01/2018)
※参照:「顔認識で監視」「アレクサが会話を盗み聞き」アマゾンAIに相次ぐ懸念(05/26/2018)

その「レコグニション」と「リング」を結び付けて、不審者データベースを構築するのでは、との疑念が広がった。

さらに翌12月には、ウクライナにある「リング」の開発チームのオフィスで、ユーザーの動画をAIの学習用データとして無断で流用していた、との疑惑をネットメディア「インフォメーション」が指摘している

また、「リング」の動画の「ネイバーズ」での共有は、黒人などの有色人種を不当に犯罪者扱いする偏見を助長する、との指摘も根強い。

●民生品の顔をした監視

安価なAI監視カメラが各家庭に普及し、それが実質的に「警察の監視カメラ」になる。

そんなカジュアルな監視が広がりつつある。

「監視」というと、専制国家による強面のスタイルをイメージしてしまうが、現実の「監視」は、無料プレゼントや8割引きの大特価でやってくるようだ。

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