「ペンタゴン・ペーパーズ」:ニクソンとトランプ、メディアを攻撃する大統領の二重写し

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04/07/2018 by kaztaira

ドナルド・トランプ大統領のワシントン・ポストへの敵視は、その勢いを増している。

攻撃の標的は、ポストのオーナーのジェフ・ベゾス氏、さらに同氏が創業したアマゾン・ドット・コムにまで及んでいる

トランプ氏は、ポストをベゾス氏の「政治的武器」と見なしているようだ。

そんなホワイトハウス対ポストの攻防を目の当たりにしながら、日本でも上映が始まったスティーブン・スピルバーグ監督の映画『ペンタゴン・ペーパーズ』を見ると、現状がはっきりと二重写しになる。

スピルバーグ監督もインタビューで「現政権だからつくった」と述べている。

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President Richard Nixon Points to a Map of Cambodia during a Vietnam War Press Conference [White House Photo Office Collection (Nixon Administration), 1/20/1969 – 8/9/1974]

ジャーナリズム映画の金字塔といえばポストによるニクソン政権のウォーターゲート事件追及を描いたアラン・J・パクラ監督の『大統領の陰謀』(1976年)だ。この事件のちょうど1年前のポストを舞台にした『ペンタゴン・ペーパーズ』は、『大統領の陰謀』の40年後につくられた前日譚でもある。

●ベゾス氏を攻撃する

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By Michael Vadon (CC BY 2.0) President of the United States Donald J. Trump at CPAC 2017 February 24th 2017

トランプ氏がツイッターでベゾス氏とアマゾン、ワシントン・ポストに攻撃の矢を向けるのは、今に始まったことではない

ポストは、同紙のデイビッド・ファレンソルド記者が、米大統領選中のトランプ氏の慈善活動についての検証報道で2017年のピュリツアー賞を受賞するなど、権力監視の姿勢が鮮明だ。

これに対してトランプ氏は、特に今年3月末から、アマゾンに焦点を絞った攻撃の手を強めている

皮切りとなったのは3月29日のこんなツイートだ。

大統領選のはるか前からアマゾンへの懸念は表明していた。他社と違って、アマゾンは連邦政府や地方政府にほとんど税金を払わない。郵政公社を配達少年として使い(それによって米国に多大な損害をもたらしている)、そして数千もの小売業者を廃業に追いやっているのだ。

その後も、「フェイクニュースのワシントン・ポスト、アマゾンの”チーフ・ロビイスト”がまたウソ見出しだ」などと、連日のようにアマゾン、そしてポスト批判が続く。

フェイスブックのデータ流用問題に端を発したIT株下落の影響もあり、アマゾン株は一時、5%急落(2日)する事態にもなった。

なぜここに来て、トランプ氏はアマゾン批判を強めているのか。

ウォールストリート・ジャーナルは、ポストが3月末、ホワイトハウスの混乱ぶりを報じた2本の記事が、トランプ氏の琴線に触れたようだ、と報じている。

ポストの報道への意趣返しとして、オーナー、ベゾス氏の会社、アマゾンを攻撃している、との見立てだ。

●スピルバーグ監督の狙い

この映画を製作しなきゃいけない、その緊急度が高いと思った。報道機関に攻撃を浴びせ、都合のいいように真実にフェイクとレッテルを張る。そんな政権の現状こそが動機だ。

“オルタナティブ・ファクト”というハッシュタグが本当に不快だった。私はたった一つの真実のみを信じる人間だ。それは客観的な真実だ。

スピルバーグ氏は、英ガーディアンのインタビューにそう答えている。

「ペンタゴン・ペーパーズ」の製作が公表されたのは、トランプ大統領の就任式から45日後の3月6日

スピルバーグ氏が制作に合意したのは、そのわずか3日前で、その直後、初共演となるトム・ハンクス、メリル・ストリープの両氏も出演を承諾したという。

そして、日本では今月20日に公開される『レディ・プレイヤー1』のポストプロダクションと並行し、すでに後ろには次の監督作『The Kidnapping of Edgardo Mortara』のイタリアでの撮影を控えるという多忙なスケジュールの中で、9ケ月後のクリスマスシーズン、2017年12月22日には、米国での劇場公開にこぎつけている。

スピルバーグ氏の制作意図は明確だ。ハリウッド・レポーターのインタビューにも、こう答えている。

この脚本を読んだ時には、自分で監督するつもりも、製作に関わるつもりもなかった。『レディ・プレイヤー1』の制作途中だったし、そんなことは正気の沙汰ではない。でも、そのテーマにとても惹かれた。ベン・ブラッドレーは数年にわたってイースト・ハンプトン(ニューヨーク)のご近所だった。彼と妻のサリー(・クイン)、それにノーラ・エフロン(※)と(夫のプロデューサー)ニック・ピレジーと一緒に、パーティーをしたりもしていた。リズ(・ハンナ)の脚本を読み終えた時、これは1971年以上に、2017年の今こそ重要なテーマだと思えた。現在起きていることと、ニクソン政権が敵と公言するニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストとの間で起きたことは、信じられないぐらい似ている。この映画をつくるなら今年だ、と理解したんだ。

(※『ペンタゴン・ペーパーズ』は、トム・ハンクス氏が出演した『めぐり逢えたら』『ユー・ガット・メール』の脚本家・監督の故ノーラ・エフロン氏に捧げられている。エフロン氏は、ウォーターゲート事件を報じたポストの記者、カール・バーンスタイン氏と結婚していた時期がある)

スピルバーグ氏は、まさに、今の「トランプ政権対ポスト」をテーマに、この映画を撮ったと述べている。

●『ペンタゴン・ペーパーズ』と『大統領の陰謀』

『ペンタゴン・ペーパーズ』のストーリーは、1971年6月13日、ニューヨーク・タイムズが米国による30年4政権にわたるインドシナ問題(ベトナム戦争)への介入の経過を調査した47巻7000ページ秘密報告書を特報したことをきっかけに進んでいく。

このスクープを、株式公開したばかりの2番手紙、ワシントン・ポストが追いかけ、当時のニクソン政権ともせめぎ合う姿を、夫の死去によって社主となったキャサリン・グラハムと、グラハムがニューズウィークから呼び寄せた編集主幹のベン・ブラッドレーを軸に、半月ほどの時間軸で描く。

ニクソン政権は、タイムズに対して,記事の差し止め訴訟を起こしたが、ポストも後を追って記事を掲載。その最高裁判決が、映画の最後の見せ場になる。

このペンタゴン・ペーパーズ報道における対権力の姿勢が、ポストのその後につながる。

そして、ニクソン政権もまた、ペンタゴン・ペーパーズ報道をきっかけに、その後につながる動きを見せる。

ホワイトハウスは最高裁判決の翌月、情報漏洩対策のための「鉛管工」と呼ばれる特別工作チームをつくる。

「鉛管工」チームは同年9月、精神科医のオフィスに侵入。秘密報告書の告発を行ったダニエル・エルズバーグ氏のカルテの入手を図る。

さらに翌72年6月17日未明、ワシントンのウォーターゲートビル6階にあった民主党全国委員会に盗聴器をしかけるために「鉛管工」チーム5人が侵入。警備員に通報され、逮捕される

ウォーターゲート事件となる、この侵入事件を取材していくのが、入社9カ月の記者、ボブ・ウッドワード氏と、入社7年目のカール・バーンスタイン氏だった。

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英タイムズのインタビューによれば、『ペンタゴン・ペ-パーズ』をつくる上で、スピルバーグ氏の念頭には、やはりポストの編集局を舞台にウォーターゲート事件を描き、ニクソン大統領辞任2年後の1976年に公開されたアラン・J・パクラ監督の映画『大統領の陰謀』(出演/ロバート・レッドフォード、ダスティン・ホフマン)があったようだ。

(『大統領の陰謀』は)私のお気に入りの政治映画の一つだ。『ペンタゴン・ペ-パーズ』がきっかけになって、皆さんが『大統領の陰謀』を見てくれるようになればうれしいんだが。

『ペンタゴン・ペーパーズ』には、スピルバーグ氏の言葉通り、『大統領の陰謀』のシーンをそっくりそのままトレースしたような場面が出てくる。

●40年後の登場人物たち

『ペンタゴン・ペーパーズ』には、40年後の現在につながる、様々な登場人物たちも描かれている。

冒頭のシーンに少しだけ登場するのがベトナム戦争から無事帰還した当時26歳の息子、ドナルド氏だ。

ポストの株式公開を控え、その理由を問いかけるドナルド氏に、キャサリン・グラハムは「ポストの権限を手放さないため」と答える。

ドナルド氏自身はこの年にポストに入社。

そして42年後の2013年8月、同紙をベゾス氏に2億5000万ドルのキャッシュで売却し、グラハム家が「ポストの権限」を手放した時の会長兼CEOだ。

キャサリン・グラハムの娘としていくつかの場面に登場する当時27歳のラリー・ウェイマス氏は、現在もポストのシニアアソシエイトエディターを務めている。

ニューヨーク・タイムズにスクープを抜かれた後、グラハム家を訪れたビル・ブラッドレーが、転がってきたビニールボールを握りしめてしまい、それを返して欲しそうにたたずむ少女が出てくる。

それがキャサリン・グラハムの孫で、ラリー・ウェイマス氏の娘のキャサリン・ウェイマス氏ポスト売却時の同紙発行人だ。

そんな、今のポストにつながるいくつもの補助線が、映像の中に盛り込まれている。

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※このブログは「ハフィントン・ポスト」にも転載されています。

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