制作費ゼロの新聞、2日で作る雑誌

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05/21/2010 by kaztaira

ニューヨーク大のジャーナリズムの教授で著名ブロガー、ジェイ・ローゼン氏のツイッターで面白い取り組みを知った。

 無料のウェブツールだけを使って新聞制作をした米メディア企業ジャーナル・レジスターと、執筆から編集、発行までを48時間で仕上げた雑誌「48HR」だ。
 ジャーナル・レジスターはいくつかの地方紙を発行する新聞チェーンなのだが、昨年2月に連邦破産法の適用申請をし、8月に再建を果たしている。
 同社はいくつかの地方紙を発行する新聞チェーンなのだが、CEOのジョン・ペイトン氏が相当面白い人物のようだ。今年2月にCEOに就任、この時52歳。新聞社のアルバイト(コピーボーイ)出身のゴリゴリの新聞人だが、新聞社からメディア企業への脱皮を宣言。合言葉は「デジタル・ファースト、プリント・ラスト」。
 翌月には外部諮問委員会を設置。そのメンバーが、辛口著名ブロガーとして知られるニューヨーク市立大ジャーナリズム大学院准教授、ジェフ・ジャービス氏、そして、ジェイ・ローゼン氏、とベッツィー・モーガン氏。モーガン氏は、急速に台頭してきたニュースサイト「ハフィントン・ポスト」の元CEOだ。
 すごいメンバー。
 自らブログもやっており、そのタイトルも「デジタル・ファースト」というのだから。
 そのジャーナル・レジスターが今月20日に発表したのが、この「ベンジャミン・フランクリン・プロジェクト」が成功した、というものだ。
 これまで同社が使ってきた専用の新聞制作システムを使わず、ウェブで無料で提供されているサービスだけで、取材から編集作業までを行い、オハイオ州の日刊紙「デイリー・ヘラルド」とペンシルベニア州の週刊紙「パーカシー・デイリー・ヘラルド」の紙とウェブとを制作する試みが成功したというのだ。
 このプロジェクトに与えられた期間が30日、というスピード感もしびれる。それを29日で達成したんだと。
 記事の題材、取材にもツイッターやフェースブックを活用。読者から情報や意見を募り、それを記事に反映させる。そんな読者の集合知を取り込み、取材過程を可視化するクラウド・ソーシングに加えて、紙面、ウェブサイトの編集、デザイン、広告制作も、すべて無料のオンラインサービスでやってのけた、という。
 ウェブはともかく、紙の現物の出来がどんなものなのかは、同業者としては結構気になる。
 さらに、これを広告営業、顧客管理、会計などにも広げていきたい、という。全部タダで、ウェブで提供されているサービスで。
 この日のペイトン氏のブログのエントリーも威勢がいい。タイトルは「やったぜ!」。
 そして、「48HR」。サンフランシスコの編集者、ライターのグループの試みらしい。
 ゼロ号の作業がスタートしたのが、5月7日金曜日の正午。ツイッターでゼロ号のテーマ「ハッスル」を公開。原稿執筆に24時間、編集に24時間で、編集作業が終了したのが9日日曜日の正午。48時間という時間設定は、それぞれ本業を持つプロが、週末に集まり、一気に形に仕上げる、というコンセプトのようだ。
 寄せられた原稿は全部で1500本。これを24時間の作業で70本まで絞り込み、60ページの雑誌が完成した。
 しかもその間の編集作業は、ユーストリームで「ダダ漏れ」していたという。
 オンライン・ジャーナリズム関係でよく名前を見るジャーナリストのマーク・グレイザー氏が、「メディアシフト」というブログで紹介している。テックニュースブログ「ギズモード」も伝えている。
 48HRは、「マグクラウド」というオンデマンドの印刷サービスを利用して、1部10ドルで販売。グレイザー氏の記事によると、14日までに1400部が売れているという。
 いろんな取り組みがあるもんだ。
 でも、このスピード感とノリ、見習いたい。

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