ロシア発のフェイクニュースがアフリカからやってくる

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03/13/2020 by kaztaira

フェイスブックは12日、ロシアの“フェイクニュース工場”に関連する、200件を超すフェイクアカウントやページなどを削除したと発表した。

フェイクアカウントなどが標的としていたのは、米国だ。

ただ、フェイクニュースの発信地となっていたのは、西アフリカのガーナとナイジェリアだった。

フェイクニュース問題が注目を集めた前回の2016年米大統領選では、ロシア・サンクトペテルブルグがその発信の中心地とされてきた。

だが、フェイクニュース発信とソーシャルメディア企業などによる排除の攻防が続く中で、その舞台は6,000キロ以上離れたアフリカ大陸へと広がっているようだ。

●200件を超す削除

本日、我々は外国からの介入に関わっていた49のフェイスブックのアカウント、69のフェイスブックページ、85のインスタグラムアカウントを削除した。これらはフェイスブック、インスタグラムなどのネット上のプラットフォームにおいて、外国勢力のための組織的不正行為を行っていた。

フェイスブックは12日に公開した声明の中でこう述べていた

フェイスブックページのフォロワーは合わせて1万3,500人、インスタグラムのフォロワーは26万5,000人で、その65%が米国人だった、という。

声明では、さらにこう指摘している。

このネットワークはオーディエンス構築の初期段階にあり、ロシアの勢力の意を受けて、関与の度合いはまちまちだが、ガーナとナイジェリアの地元民によって運営されていた。その主たる標的は米国だった。

また、ツイッターも同日、71のアカウントを削除したことを明らかにしている。

フェイクスブックのサイバーセキュリティ対策責任者、ナサニエル・グレイチャー氏はこの日の声明の中で、今回の削除対象となったアカウントは、米国を対象とした投稿をしていたが、選挙や特定の候補者に直接の言及はしていなかった、という。

むしろ、黒人の歴史やファッション、セレブのゴシップ、LGBTQなどに関する話題を取り上げ、フォロワーなどのオーディエンスを増やすことに狙いを絞っていた、という。

これらの発信を担っていたのは、「アフリカ解放への障壁撤廃(EBLA)」と名乗るガーナのNPOだった。

だがこのNPOは、ガーナから約6,500キロ離れたロシア・サンクトペテルブルグの業者「インターネット・リサーチ・エージェンシー(IRA)」につながっていたことが判明した、という。

IRAは2016年の米大統領選で、“フェイクニュース工場”としてロシアによる選挙介入工作を担った組織として知られている。

IRAの出資者とされる実業家、エフゲニー・プリゴジン氏は、プーチン大統領との密接な関係で知られ、「プーチンの料理人」との異名を持つ。

ロシアによる米大統領選への介入疑惑を捜査していた特別検察官、ロバート・マラー氏は2018年2月、IRAなど3社とプリゴジン氏ら13人をこの疑惑に絡んで起訴している。

※参照:ロシアの「フェイクニュース工場」は米大統領選にどう介入したのか(02/18/2018

●アフリカの攻防

フェイスブックは2016年米大統領選で、フェイクニュース拡散の舞台となり、さらに2018年3月には、8,700万人分という大量のユーザーデータ流出と米大統領選トランプ陣営での流用疑惑「ケンブリッジ・アナリティカ問題」が明らかになり、批判の矢面に立たされてきた。

※参照:フェイスブックに各国政府の集中砲火、それを物ともしないのはなぜか?(04/28/2019

これらの批判を受け、2018年の米中間選挙をはさんで、フェイスブックはロシア・IRAを発信源にまつわるアカウントについて、継続的削除の取り組み行ってきた

その中でフェイスブックは2019年10月30日、ロシアの組織的不正行為、すなわちフェイクニュースの舞台がアフリカ大陸に広がっていることを明らかにした。

声明では、ロシアのアフリカ8カ国への組織的不正行為について、こう述べている。

ロシアを発信源に、マダガスカル、中央アフリカ、モザンビーク、コンゴ、コートジボワール、カメルーン、スーダン、リビアを標的としていた。

この時に削除したのは、フェイスブックのアカウントが66、ページが83、グループが11、インスタグラムのアカウントが12で、フォロワーは合わせて約118万人にのぼっていた。

フェイスブックの調査では、これらのフェイクニュースのネットワークが、IRAの出資者である「プーチンの料理人」、プリゴジン氏につながっていることが判明したのだという。

これらのネットワークで扱われていた話題は、国内外の政治ニュース、マダガスカルやモザンビークの選挙、ロシアのアフリカ政策、西アフリカの旧宗主国であるフランスや、米国への批判、などだった、という。

フェイスブックのこのアカウント削除の発表は、ロシアのプーチン大統領が2019年10月23、24の両日、南部ソチにアフリカ54カ国の首脳らを集めた初の「ロシア・アフリカ首脳会議」からわずか1週間後、というタイミングだった。

●「ロシア疑惑」の輸出

CNNによると、「プーチンの料理人」プリゴジン氏がアフリカへの介入に動き出したのは2018年初めだという。

その狙いはロシアのアフリカにおけるプレゼンスの拡大、さらにアフリカの鉱物資源をめぐる利権。

それに加えてアフリカに売り込まれたのが、2016年の米大統領選で成果を示したフェイクニュースを含めたプロパガンダ戦略そのものだった、という。

政治介入、選挙介入のためのフェイクニュースのノウハウ、すなわち「ロシア疑惑」の輸出だ。

ロシアからプロパガンダの専門家を現地に派遣するとともに、現地でも要員を採用。サンクトペテルブルグとアフリカを結んで、「ロシア疑惑」型のフェイクニュース工作を展開するのだという。

ロシアはアフリカのジャーナリストたちに対して、ソーシャルメディアの「エンゲージメント」のトレーニングも行っている、という。

トレーニングを担当するのは、ロシアの政府系メディアで、米政府からフェイクニュースの発信元と認定されている「RT」「スプートニク・ニュース」だという。

ロシア情報技術・通信省次官のアレクセイ・ボーリン氏は、CNNに対してこう述べている。

スプートニクもRTも、アフリカのジャーナリストたちを特別講義に受け入れるだけではなく、さらに手厚い用意もある。モスクワに来るには多額の費用もかかるし、アフリカのジャーナリストたちには過重な負担だということもわかっている。我々はRTやスプートニクからアフリカ諸国に専門家を派遣し、現地で特別講義を行うオプションも用意している。その方が有益で役に立つだろう。

オックスフォード大学が2019年9月末に発表したフェイクニュースの世界的な状況をまとめた報告書「フェイクニュースの国際秩序」では、このようなソーシャルメディアを使った工作ノウハウの海外への輸出が、ロシアだけではなく、中国やインドも行っている、と認定している。

※参照:ロシアに加え中国も急浮上―人権抑圧・言論弾圧、「政治的武器」としてのフェイクニュース工作が世界を席捲する(10/03/2019

情報戦における「武器輸出」という位置づけだろう。

●ガーナから「米国ユーザー」を装う

今回のガーナとナイジェリアを舞台にしたソーシャルメディア工作は、フォロワーの6割以上が米国人であるなど、米国を明確な標的としている点で、これまでのアフリカ各国の工作とは色合いが違う。

CNNは独自調査で今回の工作の実態を明らかにし、フェイスブックなどにも情報提供をしている、という。

それによると、今回の工作の拠点は、ガーナの首都アクラの「アフリカ解放への障壁撤廃(EBLA)」を名乗るNPOの事務所だった。

ロシア在住のガーナ人が中心となり、ガーナ人スタッフを調達して工作を展開。さらにナイジェリア最大の都市、ラゴスのシェアオフィスにも拠点を拡大し、スタッフを置いていた、という。

フェイスブックやツイッターなどのアカウントは2019年7月から順次取得していったという。

その具体的な戦略は、「米国のユーザー」を装い、人種問題や人権問題など論争を呼ぶテーマをめぐって、社会の分断を拡大するというもの。

まさに2016年米大統領選でIRAが展開した戦略だった。

今回、削除対象となったツイッターアカウントが騙っていた米国内の発信地は、大票田カリフォルニア州を含めニューヨーク州、ワシントン州など、前回大統領選でクリントン氏が勝利した選挙区。さらに激戦州として知られるフロリダ州などだ。

※参照:米社会分断に狙い、ロシア製3500件のフェイスブック広告からわかること(05/14/2018

フェイスブック上のフェイクアカウントは、黒人人権運動の「ブラック・ライブズ・マター」のページなどに参加。

黒人への警官の発砲問題を集中的に扇動するツイッターアカウントもあった、という。

ただ、アクラの拠点は、2月末にガーナの治安当局の強制捜査を受け、工作はストップしたという。海外からの資金提供を受けた過激派活動、との容疑が持たれたという。

その後、ツイッター、フェイスブックによるアカウント削除が続くが、工作の中心人物は活動再開をもくろんでいる、という。

●実験場としてのアフリカ

ロシアのサンクトペテルブルグではなく、アフリカを舞台にフェイクニュース工作を展開する、その具体的なメリットはどこにあるのか。

スタンフォード大学の新プロジェクト「インターネット・オブザーバトリー」の研究員で、フェイスブックと連携してロシアのアフリカ工作の実態を分析したシェルビー・グロスマン氏は、国防総省所管のアフリカ戦略研究センター(ACSS)のインタビューに応えて、こう述べている。

彼らは、アフリカにおける利権を追及する一方で、自分たちの戦略をテストしていたんだろうと思う。我々が分析した国々において、プリゴジンは“フランチャイズ”戦略のテストしていたようだ。2016年の米国を標的にしたインターネット・リサーチ・エージェンシー(IRA)の戦略は、すべてサンクトペテルブルグが起点になっていた。そしてたくさんのツイートが極めて出来の悪い英語で書かれていた。ところが、我々が分析したアフリカの工作では、英語の問題は一切なかった。プリゴジンはコンテンツ制作のため、地元民にたっぷりと給料を払うようにしたのだろう。

つまり、フェイクニュース工作のパッケージを各国の状況に合わせて展開するとともに、それをより高度なものにするための実験場としても利用していた、という見立てだ。

さらにそのメリットをこうまとめている。

このフランチャイズは重要なのは:
1.ユーザーに響く地域ごとにより信頼性を獲得できるコンテンツを生成できる。
2.ライティングのクオリティが高い。
3.フェイクニュースキャンペーンを検知することが、はるかに難しくなる。

これらの実験場でのテスト運用を経て、フェイクニュース工作のパッケージを使い、英語が公用語であるガーナ、ナイジェリアから米国人を偽装してプロパガンダを展開する。

それが2020年型のフェイクニュースのようだ。

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