米メディア、1日で1,000人のリストラ明らかに

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01/25/2019 by kaztaira

米メディアに、リストラの波が直撃した1日だった。

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Unemployed men queued outside a depression soup kitchen opened in Chicago by Al Capone, 2/1931 (U.S. National Archives)

AOL、ヤフー、ハフポストを擁するベライゾン・メディア(旧オース)では、スタッフの7%、750人のリストラが進行。

米バズフィードでも、スタッフの15%、200人規模のリストラを表明。

さらにはUSAトゥディを世する全米最大の新聞チェーン、ガネットもリストラに着手

合わせて1000人規模のリストラが、1月23日のわずか1日で明らかにされた。

※参照:2019年、メディアを誰も助けには来ない(01/12/2019)

年初に紹介したメディアへの逆風は、待ったなしで動き始めている。

●のれん代48億ドルが2億ドルに

規模の大きさではベライゾン・メディアのリストラが群を抜いている。

ベライゾンは、2018年12月11日、米証券取引委員会(SEC)への報告書で、メディア部門であるオースについて評価額(のれん代)46億ドル(5000億円)の減損損失を第4四半期決算に計上すると明らかにしている。

ベライゾンはハフポストなどを傘下に持つAOLを2015年に44億ドルで買収。さらに、2016年にはヤフーを48億ドルで買収した。合わせて92億ドル。2017年には、AOLとヤフーを統合したメディア部門としてオースを設立している。

ベライゾンは減損計上前の評価額を48億ドルとしており、オースののれん代はその4%、買収総額からすればわずか2%の2億ドル(220億円)となった

オースの業績は振るわず、設立1年後の2018年9月にはAOLのCEO、オースのCEOを務めたグーグル出身のティム・アームストロング氏に代わり、アリババ出身でオースではCOO兼社長を務めていたグル・ゴウラパン氏が新CEOに就任

オースの名称もわずか1年半で消え、2019年1月8日からはベライゾン・メディアに改称されている。

●750人のリストラが始まる

リストラの渦中にある米ハフポスト米テッククランチなどが、その動きを伝えている。

それらによると、ゴウラパンCEOによる社内メールでリストラが告げられたのは1月23日。スタッフの7%、750人のリストラが明らかにされた。

その翌日には、ハフポストの米国内のスタッフ20人がリストラされた、という。ハフポストでスタッフの9.5%、ヤフーニュースで10%がリストラ対象となった。

ハフポストのオピニオンコーナーの責任者だったブライアン・マイガー氏はツイッターで、同氏とオピニオンのチームがリストラー対象となり、同コーナーは閉鎖されることを明らかにしている。

https://twitter.com/bmaygers/status/1088469318613024770

また、ハフポストのドイツ版を3月いっぱいで閉鎖する予定だという。

●バズフィードでも200人規模、ガネットでも

ベライゾン・メディアのリストラが明らかになった1月23日、ニューヨーク・タイムズなどは米バズフィードでも、ジョナ・ペレッティCEOが同日夕、社内メールで15%のスタッフのリストラを告知したことを明らかにした。リストラの実数は200人規模になる、という。

この5日前、1月18日にはバズフィード英国版エディターで、ガーディアン出身のジェニン・ギブソン氏の退任も明らかにされていた。

バスフィードはすでに2017年11月末に100人のリストラが報じられており、2018年6月にフランス版の閉鎖明らかになっている

ウェブメディアだけではない。

やはり23日、全米トップの新聞チェーン、ガネットでも、リストラの動きが始まった。ポインターがまとめている

それによると、インディアナポリス・スターで3人、ノックスビル・ニュース・センチネルで1人、テネシアンで3人、ジャーナルニュース(ウェブ版)で1人、ザ・レコードで6人、ウェストチェスター・ジャーナル・ニュースで4人、ヴェンチュラ・カウンティ・スターで4人、シチズン・タイムズで5人、アリゾナ・リパブリックで2人。

このほかにも、コーパスクリスティ・コーラータイムズ、アーガス・リーダー、フォートメイヤーズ・ニュースプレス、そしてUSAトゥディでも、リストラ情報が流れているという。

ガネットについては、やはり新聞チェーンのデジタル・ファースト・メディアによる敵対的買収の動きがあることが、年明けに明らかになっていた。

●2019年、「メルコ」の動向

この数年、ベライゾンを始め、AT&Tやコムキャストがメディア企業を次々に買収する動きが、「メディア化した通信会社(テルコ)」すなわち「メルコ」として注目されてきた。

※参照:戦闘正面が拡大するメディアビジネス|2018年、メディアのサバイバルプラン(その5)(01/27/2018)

バズフィードを支えるベンチャーファンド資金5億ドルのうち、4億ドルを出しているのがコムキャスト傘下のNBCユニバーサルだ。

AT&Tは昨年6月にタイム・ワーナーの買収を完了ワーナーメディアに名称変更している。

その「メルコ」は今後、どのような動きを見せるのか。

2019年のメディア動向を考える上で、大きなポイントだろう。

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※このブログは「ハフポスト」にも転載されています。

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