新型コロナウイルスでフェイク拡散:それは“ビル・ゲイツの陰謀”ではない

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01/26/2020 by kaztaira

新型コロナウイルスは、“ビル・ゲイツの陰謀”ではないし、ワクチンを売りつけるための陰謀でもない――。

中国湖北省武漢市を中心に集団発生した新型コロナウイルス。すでに2,000人規模に達する感染拡大に伴って、様々なフェイクニュースが広がっている。

中でもウイルスをめぐる陰謀論が、「Qアノン」と呼ばれるトランプ大統領支持の陰謀論グループや、反ワクチンのグループなどに拡散。

特に自らの感染症対策に取り組むマイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏を標的に、この新型ウイルスの背景には同氏が関わっている、との陰謀論が、フェイスブックやツイッター、右派ブログなどに飛び火していった。

社会が混乱する状況とともに、フェイクニュースの拡散は広がる。

新型コロナウイルスも、その例外ではなかった。

●ウイルスと特許を結びつける

フェイクニュースのきっかけの一つとされているのは、ジョーダン・セザー氏

セザー氏は、トランプ大統領支持の陰謀論を振りまくグループ「Qアノン」のユーチューバーとして知られ、これまでもUFOや宇宙人などをめぐる陰謀論を拡散してきた。

セザー氏は米国時間の1月21日夜、コロナウイルスについての一連のツイートを投稿する。21日は、米疾病対策センター(CDC)が、米国での最初の新型コロナウイルス感染例を発表した日だ。

セザー氏は、シリコンバレーの法律サイトの特許情報にリンクを張り、「コロナウイルス」に関する特許を英国の政府系研究機関、ピルブライト研究所が2018年に取得していることを示す

そしてその出資者の中には、世界保健機関(WHO)とビル&メリンダ・ゲイツ財団があるとし、いずれもワクチン接種の普及に力を入れてきた、と指摘。さらにこう述べている。

この病気の拡散は計画されたものか?
メディアは恐怖心を煽るために利用されているのか?
秘密結社が金が要りようになり、巨大製薬会社に備蓄を吐き出させようとしているのか?
この病気と”闘う”ためのワクチンは、すでに準備万端ということか?

何から何まで仕組まれているのか?

1月21日はまた、トランプ大統領に対する米上院の弾劾裁判の実質審理が始まった日でもあった。

この病気が見出しを飾るのは興味深いタイミングだ。

上院の弾劾裁判の最中とは。

セザー氏の最初のツイートは4,000を超すリツイート、5,000を超す「いいね!」という規模で拡散する。

このコロナウイルスは家禽類には感染するが、人間には感染しない種類(IBV)だという。

だが、コロナウイルス陰謀説はフェイスブックにも広がり、「Qアノン」や反ワクチンのグループページを舞台に、次々に投稿が続く。

この陰謀説は、マサチューセッツ州から上院議員候補として名乗りを上げており、「電子メールの発明者」を名乗って物議をかもしてきた共和党のシヴァ・アヤドゥライ氏や、ロバート・ケネディ元司法長官の息子で反ワクチン派として知られるロバート・ケネディ・ジュニア氏もフェイスブックで拡散している。

フェイスブック傘下のクラウドタングルのデータによると、セザー氏が取り上げた特許ページは、フェイスブック上で「いいね」「共有」ともに1万を超え、コメントも約9,000件に上る広がりを見せた。

●2年前の推計を「予言」と引き合いに

これにタブロイドメディアの”煽り”も加わり、ビル・ゲイツ氏への注目はさらに高まる。

ゲイツ氏は2018年、インフルエンザなどのパンデミック対策の推進キャンペーンを展開。トランプ大統領に対策を働きかけるなどの取り組みを行った。

この時に、もし1918年のスペインかぜのような深刻なインフルエンザのパンデミックが発生した場合、わずか半年で世界で3,300万人が死亡するだろう、との推計を披露している。

この発言を取り上げて、ゲイツ氏が今回の新型コロナウイルスの感染拡大を「3,300万人が死亡と予言」、と煽る英サンなどのタブロイドメディアも出てきた。

また、ゲイツ財団も共催した2019年11月のジョンズホプキンス大学で公開されたシミュレーションでは、ワクチン対応ができない架空の新型ウイルスによって1年半で6,500万人が死亡する、というシナリオも紹介されていた。

ただ、ゲイツ氏は実際に、今回の新型コロナウイルス対策にも取り組んでいる。ゲイツ財団、世界経済フォーラムなどによるグループは1月23日、新型コロナウイルスのワクチン開発を支援するプログラムを発表している。

新型コロナウイルス英研究所の特許、ゲイツ財団のワクチン開発支援、パンデミック推計――これらの情報を、つなぎ合わせるようにして、陰謀論に尾ひれがついていく。

2016年の米大統領選で、民主党候補だったヒラリー・クリントン氏がピザ店を拠点にした児童買春ネットワークに関与しているという「ピザゲート」と呼ばれる陰謀論が拡散した。

この「ピザゲート」拡散の舞台の一つとなった右派サイト「インフォウォーズ」などが、まさにこれらの情報を組み合わせ、ゲイツ氏をめぐる陰謀論を展開している。

同種の陰謀論も出始めている。

「Qアノン」の支持者とみられるフェイスブックユーザーが1月22日に、こんな投稿をしている。

“新型”コロナウイルスの特許が22日、今日、期限切れとなった..そこに突然の大流行だ。さらに摩訶不思議、すでにワクチンは用意されている..そして今やメディアは検疫を言い立て、恐怖心を煽る。自分に問いかけてみろ:奴らがそんなに受けさせたがっているワクチンには何が入っているのか?

このユーザーは、特許情報をまとめたグーグルのサイト「グーグルパテント」の、コロナウイルス関連の特許ページの画像を投稿に張り付けていた。

だがこれは、2003年にやはり中国から拡大したSARSを引き起こしたコロナウイルス(SARS-CoV)に関する特許で、今回の新型コロナウイルス(2019-nCoV)とは別の種類だ。

また、今回の新型コロナウイルスのワクチンはまだない。

このほかにも、「コロナウイルスは生物兵器の極秘研究所が起源」(英デイリースター)、「コロナウイルスは中国のコウモリ料理が発生源」(英デイリーメール)など、やはりタブロイドメディアが絡む陰謀論も拡散している。

SARSのコロナウイルスはコウモリが発生源とされているが、今回はこれとは別の種類と見られている。

今回の新型コロナウイルスの発生源については、ヘビではないかとの専門家の意見がある一方、哺乳類や鳥以外からの感染は考えにくい、と否定的な専門家の見解も報じられている。

●ファクトチェックも広がる

ファクトチェックも急速に広がっている。

コロナウイルスに関する特許をめぐる陰謀論については、ファクトチェックサイトのポリティファクトスノープスリード・ストーリーズが1月23日、ファクチェック・オルグや医療ファクトチェックのヘルス・フィードバックが24日、にそれぞれ事実ではない、との認定をしている。

また、ビル・ゲイツ氏が標的にされていることなども含めたフェイクの広がりについて、ポリティファクトがまとめているのに加えて、バズフィードなどのネットメディア、AP通信BBCCBC(カナダ公共放送)ローリングストーンなどの既存メディアもその動きを報じている。

また、ファクトチェックメディアなどと提携するフェイスブックは、「コロナウイルス特許」などの陰謀論の投稿については、削除こそしないが、「虚偽情報」との表示や、公開されたファクトチェックのへのリンクを見出しとともに表示する、などの対応を取っている。

特許フェイク2

感染への不安に加え、政治状況なども影を落とす陰謀論の拡散。

感染拡大とともに、陰謀論の勢いが増す可能性もある。

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